補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第四十二話

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 朝食を済ませ、二人は目的のダンジョンの入口へとたどり着いた。
 ダンジョンは、ティルスから歩いて数分の所にあった。

「いいか? 俺もセレナもダンジョンははじめてだからな。注意してゆっくりと進もう。それと、オーガの群れを見つけた時の作戦は覚えているな?」
「はい! 大丈夫です。ハンス様」

 セレナの返事を受け、ハンスはセレナに前に進むよう指示を出す。
 今までフィールドで狩りを行ってきた二人にとって、この前の地下道を除き、ダンジョンは初めての経験だった。

 ダンジョンの中は、ひんやりとした空気で満たされていた。
 地面は多くの冒険者によって踏み固められ、草の一つも生えておらず、天然のものであるはずなのに、平坦になっていた。

 横に広がる壁には所々苔が生えており、結露によるものなのか、水分を表面につけた岩肌はぬめぬめと照り光って見える。
 奥はどうなっているのか分からないが、入口から見える範囲の天井は、人の背丈の何倍も高い位置にあり、まるでつららのようなものが、何本もぶら下がっている。

「ひとまず、オーガが出るのはこの先の第三階層以降らしい。それまでは他の冒険者たちに魔物たちも倒されているだろうから、危険は少ないと思う」
「分かりました。何かありましたらすぐにお知らせします!」

 亜人であるセレナは、人間の何倍もの嗅覚や聴覚を持つ。
 これによりハンスよりも早く、周囲の異変を知ることが出来るのだ。

 滑って転ばぬよう注意して先を進むが、予想されていたこととはいえ、拍子抜けするくらい何も無く、二人は無事に第三階層へと降り立った。
 途中何かを採集していた、駆け出しと思われる冒険者のパーティをひとつ見つけた以外は、魔物にすら出くわしていない。

「ここからが本番だ。まあ、少し慎重になりすぎたかな」

 ゆっくり歩いたせいもあり、感覚では、既にこのダンジョンに入ってから、半日が経っていた。
 帰りの道順も安全なことも分かっているため、行きより早く移動できるとはいえ、戻る時間も考えると、ここに居られる時間もそう長くなかった。

 しばらく進むと、武器がぶつかる音と、魔法が炸裂する音が聞こえてきた。
 どうやら誰かが魔物と戦っているようだ。

 もしオーガだったら攻略の参考にしたいと思い、見に行くことにした。
 他の魔物だとしても、ハンスたちが後々出くわすかもしれないから、いずれにしろ参考になるのだ。

 音の発信源にたどり着くと、二匹のオーガと四人の冒険者たちが戦っていた。
 どうやら冒険者たちはオーガ一匹ならなんとかできそうだが、二匹を同時に相手取るのは難しそうだった。

 しかし、他の冒険者の戦っている最中に無断で加勢することは、トラブルの原因になることから、暗黙の了解として禁止されている。
 ハンスはひとまず、いつでも動き出せる位置から、冒険者達の戦いを観察することにした。
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