後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第56話【意識】

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 アンナとカインのおかげである程度のレベルになったティファは、これからは自力でのレベル上げをした方が効率が良くなった。
 普通なら、ここから適齢レベルの狩場で、同じくらいのレベルのパーティに入るか、単独で狩りをするかになるのだけれど、運がいいことにティファは回復職だ。

 このゲームは、様々な行動が経験値に結びつく。
 私の場合は、途中から戦闘はほとんどせずに、薬の調合だけでカンストしたくらいだ。

 つまり、ティファにも回復魔法をひたすら唱えてもらって、経験値を貯めてもらうことができるのだ。
 普通ならそんなにうまくはいかないけれど、幸いなことに私は【薬師】、つまり援助するための薬は無数にある。

「いい? これから闘技場で、チームに分かれて戦うけれど、勝つためにやるんじゃなくて、ティファのレベル上げのためにするんだからね?」
「はい! よろしくお願いします!!」

 ティファは上級職として、単体の回復量に優れた職業の【聖女】を選んだ。
 今回レベル上げに手伝ってもらうには、攻撃役とダメージを受けて回復してもらう役の二人がいればいい。

 手伝ってもらうのは、うちの守りの要のローザと、アンナに次ぐ単体火力の持ち主ハドラーだ。
 この二人を選んだ理由はちゃんとある。

 まずは回復魔法で経験値が得られる量は、実際に回復した量が関係すること。
 つまりHPが減っていない人に回復魔法をかけても経験値は全く入らない。

 その点、アンナよりも更にHPが高いローザは、うってつけだといえる。
 次に攻撃役。

 ローザは守りの要なので、HPだけじゃなく防御力も高い。
 そこで、防御力無視の攻撃魔法を使えるハドラーがうってつけ、というわけだ。

 更に、私の薬でローザのHPの最大値と、ハドラーの攻撃力は上げている。
 これでより効率よくダメージを与え、かつ回復する量を多くできる。

「ティファの使える魔法の中で、絶対値のものと、割合回復のものがあるよね?」
「はい! あります!!」

 絶対値回復というのは、相手の最大HPに関係なく、一定量の回復をする魔法。
 それに対して、割合回復というのは、相手の最大HPの何パーセントを回復するといった魔法だ。

「今から、ハドラーにローザを攻撃してもらうから、ダメージを受けたローザを両方で回復してみて。使うのはそれぞれ一番効果の高い魔法で」
「分かりました!!」

 使ってみると、まだまだティファのレベルが低く、ローザのHPが高いせいで、割合回復の方が遥かに多い回復量を示した。
 念のため確認したけれど、これは予想通りだった。

「それじゃあ、割合回復の方を連発してね。MPは気にしないで。私が都度回復してあげるから。それと……」
「わ! なんか、身体が光りました!」

 私はティファに知識を上げるための強化薬を使う。
 これで、魔法が使いやすくなるはずだ。

「それじゃあ。お願い。ローザはただ立ってるだけで申し訳ないけど!! ハドラーはHPが見えないだろうから、私が合図するね」
「気にするな。ちょうど暇だったのだし。そうだな、雑談でもしていればいいだろう」

 こうしてティファのレベル上げ第二弾が始まった。
 ハドラーは適宜攻撃をしてローザのHPを減らす。

 減らした側からティファの回復魔法で減ったHPを回復していく。
 こうしてティファはこのレベルでは考えられないような経験値をどんどん得ていき、順調にレベルを上げた。

「そろそろ、いい時間だしやめようか」
「はい! ありがとうございました。こんなにレベル上がるなんて。びっくりです!!」

 レベルが上がり喜ぶティファは、目線をローザとハドラーに向けている。
 二人はティファのレベル上げ中に話していた話題をまだ続けていた。

「あの二人、仲良さそうですねー。もしかして――」
「多分付き合ってないと思うよ」

 ティファの言いそうなことはすでに分かっていたので、少し食い気味に言ってしまった。
 私の返答に、ティファは少し残念そうな顔をした後、更に言葉を続けた。

「そうなんですねー。じゃあ、質問を変えますね。このクランで付き合っている人たちって居るんですか?」
「それは、さすがに分からないかな。みんな宣伝してるわけじゃないだろうし。どうして、そんなことが気になるの?」

 私は単純な質問を投げかけてみる。

「え? なんでって……なんか楽しくありません? 恋話って」

 私はそれに肯定も否定もできずに、結局自分から話題を変えてしまった。



「ねぇ。セシル。ティファのことなんだけど」
「うん? ティファがどうかした? サラさん」

 ある日、私はたまたまセシルと二人になった時に、気になっていたことをセシルに打ち明けた。

「うん。いい子だと思うんだけど、ちょっと男女の関係を意識しすぎというか……別に相手を探してるわけじゃないみたいだから、問題なわけじゃないんだけど」
「うーん。まぁ、俺も随分恋話好きそうだなっては思ってたけど、別に迷惑かけるってほどでもないからいいんじゃないかな。ほっとけば。やる気もあるみたいだし」

 そう。ティファはやる気もあるし、物覚えも勘もよく、めきめきと実力を伸ばしていっている。
 人当たりもよく一緒にゲームをする分には問題ない人物だ。

 そのせいで、逆に恋愛脳の部分が妙目立つともいえる。
 以前、私もユースケの事ばかりを考えて頑張っていた時期もあるから、誰かを想うことは必ずしも悪い訳ではない。

 ただ、よく恋愛のいざこざのせいでクランが崩壊するというのもよく聞く話だ。
 その点がどうしても気になってしまう。

「ねぇ。セシルはクラン内で、恋愛することについてどう思う?」
「え!? そ、そりゃあ、自由だと思うよ? うん。本人の自由じゃないかな!」

 私の問いに何故かセシルは顔を赤く染める。
 不思議に思って、私はつい思い付いた質問を投げてしまった。

「ねぇ。もしかして……セシルって、このクランに好きな人いる?」

☆☆☆

いつもお読みいただきありがとうございます
もう既に書かせていただきましたが、9月中開催のファンタジー小説大賞に今作も応募しています
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もしまだで、この作品が面白いと思っていただける方がいましたら、よろしければ投票の方をお願いします
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子育てほのぼの物語です! 下記リンクから飛べます!!
平穏時代の最強賢者〜伝説を信じて極限まで鍛え上げたのに、十回転生しても神話の魔王は復活しないので、自分で一から育てることにした
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