最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜

黄舞

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第8話ーブレイブたちの話

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 アリシアがバイソーの群れを討伐し、戦神の再来と崇め奉られている、少し前から、話は始まる。
 討伐依頼を受けた勇者ブレイブたちは、アリシアよりも一足先に、近くの町ゲッティンゲンに来ていた。

 町の広場で行われている催しを見て、まず初めに戦士ファイが口を開いた。

「見ろよ。ブレイブ。なんだか力自慢たちが挑戦する催し物があるみたいだぜ」
「あれは戦神ガウスの遺したとされる破城槌ハノーファーですね」

 ブレイブの代わりに様々な知識を持つ魔導士ザードが答えた。
 今度はザードの言葉を聞いたブレイブが質問を投げかける。

「破城槌って、普通はやぐらに設置したり、複数人で持って突進したりするやつだろう? あんなもの、人が持てるのかい?」
「難しいでしょうね。多分ファイでも無理だと思います。この町ができてから百五十年以上が経ちますが、その間毎年この祭りが開催され、数多くの力自慢が抜こうと挑戦したらしいですが、その結果は今もなお地面に突き刺さったままの破城槌が答えを示しています」

 広場に柱のように立つ破城槌ハノーファー。
 今の時代では解明できない特殊な金属でできていると言われ、抜けないのでその重量を知るものはいない。

 白金色に輝きを放つ表面には、翡翠色の複雑な紋様が所狭しと描かれていた。
 それを見たザートが、今度は興奮した様子で捲し立てるように言った。

「ほう! あれが噂に聞く古代神聖文字ですか! 千年以上前に存在した今とは異なる世界の文字とも呼ばれていますが、既にその知識は失われ、誰も読み解くことはできないと聞きます。個人的にはあちらの文字の方が興味がありますね!」
「お? なんだ。ザードもあれが欲しいのか? それならよ。俺がいっちょ試しに抜いてきてやるから。ちょっとデカすぎるが、戦神と呼ばれるくらいの神様が使っていたんなら、その攻撃力は折り紙付きだろうしよ!」

 二人して盛り上がる中、ブレイブだけが冷静に突っ込みを入れる。

「二人とも。俺たちがここに来た理由をまさか忘れたんじゃないんだろうね? そう言うのは、アリシアだけで十分……っと、もう今はいないんだけっか。それはそうと、今まで抜けたことがないって言うんなら、討伐を終えた後にしたって遅くはないだろう? ほら! 準備を整えたら、早速向かうよ‼︎」
「へいへい……」
「そうですね……私としたことが。失礼しました」

 従来なら、ファイやザードではなく、前まで一緒に行動していた、聖女のアリシアが本来の目的を忘れ、余計なことに首を突っ込む役だった。
 残りの三人はそれを止める、というのがこれまでの役割だったのだが、アリシアが怪しい商人から買ったという巻物を使った影響で幼女になってしまったため、ついつい二人がその役目をになってしまったというところである。

「アリシアと一緒って言われると、なんだか、その、なぁ?」
「そうですね。彼女は聖女としての力は絶大なんですが、その……純粋無垢過ぎます」

 ブレイブの後でファイとザートは先ほどブレイブに言われたことについて、少し傷付いたような素振りを互いに見せた。
 それほどまでに、アリシアは少し、いや、かなり独特の感性の持ち主だった。

 しばらくして、三人は討伐対象が根城にしている洞窟へと辿り着く。
 中には大勢の魔獣が群れをなしているだろう。

 入り口に立ち、ブレイブが他の二人に向かって声をかける。

「これから討伐を始めるが、一つだけ気を付けて欲しいことがある。知っての通り、アリシアはもうここにはいない。今までは、彼女の回復魔法のおかげでやっていけた部分も大きい。だが……」
「できるだけ怪我するなってんだな?」

 ブレイブと長い付き合いである幼馴染のファイは、ブレイブの言葉を取るように答えを述べる。
 その答えにブレイブは大きく、一度だけ頷いた。

「そうだ。恐らく、この洞窟の主は魔族。ならば、主を討伐する前の魔獣たちは統率され、厄介なことこの上ない。だから……」
「できるだけ無駄な戦闘は避け、主である魔族討伐を最優先にする。っていうことですね?」

 今度はザードが、今回の討伐における方針の答えを述べた。
 それについてもブレイブは、大きく一度、首を縦に振る。

「なんだろう。いっつもすごく丁寧に説明しないと伝わらないから、こういう言い方が身についてしまっていたが、今は『怪我するな』、『主だけ優先』だけで伝わる気がするな」
「あー。こう言っちゃなんだけどよ。多分、伝わっていなかった原因がいないからじゃないか?」
「そうですね。アリシアは一から十五くらいまで説明しないと十まで理解してくれませんでしたから」

 いなくなった元仲間の悪口ではなく、事実を互いに思い出しながら、全員が苦笑する。
 しかし、そのようなアリシアの性格や理解力を加味したとしても、実際にアリシアから恩恵は余りある物だというのもまた事実だ。

「とにかく。今までの戦力の半分以下になっていてもおかしくない。慎重に、無理せずに進むぞ。アリシアを置いて行って、みんな死んでしまいましたなんて、彼女に申し開きできないからな」
「当たり前だ! 俺は魔王討伐なんて正直どうでも良かったんだ。ブレイブやザード、そしてアリシアを守ることが俺の戦う理由よ」
「もし三人で難しい場合は、新しい回復師を探さなければいけませんね。正直、アリシアより優秀な回復師がこの世にいるとは思えませんが」

 三人は互いに目を合わし、そして頷いてから、洞窟へと進んでいった。
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