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第63話【異形の者たち】
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アンバーの号令に従い、第二攻撃部隊はモスアゲート領の中心部へと進軍を始めた。
目的は第一攻撃部隊の救援。
先頭は既に治療を終えた第一攻撃部隊の兵士が立つ。
離脱時にダリアたちがいた場所へと私たちを先導しているのだ。
「もうすぐ着くらしいよ。それにしてもここまで一切敵と出食わさないのもなんだか妙な感じだね……」
部隊の中ほど、私の横をピタリと歩くアンバーがそう呟いた。
確かに、これまで聞いていた話から考えれば、街の中は無数に魔獣が溢れ出ているいそうなものだ。
ダリアたちが既にすでに殲滅した後だとしても、通り過ぎてからそれなりに時間が経っているはずだ。
それなのに……私は得体の知れない不安を感じた。
「こ、ここです」
前の方で第一攻撃部隊の兵士の声が聞こえた。
どうやら目的地に着いたようだ。
魔獣に遭遇しなかったことを不思議に思いながらも、何事もなく無事に目的地にたどり着けたことに安堵する。
しかし何やら様子がおかしい。
そういえば、ダリアたちはどこだろうか?
助けるべき対象が見当たらないどころか、ダリアが救助を求めるような相手と戦闘を繰り広げたにしては、この辺りは綺麗すぎる。
私と同じ疑問を持った者がいたようで、案内した兵士に向かってその疑問を投げかけた。
「おい。本当にここなのか? 誰もいないようだが……それどころか魔獣の死体すらない……」
「こ、ここデス。コ、こコデす。コ、ココデス……」
「おい? おまえ……大丈夫か? わ、わぁぁあ⁉」
「何が起きた⁉」
兵士の叫び声に、アンバーが叫ぶ。
前へと駆けだすアンバーの後を追い、私も事態を確かめるべく前へ走った。
そこで見たのは、魔族とも魔獣とも違う、異形の者の姿だった。
兵士の腕だったものは今や巨大な剣のように変わっていて、血だまりの中に倒れる兵士の血で濡れている。
すでに被害が出てしまったようだが、先頭に配備されていたクロムが応戦し、異形の者の攻撃を防いでいた。
クロムは私の姿を視認したのか、目は異形の者を見据えたまま叫ぶ。
「聖女様! 前に出てきちゃだめだ! こいつが突然化け物に変わったんだ! これは罠だ!」
「クロム! 待って! その人、まだ息があるわ! 見捨てるわけにはいかない‼」
「聞いたか? 目標はあの化け物だ。負傷兵から遠ざけるように撃て! 殺しても構わん!」
アンバーが横から部隊に指示を飛ばす。
それを合図に一斉に小範囲攻撃魔法が異形の者を吹き飛ばすように集中砲火された。
「クロム!」
私は思わず異形の者と肉薄していたクロムのことを案じ声を上げていた。
しかし、アンバーはそんな私をなだめるように静かに諭すような声で言う。
「大丈夫。ちゃんと彼はわかっている。僕の合図を聞いた瞬間、すぐに身を引いたよ」
アンバーの言葉に視線を少し移すと、先ほどから離れた場所に、クロムの無事な姿が見えた。
「コ、ココデス……ココデスゥ‼」
第二攻撃部隊の魔法の一斉攻撃を受けたのにもかかわらず、異形の者はまだ息があるようだ。
しかし、すでに肉体のほとんどを失い、生きているのが不思議なほどだ。
「元は仲間だったはずだ。せめて、苦しませずに逝かせてやろう」
そう言いながらアイオラが兵士だった異形の者の頭を魔法で粉砕する。
さすがに頭がないと生命活動を維持できないのか、操り糸が切れるように異形の者は地面へと崩れていった。
その様子を横目で見ながら、私はすでに唱えていた治癒魔法を切りつけられた兵士に向かって放つ。
間一髪、何とか一命をとりとめることができたようで、私は息を吐く。
アンバーは崩れた異形の者の元へと近づき、遺体を調べ始めた。
何か見つけたようで、それを拾い上げると私に向かって悲しそうな顔を見せる。
「どうやら、彼が元第一攻撃部隊の隊員だったことは間違いないようだ。見てよ。これ。結婚指輪だ。ガワだけ真似た魔獣や魔族がこんなものまで用意するとは到底思えないね」
アンバーの右手に光る金の指輪は、事態の深刻さを私たちに知らせるかのように鈍く光った。
☆☆☆
お久しぶりです!
気づけば、今年ももうすぐ終わりですね。
ちょっと色々ありまして、随分と間が空いてしまいました。
また、ちょこちょこと書けていけたらと思いますのでよろしくお願いします。
そして、この場を借りて新作の宣伝させてください。
「魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する」
というファンタジー作品を本日から投稿し始めました。
よろしければ、こちらも覗いてみてもらえると嬉しいです。
目的は第一攻撃部隊の救援。
先頭は既に治療を終えた第一攻撃部隊の兵士が立つ。
離脱時にダリアたちがいた場所へと私たちを先導しているのだ。
「もうすぐ着くらしいよ。それにしてもここまで一切敵と出食わさないのもなんだか妙な感じだね……」
部隊の中ほど、私の横をピタリと歩くアンバーがそう呟いた。
確かに、これまで聞いていた話から考えれば、街の中は無数に魔獣が溢れ出ているいそうなものだ。
ダリアたちが既にすでに殲滅した後だとしても、通り過ぎてからそれなりに時間が経っているはずだ。
それなのに……私は得体の知れない不安を感じた。
「こ、ここです」
前の方で第一攻撃部隊の兵士の声が聞こえた。
どうやら目的地に着いたようだ。
魔獣に遭遇しなかったことを不思議に思いながらも、何事もなく無事に目的地にたどり着けたことに安堵する。
しかし何やら様子がおかしい。
そういえば、ダリアたちはどこだろうか?
助けるべき対象が見当たらないどころか、ダリアが救助を求めるような相手と戦闘を繰り広げたにしては、この辺りは綺麗すぎる。
私と同じ疑問を持った者がいたようで、案内した兵士に向かってその疑問を投げかけた。
「おい。本当にここなのか? 誰もいないようだが……それどころか魔獣の死体すらない……」
「こ、ここデス。コ、こコデす。コ、ココデス……」
「おい? おまえ……大丈夫か? わ、わぁぁあ⁉」
「何が起きた⁉」
兵士の叫び声に、アンバーが叫ぶ。
前へと駆けだすアンバーの後を追い、私も事態を確かめるべく前へ走った。
そこで見たのは、魔族とも魔獣とも違う、異形の者の姿だった。
兵士の腕だったものは今や巨大な剣のように変わっていて、血だまりの中に倒れる兵士の血で濡れている。
すでに被害が出てしまったようだが、先頭に配備されていたクロムが応戦し、異形の者の攻撃を防いでいた。
クロムは私の姿を視認したのか、目は異形の者を見据えたまま叫ぶ。
「聖女様! 前に出てきちゃだめだ! こいつが突然化け物に変わったんだ! これは罠だ!」
「クロム! 待って! その人、まだ息があるわ! 見捨てるわけにはいかない‼」
「聞いたか? 目標はあの化け物だ。負傷兵から遠ざけるように撃て! 殺しても構わん!」
アンバーが横から部隊に指示を飛ばす。
それを合図に一斉に小範囲攻撃魔法が異形の者を吹き飛ばすように集中砲火された。
「クロム!」
私は思わず異形の者と肉薄していたクロムのことを案じ声を上げていた。
しかし、アンバーはそんな私をなだめるように静かに諭すような声で言う。
「大丈夫。ちゃんと彼はわかっている。僕の合図を聞いた瞬間、すぐに身を引いたよ」
アンバーの言葉に視線を少し移すと、先ほどから離れた場所に、クロムの無事な姿が見えた。
「コ、ココデス……ココデスゥ‼」
第二攻撃部隊の魔法の一斉攻撃を受けたのにもかかわらず、異形の者はまだ息があるようだ。
しかし、すでに肉体のほとんどを失い、生きているのが不思議なほどだ。
「元は仲間だったはずだ。せめて、苦しませずに逝かせてやろう」
そう言いながらアイオラが兵士だった異形の者の頭を魔法で粉砕する。
さすがに頭がないと生命活動を維持できないのか、操り糸が切れるように異形の者は地面へと崩れていった。
その様子を横目で見ながら、私はすでに唱えていた治癒魔法を切りつけられた兵士に向かって放つ。
間一髪、何とか一命をとりとめることができたようで、私は息を吐く。
アンバーは崩れた異形の者の元へと近づき、遺体を調べ始めた。
何か見つけたようで、それを拾い上げると私に向かって悲しそうな顔を見せる。
「どうやら、彼が元第一攻撃部隊の隊員だったことは間違いないようだ。見てよ。これ。結婚指輪だ。ガワだけ真似た魔獣や魔族がこんなものまで用意するとは到底思えないね」
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☆☆☆
お久しぶりです!
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