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第4話【アベルの屋敷】
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「ここがハーミット商会の支部、俺が任されているアベル・ハーミット商会だよ」
幌馬車が止まり、ガルニエの合図で痛むお尻を押さえて降り立った私に向かって、アベルはこともなげにそう言った。
しかし私の目と口は開いたまま塞がらない。
『え? 大きすぎじゃない? 何この建物。どうやって作ったの? なんで崩れないの!?』
『あー。もう。やめてよね。そういう田舎者丸出しの態度。見てるこっちが恥ずかしくなるから』
私が頭の中で呟いた独り言に、エアは律儀に突っ込みを入れてくれた。
エアだって初めて見る癖に、と思ったけれど、よく考えたらエアは私の知らないことをいくらでも知っている。
「さぁさぁ。アベル様もエリス様も。中へ入りましょう。特にエリス様は、長旅でさぞお疲れでしょうから」
「あ、ありがとうございます」
ガルニエの案内に従い真っ白な壁を持つ三階建ての建物に入っていく。
どうやら壁は、小さな手のひらより少し大きな面を切りそろえられた石のようなもので作られているらしい。
『もー。王都に行った時にも見たでしょ。ここより大きな建物。お、し、ろ! それと一緒だよ』
『あ、そういえば。でもあの時は緊張しててなんにも覚えてないもの』
そんな話をしながら中に入った私はさらに驚いた。
何にかと言うとそこで働く人の多さにだ。
『私の村より人多いんじゃない?』
『そうだねぇ。っていうか、エリスのところは村と言うより集落だからね。人より精霊の方が多かったし』
少しエアに馬鹿にされた気もするけれど、無視することに決めた。
私は行き交いながらアベルと私に向かって挨拶をする人たちに、挨拶を返しながら屋敷の中を歩いた。
やがて一つの扉の前に立つ。
ガルニエが扉を開けると、そこには夢のような部屋が広がっていた。
「ここは客室でね。遠方から買い付けなどに来てくれた人を泊めたり休んでもらったりする部屋なんだ。行くあても今のところないのだろう? しばらくはここを使うといいよ」
「え!? いや、あの! そんなこと、困ります!! 申し訳なくて……」
「いやいや。むしろできる限りのことをしても足りないくらいだよ。ガルニエから聞いたけど、危なかったんだって? 俺の命の恩人だ。これくらい受け取ってくれ」
「はぁ……そう言うなら、少しの間だけ……お世話になります」
アベルは私の返事にまだ不満があるようだ。
親指と人差し指の間に顎を乗せて少し考え込む。
「それと。今言った通り、君は命の恩人なんだ。その丁寧な言い方は、普段通りの喋り方じゃないだろう? 無理しないで普通に話してくれないかな?」
「それは……」
そう言われて私は言葉につまる。
そもそもアベルに同じことを言い出したのは私の方で、私だけこの喋り方を続けるのは確かにおかしい。
おかしいけれど、ついついこの話し方になってしまう威厳のようなものを、アベルから受けてしまうのだ。
正直、普段使わないのをバレているなら意味が無いかもしれない。
「そ、それじゃあ。とりあえず普通の口調で……」
「そう。良かった」
アベルは私の言葉を受けて屈託のない笑顔を見せた。
こんな笑顔を振りまけるなら、さぞかし女性客からの売上げが大きいだろう。
「それで……薬の件なんだけど、もし良かったらここにいる間でも作ってくれないかな? 材料はだいたい揃ってるし、言ってくれれば揃えるよ。器具もだいたい扱ってるからすぐに用意できる」
「あ、ああ! うん。分かった。じゃあ、後で必要なものを伝えるね! えーっと……誰に言えばいいのかな?」
「ああ、そうだ。俺も忙しいからいつも来るわけにはいかないから。あ、いいところに。カリナ! ちょっと!」
「はい。御用ですか?」
アベルに呼ばれて足を止め、こちらに来たのは侍女と思われる女性だった。
歳は私より少し上、アベルと同じくらいだろうか。
白い長袖のブラウスに黒のプリーツスカート。
その上に白いエプロンを腰に巻いている。
少し赤みを帯びた茶色の髪と深い焦げ茶色の瞳が愛らしい。
「この方はエリスと言って、俺の最重要のお客様だ。何か用がある時はカリナに言うようにお願いするから、よろしく頼むよ」
「かしこまりました。カリナと申します。身の回りの世話などをさせて頂きますので、なんなりとお申し付けください」
そう言いながらカリナは深々と頭を下げる。
私も釣られて頭を下げたら、アベルに笑われてしまった。
「あ、あの! エリスと言います。丁寧な言葉に慣れないので! 良ければ普通に話しかけてください!!」
「まぁ」
私が慌ててそういうと、カリナは右手を口の前に当て、目を見開いて驚いた顔をした。
そして直ぐにその大きな瞳を細め、優しい言葉でこう言った。
「それはありがたいお言葉ですが、この話し方がわたくしにとっての普通でして。ご希望に添えるかどうか分かりませんが、なるべくエリス様のお心持ちに合うように致しますね」
「は、はい! よろしくお願いします!!」
「あっはっは! あーおかしい。エリス。君こそ普通に話したらどうだ? カリナは俺が幼少の時からここの侍女をやってくれていてね。崩れた喋り方など、俺も聞いた事がない」
「まぁ。アベル様はもう少し普段の話し方を丁寧にされた方がよろしいかもしれませんよ」
どうやらカリナは主であるアベルに冗談めいた小言を言える仲らしい。
美男美女。何かよく分からないけれど、見ていてこっちがどぎまぎしてしまう。
「それじゃあ、エリス。悪いけど俺はこの辺で。薬、本当に頼むよ」
「うん。ありがとう。またね」
「まぁ。エリス様は薬師様でいらっしゃるんですか? まさか……錬金術師様だとか……」
「あ! ええと! 薬師! そう、薬師だよ。後で必要な材料を伝えるから、お願いね」
慌てた私に微笑みを返しながら、カリナは一言『かしこまりました』とだけ、言った。
そして用があれば机の上のベルを鳴らすように私に伝えると、一旦部屋の外へ出ていく。
こうして、アベルの好意により、私はアベルの屋敷に住み込みの薬師として暮らすことになるのだった。
幌馬車が止まり、ガルニエの合図で痛むお尻を押さえて降り立った私に向かって、アベルはこともなげにそう言った。
しかし私の目と口は開いたまま塞がらない。
『え? 大きすぎじゃない? 何この建物。どうやって作ったの? なんで崩れないの!?』
『あー。もう。やめてよね。そういう田舎者丸出しの態度。見てるこっちが恥ずかしくなるから』
私が頭の中で呟いた独り言に、エアは律儀に突っ込みを入れてくれた。
エアだって初めて見る癖に、と思ったけれど、よく考えたらエアは私の知らないことをいくらでも知っている。
「さぁさぁ。アベル様もエリス様も。中へ入りましょう。特にエリス様は、長旅でさぞお疲れでしょうから」
「あ、ありがとうございます」
ガルニエの案内に従い真っ白な壁を持つ三階建ての建物に入っていく。
どうやら壁は、小さな手のひらより少し大きな面を切りそろえられた石のようなもので作られているらしい。
『もー。王都に行った時にも見たでしょ。ここより大きな建物。お、し、ろ! それと一緒だよ』
『あ、そういえば。でもあの時は緊張しててなんにも覚えてないもの』
そんな話をしながら中に入った私はさらに驚いた。
何にかと言うとそこで働く人の多さにだ。
『私の村より人多いんじゃない?』
『そうだねぇ。っていうか、エリスのところは村と言うより集落だからね。人より精霊の方が多かったし』
少しエアに馬鹿にされた気もするけれど、無視することに決めた。
私は行き交いながらアベルと私に向かって挨拶をする人たちに、挨拶を返しながら屋敷の中を歩いた。
やがて一つの扉の前に立つ。
ガルニエが扉を開けると、そこには夢のような部屋が広がっていた。
「ここは客室でね。遠方から買い付けなどに来てくれた人を泊めたり休んでもらったりする部屋なんだ。行くあても今のところないのだろう? しばらくはここを使うといいよ」
「え!? いや、あの! そんなこと、困ります!! 申し訳なくて……」
「いやいや。むしろできる限りのことをしても足りないくらいだよ。ガルニエから聞いたけど、危なかったんだって? 俺の命の恩人だ。これくらい受け取ってくれ」
「はぁ……そう言うなら、少しの間だけ……お世話になります」
アベルは私の返事にまだ不満があるようだ。
親指と人差し指の間に顎を乗せて少し考え込む。
「それと。今言った通り、君は命の恩人なんだ。その丁寧な言い方は、普段通りの喋り方じゃないだろう? 無理しないで普通に話してくれないかな?」
「それは……」
そう言われて私は言葉につまる。
そもそもアベルに同じことを言い出したのは私の方で、私だけこの喋り方を続けるのは確かにおかしい。
おかしいけれど、ついついこの話し方になってしまう威厳のようなものを、アベルから受けてしまうのだ。
正直、普段使わないのをバレているなら意味が無いかもしれない。
「そ、それじゃあ。とりあえず普通の口調で……」
「そう。良かった」
アベルは私の言葉を受けて屈託のない笑顔を見せた。
こんな笑顔を振りまけるなら、さぞかし女性客からの売上げが大きいだろう。
「それで……薬の件なんだけど、もし良かったらここにいる間でも作ってくれないかな? 材料はだいたい揃ってるし、言ってくれれば揃えるよ。器具もだいたい扱ってるからすぐに用意できる」
「あ、ああ! うん。分かった。じゃあ、後で必要なものを伝えるね! えーっと……誰に言えばいいのかな?」
「ああ、そうだ。俺も忙しいからいつも来るわけにはいかないから。あ、いいところに。カリナ! ちょっと!」
「はい。御用ですか?」
アベルに呼ばれて足を止め、こちらに来たのは侍女と思われる女性だった。
歳は私より少し上、アベルと同じくらいだろうか。
白い長袖のブラウスに黒のプリーツスカート。
その上に白いエプロンを腰に巻いている。
少し赤みを帯びた茶色の髪と深い焦げ茶色の瞳が愛らしい。
「この方はエリスと言って、俺の最重要のお客様だ。何か用がある時はカリナに言うようにお願いするから、よろしく頼むよ」
「かしこまりました。カリナと申します。身の回りの世話などをさせて頂きますので、なんなりとお申し付けください」
そう言いながらカリナは深々と頭を下げる。
私も釣られて頭を下げたら、アベルに笑われてしまった。
「あ、あの! エリスと言います。丁寧な言葉に慣れないので! 良ければ普通に話しかけてください!!」
「まぁ」
私が慌ててそういうと、カリナは右手を口の前に当て、目を見開いて驚いた顔をした。
そして直ぐにその大きな瞳を細め、優しい言葉でこう言った。
「それはありがたいお言葉ですが、この話し方がわたくしにとっての普通でして。ご希望に添えるかどうか分かりませんが、なるべくエリス様のお心持ちに合うように致しますね」
「は、はい! よろしくお願いします!!」
「あっはっは! あーおかしい。エリス。君こそ普通に話したらどうだ? カリナは俺が幼少の時からここの侍女をやってくれていてね。崩れた喋り方など、俺も聞いた事がない」
「まぁ。アベル様はもう少し普段の話し方を丁寧にされた方がよろしいかもしれませんよ」
どうやらカリナは主であるアベルに冗談めいた小言を言える仲らしい。
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