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第48話【検証結果】
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「うわ! これ凄いよ!」
楽しそうにカインが叫ぶ。
速度、攻撃力ともに驚くほど上昇していて、モンスターを次々と薙ぎ倒して回っている。
あまりにも速いので、目で追うのも難しい。
しかし、どうやら職業由来のスキルも使えるらしく、見た目は変わるものの操作自体は大きく変わらないようだ。
「楽しんでるところ悪いんだけれど、防御とかどうなっているか見てみたいから、攻撃受けてもらえる?」
「え? でも今の状態ならどんな攻撃でも避けられる自信あるよ。必要あるかな?」
「カインはそうかもしれないけど、他の人に使った時に必要なデータも欲しいから。アンナさんに使っても、躱せないかもしれないでしょう?」
「それもそうだね。ちょっと待ってね。こいつでいいかな?」
そう言うとカインは一匹だけ残してモンスターを倒すと、そのモンスターの攻撃をわざと受けた。
図体が大きくなっている関係で、攻撃も受けやすくなるはずだから防御面を確認することも大事な作業だ。
「うん? 全然痛くないよ」
「防御面もしっかり上がってるみたいね。ちょっとみんなでカインを攻撃してみてくれる?」
「え!? なんでさ!」
「HPも随分上がってるみたいだけど、受けたダメージを回復できるかどうかみてみたいのよね」
私の合図でみんながカインに向けて攻撃を放つ。
どこかみんな嬉々として攻撃しているようにも見える。
「うわぁ! なんでそんな大技ばっかり! 絶対みんな楽しんでるよね? くっそう。こんなことなら実験台になんかなるんじゃなかった……」
「まぁまぁ。それじゃあ、今から回復薬投げるよ」
HPが減ったのを確認した後、私はカインに向かって回復薬を投げた。
ところが、いつもなら薬が当たった瞬間、すぐにHPが回復するはずなのに、カインは少しも回復しなかった。
「あれ。ダメみたい。念のため、もう一回投げてみるね」
「え! これ、回復できないってこと?」
もう一度、さっきより高価な回復薬を投げてみる。
だけどやっぱりさっきと同じように、減ったカインのHPが戻ることはなかった。
「やっぱりダメだね。うーん。そうなると……HPがなくなった時にどうなるのかも知りたいところだけど……」
恐らくみんなで集中攻撃をひたすら無防備のカインに向けて繰り返せば、倒すことはできると思う。
ただ、そうすると時間切れの確認ができなくなってしまう。
「ねぇ。変身していられる残り時間とか、どっかで見えないかな?」
「え? ちょっと待ってね……あ! もしかしたらこれかも! カウントダウンしてる数字があるよ!」
カインに教えてもらった数字から、変身時間はちょうど五分だと言うことが分かった。
残り四分弱。頑張ればその時間までにHPを削り切れるだろうか。
「じゃあ、みんなで攻撃して、カインのHPをゼロにしてみてくれる? HPが無くなったら死ぬのかみてみたい」
「え! 死んだらデスペナあるじゃん! それは流石に嫌だなぁ」
デスペナとはデスペナルティ、つまり死んだ時に受ける罰として、経験値の減少と一時的なステータス低下が付与される。
ただ、それは倒れた後に『拠点に戻る』を選択した場合の話で、回復職やアイテムの効果でその場に復活すれば回避できる。
「大丈夫。きちんと蘇生薬使ってあげるから。時間もそんなにないし。みんな! 全力でやっちゃって!」
「ちぇ! そんな役回りだなぁ!」
文句を言いながらも、攻撃が当たりやすいように動かずにじっとしているカインに、みんなは全力で攻撃を繰り出し続けた。
そのおかげで、残り数秒を残し、ついにカインのHPがゼロになった。
まだはっきりとは言えないけれど、元のステータスが変身後の能力に直接影響を与えているようで、もともと防御力もHPも低かったカインだから倒せたのだろう。
これがセシルやアンナだった場合は、正直一つのパーティだけで、変身が解けるまでの時間を全て使ったとしても、倒し切ることは不可能だろう。
最後の一撃を入れた瞬間、レアボスを倒した時と同じようなエフェクトが発生し、巨大化したカインの姿は灰色に染まり、ぼろぼろと崩れ落ちていった。
そしてそこには、何事もなかったかのように、カインが一人立っていた。
「わ。変身解けちゃった。でも、良かった。死なないみたい」
ホッとしているカインを尻目に、今まで確認したことを整理していた。
まだ確定ではないこともあるけれど、有意義な時間だった。
ひとまずは私は確認できたことを忘れないように、そして分かりやすいように整理した。
まずはこの薬が使用可能な場所は、天井のないフィールドだけだと言うことが分かっている。
新エリアに来る途中で、試しにダンジョン内など天井があったり狭い通路で使ってみようとやってみた。
しかし攻城戦の時のように使用することができなかった。
次に変身後の見た目はアバターの種族依存のようだ。
これは一応次の確認の時に明らかになると思っている。
そして肝心のステータス上昇について。
こちらは元々のステータスを元に上昇しているようだ。
と言うことは割合上昇だと言うこと。
残念ながら、今回の検証ではどのくらい割合で上昇するのかまでは確認することはできなかった。
そしてHP。
こちらは変身中に受けたダメージは少なくとも回復薬では回復しないようだ。
今この場に回復魔法を使える者が居ないので確認は取れていないが、恐らくいかなる手段を用いても減る一方で回復できないという仕様なのだろう。
だけど、もし相手の攻撃によってHPがゼロになっても、すぐに死ぬことはなく、元々の身体が残るようだ。
こうやってみると、やはり入手難易度にふさわしいだけの効果があるようだ。
カインや付き合ってくれたみんなにお礼を言って、【神への冒涜】の検証を終えた。
楽しそうにカインが叫ぶ。
速度、攻撃力ともに驚くほど上昇していて、モンスターを次々と薙ぎ倒して回っている。
あまりにも速いので、目で追うのも難しい。
しかし、どうやら職業由来のスキルも使えるらしく、見た目は変わるものの操作自体は大きく変わらないようだ。
「楽しんでるところ悪いんだけれど、防御とかどうなっているか見てみたいから、攻撃受けてもらえる?」
「え? でも今の状態ならどんな攻撃でも避けられる自信あるよ。必要あるかな?」
「カインはそうかもしれないけど、他の人に使った時に必要なデータも欲しいから。アンナさんに使っても、躱せないかもしれないでしょう?」
「それもそうだね。ちょっと待ってね。こいつでいいかな?」
そう言うとカインは一匹だけ残してモンスターを倒すと、そのモンスターの攻撃をわざと受けた。
図体が大きくなっている関係で、攻撃も受けやすくなるはずだから防御面を確認することも大事な作業だ。
「うん? 全然痛くないよ」
「防御面もしっかり上がってるみたいね。ちょっとみんなでカインを攻撃してみてくれる?」
「え!? なんでさ!」
「HPも随分上がってるみたいだけど、受けたダメージを回復できるかどうかみてみたいのよね」
私の合図でみんながカインに向けて攻撃を放つ。
どこかみんな嬉々として攻撃しているようにも見える。
「うわぁ! なんでそんな大技ばっかり! 絶対みんな楽しんでるよね? くっそう。こんなことなら実験台になんかなるんじゃなかった……」
「まぁまぁ。それじゃあ、今から回復薬投げるよ」
HPが減ったのを確認した後、私はカインに向かって回復薬を投げた。
ところが、いつもなら薬が当たった瞬間、すぐにHPが回復するはずなのに、カインは少しも回復しなかった。
「あれ。ダメみたい。念のため、もう一回投げてみるね」
「え! これ、回復できないってこと?」
もう一度、さっきより高価な回復薬を投げてみる。
だけどやっぱりさっきと同じように、減ったカインのHPが戻ることはなかった。
「やっぱりダメだね。うーん。そうなると……HPがなくなった時にどうなるのかも知りたいところだけど……」
恐らくみんなで集中攻撃をひたすら無防備のカインに向けて繰り返せば、倒すことはできると思う。
ただ、そうすると時間切れの確認ができなくなってしまう。
「ねぇ。変身していられる残り時間とか、どっかで見えないかな?」
「え? ちょっと待ってね……あ! もしかしたらこれかも! カウントダウンしてる数字があるよ!」
カインに教えてもらった数字から、変身時間はちょうど五分だと言うことが分かった。
残り四分弱。頑張ればその時間までにHPを削り切れるだろうか。
「じゃあ、みんなで攻撃して、カインのHPをゼロにしてみてくれる? HPが無くなったら死ぬのかみてみたい」
「え! 死んだらデスペナあるじゃん! それは流石に嫌だなぁ」
デスペナとはデスペナルティ、つまり死んだ時に受ける罰として、経験値の減少と一時的なステータス低下が付与される。
ただ、それは倒れた後に『拠点に戻る』を選択した場合の話で、回復職やアイテムの効果でその場に復活すれば回避できる。
「大丈夫。きちんと蘇生薬使ってあげるから。時間もそんなにないし。みんな! 全力でやっちゃって!」
「ちぇ! そんな役回りだなぁ!」
文句を言いながらも、攻撃が当たりやすいように動かずにじっとしているカインに、みんなは全力で攻撃を繰り出し続けた。
そのおかげで、残り数秒を残し、ついにカインのHPがゼロになった。
まだはっきりとは言えないけれど、元のステータスが変身後の能力に直接影響を与えているようで、もともと防御力もHPも低かったカインだから倒せたのだろう。
これがセシルやアンナだった場合は、正直一つのパーティだけで、変身が解けるまでの時間を全て使ったとしても、倒し切ることは不可能だろう。
最後の一撃を入れた瞬間、レアボスを倒した時と同じようなエフェクトが発生し、巨大化したカインの姿は灰色に染まり、ぼろぼろと崩れ落ちていった。
そしてそこには、何事もなかったかのように、カインが一人立っていた。
「わ。変身解けちゃった。でも、良かった。死なないみたい」
ホッとしているカインを尻目に、今まで確認したことを整理していた。
まだ確定ではないこともあるけれど、有意義な時間だった。
ひとまずは私は確認できたことを忘れないように、そして分かりやすいように整理した。
まずはこの薬が使用可能な場所は、天井のないフィールドだけだと言うことが分かっている。
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しかし攻城戦の時のように使用することができなかった。
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