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第31話【戦略】
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新しく入ったメンバーを連れて、加入後初めての攻城戦が始まった。
今までに比べて人数が倍になったため、より有利に戦うことができそうだ。
「セシルの方はタンクが居ないんだよな? さすがにローザ一人で全部受け切るのは無理があるぞ?」
加入メンバーの元クランマスターで、リーダー格のギルバートがそう言う。
ローザというのはリザードマンの【聖剣士】で、盾を持った【剣士】の上級職だ。
ちなみにギルバートは【拳王】という職業で、自らの拳を武器に戦う【拳闘士】の上級職。
アバターはヒューマンだ。
「大丈夫。うちは守りより攻めが主体の戦略だからね。でも、やっぱりタンクが一人でも居るって言うのは心強いよ」
「任せてね。サラの薬のおかげで、そうそう簡単にはやられる気がしないし」
そう言いながらローザは私に向けてウインクをした。
リザードマンというのは顔がトカゲなので、ウインクするのも当然トカゲ顔だ。
私はまるで獲物を見つけた爬虫類の瞬きのような気持ちがして、素直に喜ぶことが出来なかった。
「ひとまずさ。僕とウィルは罠解除にせいを出すから、素早さ特化でよろしくね」
「はい! カインさん! 頑張ります!!」
ウィルは【探検家】という【盗賊】系の上級職で、罠解除などの非戦闘系が得意な職業だった。
アバターはホビット、背が低く敏捷や運が高いのが特徴だ。
「しかし……【薬師】って万能すぎだよなぁ。【司祭】って中途半端なのかなぁ」
「そんなことないよ。薬は金もかかるし準備も必要だし。やっぱり魔法スキルだけで回復できるってすごい」
そんなことを言うのはレクター。
ドワーフの【司祭】、回復職の上位職で広範囲に回復や状態異常解除などの魔法を唱えるのが得意な職業だ。
「そうそう。矢の補充だって馬鹿にならないしね。私も魔法職にすればよかったかなぁ」
「しかし、弓は詠唱がいりませんからね。やはり素早く攻撃できる、と言うのは強みですよ」
最後の一人のソフィは【狙撃手】で、【弓使い】の上級職。
アバターはギルバートと一緒でヒューマンだ。
「まぁ、細かいことは置いといて、相手を全員ぶっとばしゃ勝てるんだ。簡単だろう!?」
アンナは相変わらずの勢いで極論を言う。
その言葉にみんな笑顔になる。
「アンナの言う通り。でも、さすがにB級にもなるとゴリ押しじゃ勝てないかもしれないからね。俺らも初めてのランクだし」
「と言ってもやることは一緒でしょ? サラにコアを持たせて、僕らはとにかく攻める」
「コアを移動できるって聞いた時は驚いたよ。さすが元最強クランのメンバーだな」
「元? これからこのクランが最強になる予定だから、僕はずっと最強クランのメンバーのままだよ」
ギルバートの言葉にカインが不満げに言う。
またみんな楽しそうに笑う。
「あはは。楽しいのもいいけれど。そろそろ始まるよ。作戦は言った通り。二人一組で対応する感じね。レクターは私と」
「分かったよ。回復は得意だから、強化の方をサラさんにはお願いするね」
今回は初の攻城戦ということで、セシルとローザ、アンナとギルバート、カインとウィル、ハドラーとソフィ、そしてレクターと私が近くで行動する。
それ以外の戦略は今までと一緒、コアを私に宿して、随時出会った相手メンバーを殲滅していく。
「始まった! じゃあ、早速コアを取るね」
そう言うと私は一人、コアに近付き手を当て10秒を数えた。
七色に輝くコアが私に宿ると、早速移動を開始する。
☆
最初に出くわしたのは八人のメンバーだった。罠解除用の人員が一人、前衛が五人に後衛が二人、うち一人が回復職だった。
私たちとの遭遇に気付き、臨戦態勢を取っている。
「行くよ! ハドラーとソフィはなるべく回復職を狙って!」
「分かりました!」
私の合図に合わせ、ハドラーは長い詠唱に入る。
その間にウィルが弓で後衛に攻撃をしてくれるため、今までのようにタイミングを測る必要がない。
「くそっ! この弓、邪魔くさい!!」
相手の回復職が叫ぶ。
モンスターを相手にする時とは違い、ヘイトで攻撃を受ける相手を決めることが出来ないのが対人の難しさだ。
要となる職を集中して先に倒す方がいい。
名前以外の情報は相手の行動を見て知るしかない攻城戦では、全体を見渡し指示を出すプレイヤーも重要だ。
しかし、普通のプレイヤーは自分の相手の動きに集中し、他の周りまで見る余裕はない。
その点私は戦う必要が無く、回復もレクターのおかげで余裕もできた。
味方も含めて周囲を見て適切な指示を出す役として適している。
これがギルバートたちが入ってくれた一番のメリットかもしれない。
それぞれの足りない部分、そこを補填してくれればより戦いやすくなるところ。
まさに痒いところに手が届く仲間だと言える。
「【アークブラスト】!!」
詠唱を終えたハドラーの一撃が相手の回復職に炸裂する。
ハドラーの職業である【魔人】は対個人魔法のスペシャリスト。
広範囲に高威力の魔法を放つことは苦手としているけれど、単体火力ならば全職業で一番を誇る。
その高火力の一撃を受け、既にソフィに削られていたHPは底を突く。
こうして要の回復職を最初に倒された相手は、次々に倒されて行くのだった。
今までに比べて人数が倍になったため、より有利に戦うことができそうだ。
「セシルの方はタンクが居ないんだよな? さすがにローザ一人で全部受け切るのは無理があるぞ?」
加入メンバーの元クランマスターで、リーダー格のギルバートがそう言う。
ローザというのはリザードマンの【聖剣士】で、盾を持った【剣士】の上級職だ。
ちなみにギルバートは【拳王】という職業で、自らの拳を武器に戦う【拳闘士】の上級職。
アバターはヒューマンだ。
「大丈夫。うちは守りより攻めが主体の戦略だからね。でも、やっぱりタンクが一人でも居るって言うのは心強いよ」
「任せてね。サラの薬のおかげで、そうそう簡単にはやられる気がしないし」
そう言いながらローザは私に向けてウインクをした。
リザードマンというのは顔がトカゲなので、ウインクするのも当然トカゲ顔だ。
私はまるで獲物を見つけた爬虫類の瞬きのような気持ちがして、素直に喜ぶことが出来なかった。
「ひとまずさ。僕とウィルは罠解除にせいを出すから、素早さ特化でよろしくね」
「はい! カインさん! 頑張ります!!」
ウィルは【探検家】という【盗賊】系の上級職で、罠解除などの非戦闘系が得意な職業だった。
アバターはホビット、背が低く敏捷や運が高いのが特徴だ。
「しかし……【薬師】って万能すぎだよなぁ。【司祭】って中途半端なのかなぁ」
「そんなことないよ。薬は金もかかるし準備も必要だし。やっぱり魔法スキルだけで回復できるってすごい」
そんなことを言うのはレクター。
ドワーフの【司祭】、回復職の上位職で広範囲に回復や状態異常解除などの魔法を唱えるのが得意な職業だ。
「そうそう。矢の補充だって馬鹿にならないしね。私も魔法職にすればよかったかなぁ」
「しかし、弓は詠唱がいりませんからね。やはり素早く攻撃できる、と言うのは強みですよ」
最後の一人のソフィは【狙撃手】で、【弓使い】の上級職。
アバターはギルバートと一緒でヒューマンだ。
「まぁ、細かいことは置いといて、相手を全員ぶっとばしゃ勝てるんだ。簡単だろう!?」
アンナは相変わらずの勢いで極論を言う。
その言葉にみんな笑顔になる。
「アンナの言う通り。でも、さすがにB級にもなるとゴリ押しじゃ勝てないかもしれないからね。俺らも初めてのランクだし」
「と言ってもやることは一緒でしょ? サラにコアを持たせて、僕らはとにかく攻める」
「コアを移動できるって聞いた時は驚いたよ。さすが元最強クランのメンバーだな」
「元? これからこのクランが最強になる予定だから、僕はずっと最強クランのメンバーのままだよ」
ギルバートの言葉にカインが不満げに言う。
またみんな楽しそうに笑う。
「あはは。楽しいのもいいけれど。そろそろ始まるよ。作戦は言った通り。二人一組で対応する感じね。レクターは私と」
「分かったよ。回復は得意だから、強化の方をサラさんにはお願いするね」
今回は初の攻城戦ということで、セシルとローザ、アンナとギルバート、カインとウィル、ハドラーとソフィ、そしてレクターと私が近くで行動する。
それ以外の戦略は今までと一緒、コアを私に宿して、随時出会った相手メンバーを殲滅していく。
「始まった! じゃあ、早速コアを取るね」
そう言うと私は一人、コアに近付き手を当て10秒を数えた。
七色に輝くコアが私に宿ると、早速移動を開始する。
☆
最初に出くわしたのは八人のメンバーだった。罠解除用の人員が一人、前衛が五人に後衛が二人、うち一人が回復職だった。
私たちとの遭遇に気付き、臨戦態勢を取っている。
「行くよ! ハドラーとソフィはなるべく回復職を狙って!」
「分かりました!」
私の合図に合わせ、ハドラーは長い詠唱に入る。
その間にウィルが弓で後衛に攻撃をしてくれるため、今までのようにタイミングを測る必要がない。
「くそっ! この弓、邪魔くさい!!」
相手の回復職が叫ぶ。
モンスターを相手にする時とは違い、ヘイトで攻撃を受ける相手を決めることが出来ないのが対人の難しさだ。
要となる職を集中して先に倒す方がいい。
名前以外の情報は相手の行動を見て知るしかない攻城戦では、全体を見渡し指示を出すプレイヤーも重要だ。
しかし、普通のプレイヤーは自分の相手の動きに集中し、他の周りまで見る余裕はない。
その点私は戦う必要が無く、回復もレクターのおかげで余裕もできた。
味方も含めて周囲を見て適切な指示を出す役として適している。
これがギルバートたちが入ってくれた一番のメリットかもしれない。
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