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第30話【実地訓練】
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訓練兵が来てから一週間が経った。
初めは教える側も教えられる側も戸惑っていたものの、少しずつ慣れてきたようだ。
第二衛生兵部隊にいる緑色のリボンタイをしている衛生兵は、全員が私やデイジーから訓練を受けている。
どうすれば回復魔法を使えるようになれるか、一から知っているという訳だ。
何も知らない訓練兵に、一から教えるとしても、問題はないだろう。
逆に初めから回復魔法が使えた者だと、使えない者の感覚というの理解できず、そこでつまずく危険性があった。
また、緑色の負傷兵は時間的余裕もある。
中には早くしろと怒鳴り出す兵士もいたが、私が気に食わないなら治療しないと言うと、誰もが大人しくなった。
少し大人気ない言い方かもしれないが、いちいち時間をかける余裕もない。
前線に来てから、今までより精神的に強くなったようにも思う。
そうやって先輩の仕事を見ながら、都度練習し、訓練兵は実地で訓練を行っていく。
魔力操作をし、回復魔法を唱える様子を実際に見ていた方が、実感が湧きやすいのか、今までよりも習得が早いようにも見えた。
少しだけある休憩時間、隊長用の執務室で魔力を回復させるために休んでいると、サルビアが報告しにきた。
私が休んでいる間はデイジーが必ず治療場にいるので、訓練兵の伝言はサルビアに頼んでいる。
「回復魔法を使えるようになってきた者も増えてきたようです」
「思いつきの方法だったけれど、なかなかうまくいっているみたいね。これからは、上の方にも取り入れるわよ。まずはサルビア、あなたも紫色を付けれるようになりなさい」
既に毒の治癒を行える赤色のリボンタイを付けれられる衛生兵は、サルビアだけではなくなっていた。
しかし、初級の呪いを解呪できる者が付けることが許された紫色のリボンタイは、いまだにデイジーだけだった。
ちなみに、元々は紫は強い毒の解毒だけで、呪いの解呪は私だけしかできない布なしだった。
しかし、部隊の能力が向上するにつれ、黄色以上の要求はそれぞれ変わっていった。
初めは色を増やすことも検討したけれど、あまり増やすと負傷兵に布を巻く際に、煩雑だということで、色の数はそのままにすることにしたのだ。
「紫色のリボンタイですか……本心としてはすぐにでも付けられるようになりたいところですが……」
「あなたには付けられる才能があるわ。自信を持ちなさい。以前よりも扱える魔力は格段に増えているはずよ。あとはきっかけだけ」
「ありがとうございます。しかし……その……コツと言いますか。限られた時間ですが、暇がある時には訓練をしていますが一向に」
「ええ。分かっているわ。あなたは努力をしている。だから、今日から私と一緒に布なしの対処をしてもらうわ」
伝えた瞬間、サルビアの目が見開いた。
驚きと興奮の様子だ。
「本当ですか⁉︎ 聖女様の治癒を近くで見ることができるなんて! ありがとうございます‼︎」
「お礼を言っている場合じゃないのよ。サルビア。治療はできるだけあなたが担当するの。もちろんできないことをやらせるつもりはないけれど」
「どういうことですか?」
「訓練兵と一緒よ。治療場で治療を施しながら、あなたに解呪の魔法を教えるわ。つまり実地訓練ね」
「え⁉︎ でも、呪いを受けた兵士たちは、みんな気が狂いそうな状態ですよ? 私が失敗したら……」
「少なくとも呪いですぐに死ぬことはないわ。長期間放置されてしまえば精神が病んでしまうこともあるけれど。治療場で過ごす時間程度では、そんなことも起きないでしょうね」
私が今からやろうとしていることは、やられる負傷兵からみれば、たまったものではないことは十分理解している。
しかし、今のままではデイジーと私のどちらも手を開けることができない。
もしサルビアがデイジーの負担を減らすことができれば、少なくとも私かデイジーの手が開く時間を捻出することができるかもしれない。
訓練兵が白色から緑色になるための訓練ならば、今のやり方で問題がない。
しかし、黄色や赤色になるためには適さない。
時間経過の結果、出血や毒によって命を落とす危険が圧倒的に高くなるからだ。
どうしても次の段階に行くためには、実地ではない、これまで通りの訓練も必要だ。
つまり、逼迫していない状況での訓練だ。
それを実現しなければ、求めた増員にはなりえない。
もしここが以前のような後衛に設置された陣営だったのであれば、緑色でも十分戦力になっただろう。
しかし、前線は予想していた以上に、重篤な負傷兵が多い。
小さな傷を治すことしかできない衛生兵では不十分なのだ。
サルビアが解呪の魔法を習得するまで、負傷兵には今よりも多少の痛みが伴う。
それは必要な痛みだと思うしかない。
私は神ではないのだ。
今この瞬間、全ての衛生兵を私と同じ程度の回復魔法の使い手にする方法があるのなら、喜んでこの身すら投げ出そう。
しかしそれは起こり得ない。
ならば、着実に一歩一歩進んでいくしかない。
「あなたが解呪の魔法を習得することは、今後の第二衛生兵部隊全体にとって、とても重要なことなの。サルビア、やってくれるわね?」
「……分かりました! できるだけ早く習得するように、精一杯頑張らせていただきます‼︎」
初めは教える側も教えられる側も戸惑っていたものの、少しずつ慣れてきたようだ。
第二衛生兵部隊にいる緑色のリボンタイをしている衛生兵は、全員が私やデイジーから訓練を受けている。
どうすれば回復魔法を使えるようになれるか、一から知っているという訳だ。
何も知らない訓練兵に、一から教えるとしても、問題はないだろう。
逆に初めから回復魔法が使えた者だと、使えない者の感覚というの理解できず、そこでつまずく危険性があった。
また、緑色の負傷兵は時間的余裕もある。
中には早くしろと怒鳴り出す兵士もいたが、私が気に食わないなら治療しないと言うと、誰もが大人しくなった。
少し大人気ない言い方かもしれないが、いちいち時間をかける余裕もない。
前線に来てから、今までより精神的に強くなったようにも思う。
そうやって先輩の仕事を見ながら、都度練習し、訓練兵は実地で訓練を行っていく。
魔力操作をし、回復魔法を唱える様子を実際に見ていた方が、実感が湧きやすいのか、今までよりも習得が早いようにも見えた。
少しだけある休憩時間、隊長用の執務室で魔力を回復させるために休んでいると、サルビアが報告しにきた。
私が休んでいる間はデイジーが必ず治療場にいるので、訓練兵の伝言はサルビアに頼んでいる。
「回復魔法を使えるようになってきた者も増えてきたようです」
「思いつきの方法だったけれど、なかなかうまくいっているみたいね。これからは、上の方にも取り入れるわよ。まずはサルビア、あなたも紫色を付けれるようになりなさい」
既に毒の治癒を行える赤色のリボンタイを付けれられる衛生兵は、サルビアだけではなくなっていた。
しかし、初級の呪いを解呪できる者が付けることが許された紫色のリボンタイは、いまだにデイジーだけだった。
ちなみに、元々は紫は強い毒の解毒だけで、呪いの解呪は私だけしかできない布なしだった。
しかし、部隊の能力が向上するにつれ、黄色以上の要求はそれぞれ変わっていった。
初めは色を増やすことも検討したけれど、あまり増やすと負傷兵に布を巻く際に、煩雑だということで、色の数はそのままにすることにしたのだ。
「紫色のリボンタイですか……本心としてはすぐにでも付けられるようになりたいところですが……」
「あなたには付けられる才能があるわ。自信を持ちなさい。以前よりも扱える魔力は格段に増えているはずよ。あとはきっかけだけ」
「ありがとうございます。しかし……その……コツと言いますか。限られた時間ですが、暇がある時には訓練をしていますが一向に」
「ええ。分かっているわ。あなたは努力をしている。だから、今日から私と一緒に布なしの対処をしてもらうわ」
伝えた瞬間、サルビアの目が見開いた。
驚きと興奮の様子だ。
「本当ですか⁉︎ 聖女様の治癒を近くで見ることができるなんて! ありがとうございます‼︎」
「お礼を言っている場合じゃないのよ。サルビア。治療はできるだけあなたが担当するの。もちろんできないことをやらせるつもりはないけれど」
「どういうことですか?」
「訓練兵と一緒よ。治療場で治療を施しながら、あなたに解呪の魔法を教えるわ。つまり実地訓練ね」
「え⁉︎ でも、呪いを受けた兵士たちは、みんな気が狂いそうな状態ですよ? 私が失敗したら……」
「少なくとも呪いですぐに死ぬことはないわ。長期間放置されてしまえば精神が病んでしまうこともあるけれど。治療場で過ごす時間程度では、そんなことも起きないでしょうね」
私が今からやろうとしていることは、やられる負傷兵からみれば、たまったものではないことは十分理解している。
しかし、今のままではデイジーと私のどちらも手を開けることができない。
もしサルビアがデイジーの負担を減らすことができれば、少なくとも私かデイジーの手が開く時間を捻出することができるかもしれない。
訓練兵が白色から緑色になるための訓練ならば、今のやり方で問題がない。
しかし、黄色や赤色になるためには適さない。
時間経過の結果、出血や毒によって命を落とす危険が圧倒的に高くなるからだ。
どうしても次の段階に行くためには、実地ではない、これまで通りの訓練も必要だ。
つまり、逼迫していない状況での訓練だ。
それを実現しなければ、求めた増員にはなりえない。
もしここが以前のような後衛に設置された陣営だったのであれば、緑色でも十分戦力になっただろう。
しかし、前線は予想していた以上に、重篤な負傷兵が多い。
小さな傷を治すことしかできない衛生兵では不十分なのだ。
サルビアが解呪の魔法を習得するまで、負傷兵には今よりも多少の痛みが伴う。
それは必要な痛みだと思うしかない。
私は神ではないのだ。
今この瞬間、全ての衛生兵を私と同じ程度の回復魔法の使い手にする方法があるのなら、喜んでこの身すら投げ出そう。
しかしそれは起こり得ない。
ならば、着実に一歩一歩進んでいくしかない。
「あなたが解呪の魔法を習得することは、今後の第二衛生兵部隊全体にとって、とても重要なことなの。サルビア、やってくれるわね?」
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