33 / 72
第33話【レアボス討伐】
しおりを挟む螺旋状の竪穴のスロープを下層に向かって、“ハルク式荷馬車・参式”で走行していく。
しばらく降りていくと、スロープの終点に到着する。
「付きました。ここがミスリル鉱脈の第一階層です!」
到着した先に広がっていたのは、横に伸びている空洞。ボクが横に採掘していった通称“第一階層”だ。
「ここがミスリル鉱脈……凄く綺麗で幻想的ですね……」
設置してある“発光石”に反射して、坑道内のミスリル原石が虹色に輝いている。サラが言葉を失っているように、まるで幻想の世界のような光景が広がっていた。
「ふむ、これがハルクの見つけたミスリル鉱脈か。ワシもこれほど大規模なものは、初めて目にするのう」
ベテランのドワーフ職人のドルトンさんは、前にも別のミスリル鉱山に入ったことがある。だが大地に愛されたドワーフ族ですら、これほどのミスリル鉱脈は発見してないという。
「あっ、でも、下の階層にはもっと沢山のミスリル原石がありますよ! ここはほとんどボクが採掘してしまったので!」
「な、なんじゃと、これよりも、もっと沢山じゃと⁉ ふう……まったく、どれほどの埋蔵量があるのか予想もできないな」
「はっはっは……そうですね」
ミカエル城の地下に広がる鉱脈は、かなりの深さがと埋蔵量がある。ボクが十年かけても、まだ一割も発見できていない状態。
大げさな話をするなら『ミカエル王都の地下深くに、広大な鉱脈は広がっている』ような大規模な鉱脈なのだ。
「ふん。それほどの大規模な鉱脈があるのなら、ミカエル王国はとんでもない超軍事大国になる可能性もあるのう」
「そうですね。だからルインズ様は国王だった時は、最低限の採掘しか指示してきませんでした」
貴重な金属の採掘量は、その国の国力と軍事力を増大させる。
平和を望むルインズ様は『ハルクよ、国民の生活を豊かにする程度の、最低限の採掘をするのだ』と言ってくれた。
だからボクはその教えをずっと守ってきたのだ。
「じゃが、今の国王は何を考えているか分からん。もしかしたら、この鉱脈を悪用する危険性があるのう」
「そうですね。だからヒニクン国王が何をしているか、調べる必要性があるんです!」
ルインズ様の情報によると、今の国王は怪しげなことを水面下している。特に臣下にも内緒で、この鉱脈で何かをしているという。
嫌な予感しかしないボクは、最優先で鉱脈の現状を調べることにしたのだ。
「それじゃ、第二階層に降りていきましょう。ん? サラ?」
“ハルク式荷馬車・参式”を再発進させようとした時、サラの異変に気がつく。
「ご、ごめんなさい、ハルク君。なんか、息苦しくて、身体が重くて……」
サラは明らかに体調が悪そう。
座席に座りながら顔が白くなって、息が苦しそうにしている。隣のドルトンさんの方に異常はない。
これはどういうことだ?
「『息苦しくて、身体が重い』……あっ、そうか! すぐに対処するね!」
サラの容態で思い当たることがあった。急いで運転席の操作パネルのスイッチを入れる。
キュイン! シュ――――!
直後、“ハルク式荷馬車・参式”の床から、空気が噴き出してくる。
キュイ――――ン! ボワ――――ン!
更に床の下から、新たなる駆動音が聞こえてきた。どちらも新たなる超魔具が作動したものだ。
「えっ……もう苦しくない⁉ すごく楽になりました、ハルク君!」
しばらくしてサラの体調が回復する。顔色は元に戻り、元気そうに自分の身体を動かしている。
「さっきの私の体調不良は、なんだったんだろう?」
「説明するのが遅れてごめん、サラ。実はこのミスリル鉱脈は“少しだけ”息苦しくて、身体が重くなる場所なんだ!」
王都の地下にあるミスリル鉱脈は、普通とは少しだけ違う場所。空気に“魔素”が少しだけ濃く混じっているのだ。
また重力と呼ばれる下に引く力が“少しだけ”強く、身体が重く感じしてしまうのだ。
「なるほど、そうだったんですね。あっ、でも、ドルトンさんは?」
「辞典によるとドワーフ族は人族よりも頑丈で、地下に強い体質らしいから、まだ平気だったのかな、たぶん」
大地の精霊に愛されたドワーフ族は、呼吸や骨格などが強靭。そのためドルトンさんに異常はなく、人族のサラだけ苦しくなったのだろう。
「ふむ、そう言われてみれば、ワシも少しだけ違和感があったかもな。だが、今はまったく無くなったぞ。さっき何の超魔具を起動させたのだ、小僧?」
「実はこの空気が出てくるのは、《空気清浄器》という超魔具の機能なんです!」
今回、ミスリル鉱脈に潜るにあたって、“ハルク式荷馬車・参式”に色んな機能を追加してある。
その中の一つが《空気清浄器》。機能を簡単に説明すると、『生きていくうえで適切な空気が流れてくる』超魔具だ。
あまり知られていないが、人は生きていくために“空気”と呼ばれる存在が必要となる。少しでも変なものが混じっていたり、空気が薄くなると人は体調を悪くしてしまう。
だから常に適切な空気が吸えるような超魔具を、事前に開発設置しておいたのだ。
綺麗な空気の元は、サラに作っておいたポーション。それに魔道具を組みわせて、最後にボクの鍛冶仕事でくみ上げたものだ。
「あと、身体が軽くなったのは、《重力制御装置》の機能です!」
こっちの機能を簡単に説明すると、『重力の強さを自由に制御』する超魔具だ。
今回は強くなってきた重力を相殺して、地上と同じ強さに調整。地下に潜っていく度に、自動的に強さを相殺していく機能がある。
ちなみに手動で強さを調整可能なために、逆に重力を強くすることも可能だ。
あっ、でも『人が動けなくなるほど強力な超重力』なんて機能があっても、日常では使い道はないかも。
「……という訳で、荷馬車の中にいる限りは、最下層にも対応できます!」
鉱脈の最下層は、ここよりも更に少しだけ過酷な環境になる。
だがこの二つの超魔具があれば、なんの問題なく降りていくことが可能だと、二人に説明をする。
「く、空気を生み出して、さらに重力を制御できる……じゃと⁉ 相変わらずとんでもない物を作り出しおって、オヌシは。この荷馬車さえあれば、魔界にも乗り込んでいけそうじゃぞ」
「はっはっは……おそれいります」
「でもハルク君の発明のおかげで、快適に先に進めそうですね」
「そうだね、サラ。よし、こんどこそ本当に下層に向かおう!」
超魔具のお蔭で、過酷な環境に対しての対応は万端。
こうして更に下の“第二下層”にボクたちは向かうのであった。
しばらく降りていくと、スロープの終点に到着する。
「付きました。ここがミスリル鉱脈の第一階層です!」
到着した先に広がっていたのは、横に伸びている空洞。ボクが横に採掘していった通称“第一階層”だ。
「ここがミスリル鉱脈……凄く綺麗で幻想的ですね……」
設置してある“発光石”に反射して、坑道内のミスリル原石が虹色に輝いている。サラが言葉を失っているように、まるで幻想の世界のような光景が広がっていた。
「ふむ、これがハルクの見つけたミスリル鉱脈か。ワシもこれほど大規模なものは、初めて目にするのう」
ベテランのドワーフ職人のドルトンさんは、前にも別のミスリル鉱山に入ったことがある。だが大地に愛されたドワーフ族ですら、これほどのミスリル鉱脈は発見してないという。
「あっ、でも、下の階層にはもっと沢山のミスリル原石がありますよ! ここはほとんどボクが採掘してしまったので!」
「な、なんじゃと、これよりも、もっと沢山じゃと⁉ ふう……まったく、どれほどの埋蔵量があるのか予想もできないな」
「はっはっは……そうですね」
ミカエル城の地下に広がる鉱脈は、かなりの深さがと埋蔵量がある。ボクが十年かけても、まだ一割も発見できていない状態。
大げさな話をするなら『ミカエル王都の地下深くに、広大な鉱脈は広がっている』ような大規模な鉱脈なのだ。
「ふん。それほどの大規模な鉱脈があるのなら、ミカエル王国はとんでもない超軍事大国になる可能性もあるのう」
「そうですね。だからルインズ様は国王だった時は、最低限の採掘しか指示してきませんでした」
貴重な金属の採掘量は、その国の国力と軍事力を増大させる。
平和を望むルインズ様は『ハルクよ、国民の生活を豊かにする程度の、最低限の採掘をするのだ』と言ってくれた。
だからボクはその教えをずっと守ってきたのだ。
「じゃが、今の国王は何を考えているか分からん。もしかしたら、この鉱脈を悪用する危険性があるのう」
「そうですね。だからヒニクン国王が何をしているか、調べる必要性があるんです!」
ルインズ様の情報によると、今の国王は怪しげなことを水面下している。特に臣下にも内緒で、この鉱脈で何かをしているという。
嫌な予感しかしないボクは、最優先で鉱脈の現状を調べることにしたのだ。
「それじゃ、第二階層に降りていきましょう。ん? サラ?」
“ハルク式荷馬車・参式”を再発進させようとした時、サラの異変に気がつく。
「ご、ごめんなさい、ハルク君。なんか、息苦しくて、身体が重くて……」
サラは明らかに体調が悪そう。
座席に座りながら顔が白くなって、息が苦しそうにしている。隣のドルトンさんの方に異常はない。
これはどういうことだ?
「『息苦しくて、身体が重い』……あっ、そうか! すぐに対処するね!」
サラの容態で思い当たることがあった。急いで運転席の操作パネルのスイッチを入れる。
キュイン! シュ――――!
直後、“ハルク式荷馬車・参式”の床から、空気が噴き出してくる。
キュイ――――ン! ボワ――――ン!
更に床の下から、新たなる駆動音が聞こえてきた。どちらも新たなる超魔具が作動したものだ。
「えっ……もう苦しくない⁉ すごく楽になりました、ハルク君!」
しばらくしてサラの体調が回復する。顔色は元に戻り、元気そうに自分の身体を動かしている。
「さっきの私の体調不良は、なんだったんだろう?」
「説明するのが遅れてごめん、サラ。実はこのミスリル鉱脈は“少しだけ”息苦しくて、身体が重くなる場所なんだ!」
王都の地下にあるミスリル鉱脈は、普通とは少しだけ違う場所。空気に“魔素”が少しだけ濃く混じっているのだ。
また重力と呼ばれる下に引く力が“少しだけ”強く、身体が重く感じしてしまうのだ。
「なるほど、そうだったんですね。あっ、でも、ドルトンさんは?」
「辞典によるとドワーフ族は人族よりも頑丈で、地下に強い体質らしいから、まだ平気だったのかな、たぶん」
大地の精霊に愛されたドワーフ族は、呼吸や骨格などが強靭。そのためドルトンさんに異常はなく、人族のサラだけ苦しくなったのだろう。
「ふむ、そう言われてみれば、ワシも少しだけ違和感があったかもな。だが、今はまったく無くなったぞ。さっき何の超魔具を起動させたのだ、小僧?」
「実はこの空気が出てくるのは、《空気清浄器》という超魔具の機能なんです!」
今回、ミスリル鉱脈に潜るにあたって、“ハルク式荷馬車・参式”に色んな機能を追加してある。
その中の一つが《空気清浄器》。機能を簡単に説明すると、『生きていくうえで適切な空気が流れてくる』超魔具だ。
あまり知られていないが、人は生きていくために“空気”と呼ばれる存在が必要となる。少しでも変なものが混じっていたり、空気が薄くなると人は体調を悪くしてしまう。
だから常に適切な空気が吸えるような超魔具を、事前に開発設置しておいたのだ。
綺麗な空気の元は、サラに作っておいたポーション。それに魔道具を組みわせて、最後にボクの鍛冶仕事でくみ上げたものだ。
「あと、身体が軽くなったのは、《重力制御装置》の機能です!」
こっちの機能を簡単に説明すると、『重力の強さを自由に制御』する超魔具だ。
今回は強くなってきた重力を相殺して、地上と同じ強さに調整。地下に潜っていく度に、自動的に強さを相殺していく機能がある。
ちなみに手動で強さを調整可能なために、逆に重力を強くすることも可能だ。
あっ、でも『人が動けなくなるほど強力な超重力』なんて機能があっても、日常では使い道はないかも。
「……という訳で、荷馬車の中にいる限りは、最下層にも対応できます!」
鉱脈の最下層は、ここよりも更に少しだけ過酷な環境になる。
だがこの二つの超魔具があれば、なんの問題なく降りていくことが可能だと、二人に説明をする。
「く、空気を生み出して、さらに重力を制御できる……じゃと⁉ 相変わらずとんでもない物を作り出しおって、オヌシは。この荷馬車さえあれば、魔界にも乗り込んでいけそうじゃぞ」
「はっはっは……おそれいります」
「でもハルク君の発明のおかげで、快適に先に進めそうですね」
「そうだね、サラ。よし、こんどこそ本当に下層に向かおう!」
超魔具のお蔭で、過酷な環境に対しての対応は万端。
こうして更に下の“第二下層”にボクたちは向かうのであった。
10
新作ハイファンタジーの投稿を開始しました!
子育てほのぼの物語です! 下記リンクから飛べます!!
『 平穏時代の最強賢者〜伝説を信じて極限まで鍛え上げたのに、十回転生しても神話の魔王は復活しないので、自分で一から育てることにした 』
子育てほのぼの物語です! 下記リンクから飛べます!!
『 平穏時代の最強賢者〜伝説を信じて極限まで鍛え上げたのに、十回転生しても神話の魔王は復活しないので、自分で一から育てることにした 』
お気に入りに追加
3,466
あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる