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第二十七章
第二話
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鬼平は帰り道を歩いていた。
その間、今までと同じ景色を違う角度や違う色に注目して眺めているような自分に気付いて戸惑っていた。似たようなことは今までもあった。
初めて智香を見た後、びんの悪魔を受け取った時や、父親に暴力を振るわれ、両親の離婚のすぐ後。それらは鬼平の世界を大きく変えた。でもそれらの時でさえ、今のようになったことはなかった。
鬼平は自分の変化を感じていた。それがいい変化か悪い変化なのかはともかく、とにかく何かが、明らかに変わっていた。だが、どういった違いが自分に訪れたのか、まるで説明できなかった。
鬼平は今、開かれている、と感じていた。それがどういうことか詳しいことはわからない。蛇が脱皮をしたように古い皮膚を投げ捨てたようだった。それで、新しい皮膚に慣れなくて風が吹くたびにヒリヒリと、痒みを感じている……ような。
鬼平はフラッシュバックした記憶によって、また倒れてしまうのでは、と危惧していたが、家の近くまで来てもそんなことは起こらなかった。不安で心が溢れるんじゃないかと思ったが、むしろ妙に落ち着いていた。
心はまだ痛みを覚えていて、そこから訴える声が響いていた。だが、それは以前のように鬼平を倒す力はなかった。
鬼平は玄関に上がって、家の中にお母さんがいるのに気付いた。鬼平は部屋に鞄を置いて着替えを取ると、シャワーを浴びに洗面所に行った。それはいつもと同じ、何の変哲もない行為だった。
その間、今までと同じ景色を違う角度や違う色に注目して眺めているような自分に気付いて戸惑っていた。似たようなことは今までもあった。
初めて智香を見た後、びんの悪魔を受け取った時や、父親に暴力を振るわれ、両親の離婚のすぐ後。それらは鬼平の世界を大きく変えた。でもそれらの時でさえ、今のようになったことはなかった。
鬼平は自分の変化を感じていた。それがいい変化か悪い変化なのかはともかく、とにかく何かが、明らかに変わっていた。だが、どういった違いが自分に訪れたのか、まるで説明できなかった。
鬼平は今、開かれている、と感じていた。それがどういうことか詳しいことはわからない。蛇が脱皮をしたように古い皮膚を投げ捨てたようだった。それで、新しい皮膚に慣れなくて風が吹くたびにヒリヒリと、痒みを感じている……ような。
鬼平はフラッシュバックした記憶によって、また倒れてしまうのでは、と危惧していたが、家の近くまで来てもそんなことは起こらなかった。不安で心が溢れるんじゃないかと思ったが、むしろ妙に落ち着いていた。
心はまだ痛みを覚えていて、そこから訴える声が響いていた。だが、それは以前のように鬼平を倒す力はなかった。
鬼平は玄関に上がって、家の中にお母さんがいるのに気付いた。鬼平は部屋に鞄を置いて着替えを取ると、シャワーを浴びに洗面所に行った。それはいつもと同じ、何の変哲もない行為だった。
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