後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第64話【完勝】

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螺旋状の竪穴のスロープを下層に向かって、“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”で走行していく。
しばらく降りていくと、スロープの終点に到着する。

「付きました。ここがミスリル鉱脈の第一階層です!」

到着した先に広がっていたのは、横に伸びている空洞。ボクが横に採掘していった通称“第一階層”だ。

「ここがミスリル鉱脈……凄く綺麗で幻想的ですね……」

設置してある“発光石”に反射して、坑道内のミスリル原石が虹色に輝いている。サラが言葉を失っているように、まるで幻想の世界のような光景が広がっていた。

「ふむ、これがハルクの見つけたミスリル鉱脈か。ワシもこれほど大規模なものは、初めて目にするのう」

ベテランのドワーフ職人のドルトンさんは、前にも別のミスリル鉱山に入ったことがある。だが大地に愛されたドワーフ族ですら、これほどのミスリル鉱脈は発見してないという。

「あっ、でも、下の階層にはもっと沢山のミスリル原石がありますよ! ここはほとんどボクが採掘してしまったので!」

「な、なんじゃと、これよりも、もっと沢山じゃと⁉ ふう……まったく、どれほどの埋蔵量があるのか予想もできないな」

「はっはっは……そうですね」

ミカエル城の地下に広がる鉱脈は、かなりの深さがと埋蔵量がある。ボクが十年かけても、まだ一割も発見できていない状態。

大げさな話をするなら『ミカエル王都の地下深くに、広大な鉱脈は広がっている』ような大規模な鉱脈なのだ。

「ふん。それほどの大規模な鉱脈があるのなら、ミカエル王国はとんでもない超軍事大国になる可能性もあるのう」

「そうですね。だからルインズ様は国王だった時は、最低限の採掘しか指示してきませんでした」

貴重な金属の採掘量は、その国の国力と軍事力を増大させる。
平和を望むルインズ様は『ハルクよ、国民の生活を豊かにする程度の、最低限の採掘をするのだ』と言ってくれた。
だからボクはその教えをずっと守ってきたのだ。

「じゃが、今の国王は何を考えているか分からん。もしかしたら、この鉱脈を悪用する危険性があるのう」

「そうですね。だからヒニクン国王が何をしているか、調べる必要性があるんです!」

ルインズ様の情報によると、今の国王は怪しげなことを水面下している。特に臣下にも内緒で、この鉱脈で何かをしているという。
嫌な予感しかしないボクは、最優先で鉱脈の現状を調べることにしたのだ。

「それじゃ、第二階層に降りていきましょう。ん? サラ?」

“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”を再発進させようとした時、サラの異変に気がつく。

「ご、ごめんなさい、ハルク君。なんか、息苦しくて、身体が重くて……」

サラは明らかに体調が悪そう。
座席に座りながら顔が白くなって、息が苦しそうにしている。隣のドルトンさんの方に異常はない。
これはどういうことだ?

「『息苦しくて、身体が重い』……あっ、そうか! すぐに対処するね!」

サラの容態で思い当たることがあった。急いで運転席の操作パネルのスイッチを入れる。

キュイン! シュ――――!

直後、“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”の床から、空気が噴き出してくる。

キュイ――――ン! ボワ――――ン!

更に床の下から、新たなる駆動音が聞こえてきた。どちらも新たなる超魔具が作動したものだ。

「えっ……もう苦しくない⁉ すごく楽になりました、ハルク君!」

しばらくしてサラの体調が回復する。顔色は元に戻り、元気そうに自分の身体を動かしている。

「さっきの私の体調不良は、なんだったんだろう?」

「説明するのが遅れてごめん、サラ。実はこのミスリル鉱脈は“少しだけ”息苦しくて、身体が重くなる場所なんだ!」

王都の地下にあるミスリル鉱脈は、普通とは少しだけ違う場所。空気に“魔素”が少しだけ濃く混じっているのだ。

また重力と呼ばれる下に引く力が“少しだけ”強く、身体が重く感じしてしまうのだ。

「なるほど、そうだったんですね。あっ、でも、ドルトンさんは?」

「辞典によるとドワーフ族は人族よりも頑丈で、地下に強い体質らしいから、まだ平気だったのかな、たぶん」

大地の精霊に愛されたドワーフ族は、呼吸や骨格などが強靭。そのためドルトンさんに異常はなく、人族のサラだけ苦しくなったのだろう。

「ふむ、そう言われてみれば、ワシも少しだけ違和感があったかもな。だが、今はまったく無くなったぞ。さっき何の超魔具を起動させたのだ、小僧?」

「実はこの空気が出てくるのは、《空気清浄器プラズマ・エアクラスター》という超魔具の機能なんです!」

今回、ミスリル鉱脈に潜るにあたって、“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”に色んな機能を追加してある。
その中の一つが《空気清浄器プラズマ・エアクラスター》。機能を簡単に説明すると、『生きていくうえで適切な空気が流れてくる』超魔具だ。

あまり知られていないが、人は生きていくために“空気”と呼ばれる存在が必要となる。少しでも変なものが混じっていたり、空気が薄くなると人は体調を悪くしてしまう。
だから常に適切な空気が吸えるような超魔具を、事前に開発設置しておいたのだ。

綺麗な空気の元は、サラに作っておいたポーション。それに魔道具を組みわせて、最後にボクの鍛冶仕事でくみ上げたものだ。

「あと、身体が軽くなったのは、《重力制御装置グラビティー・コントロール》の機能です!」

こっちの機能を簡単に説明すると、『重力の強さを自由に制御』する超魔具だ。
今回は強くなってきた重力を相殺して、地上と同じ強さに調整。地下に潜っていく度に、自動的に強さを相殺していく機能がある。

ちなみに手動で強さを調整可能なために、逆に重力を強くすることも可能だ。

あっ、でも『人が動けなくなるほど強力な超重力』なんて機能があっても、日常では使い道はないかも。

「……という訳で、荷馬車の中にいる限りは、最下層にも対応できます!」

鉱脈の最下層は、ここよりも更に少しだけ過酷な環境になる。
だがこの二つの超魔具があれば、なんの問題なく降りていくことが可能だと、二人に説明をする。

「く、空気を生み出して、さらに重力を制御できる……じゃと⁉ 相変わらずとんでもない物を作り出しおって、オヌシは。この荷馬車さえあれば、魔界にも乗り込んでいけそうじゃぞ」

「はっはっは……おそれいります」

「でもハルク君の発明のおかげで、快適に先に進めそうですね」

「そうだね、サラ。よし、こんどこそ本当に下層に向かおう!」

超魔具のお蔭で、過酷な環境に対しての対応は万端。
こうして更に下の“第二下層”にボクたちは向かうのであった。
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平穏時代の最強賢者〜伝説を信じて極限まで鍛え上げたのに、十回転生しても神話の魔王は復活しないので、自分で一から育てることにした
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