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第六話①

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「どこに行きたい?」

 移ろう景色を感心しながら眺めていると、シュガーが僕たちに聞いた。君人は、人見知りでもしているのか、黙り込み、僕の方を見た。

「これ、どこに向かっているんですか?」

 僕はシュガーに聞いた。新幹線は、ぐんぐんスピードを上げ、そこに何があるのか気になってみようとする前に、あっという間に景色が後ろに下がっていく。日本の田舎を映したその景色はやがて、富士山を映し出した。

「いや、別にどこにも向かっていないよ。行こうと思えば、テレポートで一瞬だしね。まあ、みんな一緒に移動するためと、雰囲気を出すために乗っただけ」
 
 シュガーは拍子抜けするようなことを言った。

「とりあえず、スカイツリーでも行く?」シュガーが提案すると、

「え、行ったことない」と、君人が食いつき、声をはずまして答えた。

「じゃあそこにしよう。ここなら、展望台まで無料で行かれるし」

 そう言うと、シュガーは、空中にウィンドウを出し、行き先を入力した。

「ねえ、野宮、あ、野々宮は、スカイツリーって行ったことある?」
 
 窓からの景色が田園風景から、ビルが立ち並ぶ都会に切り替わると、君人が席を離れ僕に尋ねた。

「ないよ」そう答え、新幹線の中で、外の景色を眺めている犬なんて、さぞおかしな感じに見えるだろうなと思いながら、また窓からの景色を眺めた。

 東京タワーが現れた。よくできているなと感心した。

「僕もだよ。母さんが高いところは嫌だって言ってさ、連れてってくれなかったから」
「ふうん」
「の、野宮は、高いところって得意?」
「……いや、別に」会話が弾まない。まあ、考えてみれば、僕たちは今日初めて会話をしたのだから、しょうがない。

「一番上ではバーチャル東京を見渡せるし、バンジージャンプもできるぞ。もちろん、絶対に死なない保証付きだ」

 シュガーが会話に割り込んできて、ちょっとホッとする。

「なんだか、現実のが死ぬ可能性があるみたいな言い方ですね」

 君人は、縄が千切れて地面に叩きつけられる想像をしたのか、ぶるっと震えた。

「そういうわけじゃないけど。でも、俺は現実じゃ絶対やらない。事故らないわけじゃないだろ。その点、こっちは絶対大丈夫だ。同じ理由で、スカイダイビングも無理だな。まあ、こっちは金がないのが、一番の理由か」

「僕も無理だな」君人が声を震わせて言った。――バンジージャンプか。やろうと思ったことはなかったけど、自分には飛べるのだろうか、と僕は思った。

「着いた」シュガーが到着を告げ、僕たちは新幹線を下りた。

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