19 / 21
第19話【錬金術師】
しおりを挟む
「アベル! どうしてここに?」
「ああ! 良かった。エリス。心配したよ」
私の問いかけに答えず、アベルは私を話さない。
すると、一人の高貴な格好をした男性が声をかけてきた。
「あー、アベル。君のそんな慌てた様子や婦人を抱きしめてる様子を見るのは愉快だけれど、そろそろいいんじゃないのか?」
その男性の言葉に我に返ったのか、アベルは恥ずかしそうに私から離れる。
そしてアベルは男性に深々と頭を下げた。
「助かりました。殿下」
「よせ。お前と私の仲だ。そういうのはいらん。ましてや、この方があの薬を作った錬金術師殿なのだろう? 攫ったものがどういう目的なのか分からんが、この方を失うのはこの国にとっての損失だ」
殿下と呼ばれているということは、この国の王子様だろうか。
そんな人がアベルと一緒に私を助けに来るなんて、状況がよく分からない。
「とにかく、ここを出よう。ここは臭くてたまらん」
そういうと王子はさっさと出て行ってしまった。
アベルに手を引かれ、私もそれに続く。
途中見ないようにと目をつぶるように言われた場所が何度かあった。
見えないけれどあの臭いから、私を攫った人たちはもうこの世にいないのだろうということが分かった。
「エリス。本当に無事で良かった」
「助けに来てくれてありがとう。アベル。でもどうやってここまで来たの? この方たちは?」
アベルの説明によると、私が攫われた後、アベルは今日の約束の埋め合わせにと、私の家を訪れたそうだ。
しかし、留守のままなのを不審に思って、私の行方を探したらしい。
私が攫われた際にその現場を建物の窓から見ていた人が居たそうで、白い髪をした女性という特徴から、私が攫われたとアベルは断定したのだとか。
それ以外に目撃情報がなかったのも決め手になった。
「商人の情報網はエリスが思っている以上に広く深いからね」
「でもどうしてここだと分かったの?」
「それは、そのサラマンダーのおかげさ」
「サラマンダー?」
言われて左肩に乗っているサラマンダーに目を向ける。
サラマンダーは嬉しそうに目を細めて舌を出したり引っ込めたりしていた。
「エリスが攫われたと分かった後すぐに、そのサラマンダーが俺の元に現れたんだ。君の場所まで案内するといったような仕草を繰り返してね。君が送ってくれたんじゃないのかい?」
そうしてアベルは私を助けにいくことを決めたのだけど、ここで一つ問題があった。
私を攫った人たちは、その界隈では有名な実力の持ち主だったらしい。
そこでアベルは自分の伝、つまりここにいる、ロイズ王子に援助を求めた。
だけど、ただの知り合いの救出が目的では王子が動いてくれそうにないと思ったアベルは、切り札を使うことにしたのだとか。
その切り札というのが、以前王子に献納した回復薬の作り手が私だということ。
もともと旧知の仲で親交も深かった上に、更にその場にもついてきた精霊サラマンダーが決めてとなり、王子は自身の近衛兵を出してくれたのだという。
「ロイズ殿下。今回のこと、大変ご迷惑をおかけしました。お助けいただきありがとうございます」
「よいよい。そういえば、先ほど渇水に喘いでいた村が、不思議な白髪の少女のおかげで助かったと報があったぞ。これもお主の仕業だろう?」
「え? あ! 恐らくは」
「うむ。錬金術師殿が居るだけで国は潤う。ともすれば、お主を助けたのは国益を守ったことに他ならない。そう恐縮するな」
寛容な言葉に私は感謝の念を伝えるのが精一杯だった。
私と一緒にアベルも王子に再度お礼を述べる。
「と、いうわけで。エリス。君が錬金術師だということを知らせてしまった。申し訳ない」
「ううん。いいの。そんなことより助けてくれたのが嬉しいわ。ありがとう、アベル」
「それでなんだけど……やっぱり一人暮らしは何かと物騒だと思うんだ。どうだろう、もう一度一緒に暮らさないかい? もちろん住む部屋は客室じゃなくて――」
「それって、もしかしてプロポーズしてる?」
私の途中での突っ込みで、アベルはしどろもどろになる。
それを見て私は笑ってしまった。
「うふふ。助けてくれたのはありがとう。それに、その提案も嬉しいわ。でも、できればもう少しロマンチックな場所で言って欲しいな」
「あ! ごめん。そ、そうだね。でも、ひとまず。今日はうちにおいでよ。流石に不安だろう?」
「あっはっは。今までのアベルの様子だけでも今回付いてきた甲斐があったというのに、これは更に面白いものが見られたな!」
王子が大声を出して笑ったので、アベルは更に恥ずかしそうな顔を見せる。
悪いと思いながらも、私も声を出して笑ってしまった。
「ああ! 良かった。エリス。心配したよ」
私の問いかけに答えず、アベルは私を話さない。
すると、一人の高貴な格好をした男性が声をかけてきた。
「あー、アベル。君のそんな慌てた様子や婦人を抱きしめてる様子を見るのは愉快だけれど、そろそろいいんじゃないのか?」
その男性の言葉に我に返ったのか、アベルは恥ずかしそうに私から離れる。
そしてアベルは男性に深々と頭を下げた。
「助かりました。殿下」
「よせ。お前と私の仲だ。そういうのはいらん。ましてや、この方があの薬を作った錬金術師殿なのだろう? 攫ったものがどういう目的なのか分からんが、この方を失うのはこの国にとっての損失だ」
殿下と呼ばれているということは、この国の王子様だろうか。
そんな人がアベルと一緒に私を助けに来るなんて、状況がよく分からない。
「とにかく、ここを出よう。ここは臭くてたまらん」
そういうと王子はさっさと出て行ってしまった。
アベルに手を引かれ、私もそれに続く。
途中見ないようにと目をつぶるように言われた場所が何度かあった。
見えないけれどあの臭いから、私を攫った人たちはもうこの世にいないのだろうということが分かった。
「エリス。本当に無事で良かった」
「助けに来てくれてありがとう。アベル。でもどうやってここまで来たの? この方たちは?」
アベルの説明によると、私が攫われた後、アベルは今日の約束の埋め合わせにと、私の家を訪れたそうだ。
しかし、留守のままなのを不審に思って、私の行方を探したらしい。
私が攫われた際にその現場を建物の窓から見ていた人が居たそうで、白い髪をした女性という特徴から、私が攫われたとアベルは断定したのだとか。
それ以外に目撃情報がなかったのも決め手になった。
「商人の情報網はエリスが思っている以上に広く深いからね」
「でもどうしてここだと分かったの?」
「それは、そのサラマンダーのおかげさ」
「サラマンダー?」
言われて左肩に乗っているサラマンダーに目を向ける。
サラマンダーは嬉しそうに目を細めて舌を出したり引っ込めたりしていた。
「エリスが攫われたと分かった後すぐに、そのサラマンダーが俺の元に現れたんだ。君の場所まで案内するといったような仕草を繰り返してね。君が送ってくれたんじゃないのかい?」
そうしてアベルは私を助けにいくことを決めたのだけど、ここで一つ問題があった。
私を攫った人たちは、その界隈では有名な実力の持ち主だったらしい。
そこでアベルは自分の伝、つまりここにいる、ロイズ王子に援助を求めた。
だけど、ただの知り合いの救出が目的では王子が動いてくれそうにないと思ったアベルは、切り札を使うことにしたのだとか。
その切り札というのが、以前王子に献納した回復薬の作り手が私だということ。
もともと旧知の仲で親交も深かった上に、更にその場にもついてきた精霊サラマンダーが決めてとなり、王子は自身の近衛兵を出してくれたのだという。
「ロイズ殿下。今回のこと、大変ご迷惑をおかけしました。お助けいただきありがとうございます」
「よいよい。そういえば、先ほど渇水に喘いでいた村が、不思議な白髪の少女のおかげで助かったと報があったぞ。これもお主の仕業だろう?」
「え? あ! 恐らくは」
「うむ。錬金術師殿が居るだけで国は潤う。ともすれば、お主を助けたのは国益を守ったことに他ならない。そう恐縮するな」
寛容な言葉に私は感謝の念を伝えるのが精一杯だった。
私と一緒にアベルも王子に再度お礼を述べる。
「と、いうわけで。エリス。君が錬金術師だということを知らせてしまった。申し訳ない」
「ううん。いいの。そんなことより助けてくれたのが嬉しいわ。ありがとう、アベル」
「それでなんだけど……やっぱり一人暮らしは何かと物騒だと思うんだ。どうだろう、もう一度一緒に暮らさないかい? もちろん住む部屋は客室じゃなくて――」
「それって、もしかしてプロポーズしてる?」
私の途中での突っ込みで、アベルはしどろもどろになる。
それを見て私は笑ってしまった。
「うふふ。助けてくれたのはありがとう。それに、その提案も嬉しいわ。でも、できればもう少しロマンチックな場所で言って欲しいな」
「あ! ごめん。そ、そうだね。でも、ひとまず。今日はうちにおいでよ。流石に不安だろう?」
「あっはっは。今までのアベルの様子だけでも今回付いてきた甲斐があったというのに、これは更に面白いものが見られたな!」
王子が大声を出して笑ったので、アベルは更に恥ずかしそうな顔を見せる。
悪いと思いながらも、私も声を出して笑ってしまった。
35
あなたにおすすめの小説
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※小説内容にはAI不使用です。
※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!!
隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!?
何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。
絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる