6 / 18
第6話
しおりを挟む
「えーい‼︎」
先頭のバイソーが思いがけずやられたせいなのか、群れは戸惑っているようにその場を動かずにいた。
その群れの新しい先頭の一頭に向かって、私は握りしめた拳を振りかぶり――
盛大に空振りをした。
「あぁ! 私のおててが小さすぎるし、腕も短すぎる‼︎」
未だに幼女になったことに慣れておらず、距離感が狂っていた。
突き出した可愛らしい傷一つないすべすべとした拳は、狙ったバイソーの脚のかなり前で止まっていたのだ。
「そもそも、相手がデカすぎる! 顔を殴れば一発なのに、届かないじゃない!」
先ほどのバイソーは、私を角で串刺しにをしようと、頭を地面すれすれに下げた状態で突進してきていた。
そのおかげで、小さくなってしまった私でも、届くことができた。
今一瞬、ファイの顔で、「アリシアは元から小さいだろ」と言うのが聞こえた気がしたけれど、幻聴だろう。
流石の私でも今の幼女姿の私よりは大きかったもんね!
「はっ⁉︎ 関係ないことをついつい考えてしまっていたわ。それにしてもどうしましょう。何度やってもあいつら意外とすばしっこくて攻撃が届かない……」
別のことを考えている間も、私は果敢にバイソーに向かって攻撃を繰り出していた。
しかし、いくら攻撃しても、腕の長さの不利が災いし、一度も攻撃を当てることができない。
「あー、もう! なんか長くておっきいものがあればいいのに! あ、そういえば……」
私はふと目線を広場の中央に向ける。
そこには先ほど見た、金属か何かでできた大きな柱が地面に突き刺さった状態で立っていた。
「確か、あれを引き抜こうとしてたわね。と言うことは、抜ける? おねえさん! あの金属の柱みたいなの何⁉︎」
私は今度は後ろを振り返り、未だに柱の影に隠れたまま、「やれー! そこだー! おしいー‼︎」と声援を送ってくれているおねえさんに向かって叫んだ。
まさか自分に話が飛ぶとは思わなかったのか、一瞬身体をびくんと跳ねさせた後、おねえさんが金属の柱のことを説明してくれた。
「それは、この町に古くから伝わる伝説に登場する、戦神ガウスが使っていたとされる破城槌です‼︎ 戦神ガウスが悪神ワルイーヤーツを殺した後、その破城槌をこの地に突き刺し去っていったとされています‼︎」
「なるほど! おねえさん、ありがとう‼︎」
何故かおねえさんは敬語になっていたが、この際そんな細かいことは気にしないでおこう。
とりあえず、このでっかい柱、破城槌を抜ければ手頃な武器になりそうだ。
「えーと……持つところは……あ! あった‼︎」
ちょうど私こうでの高さのところに、大人の手の平を二つ並べて持てる分ぐらいの長さの柄がある。
とりあえず、そこを掴んで上に引っこ抜いてみる。
「んんんー!! 抜けなーい!! ……抜けたッ!!」
土に刺さっていた部分の長さはさほどでもないが、とにかく重い。
全長は一際背の高いファイよりも大きいだろうか。
太さは、大の大人がすっぽりと隠れることができるくらい。
先端は中心に向かって緩やかに尖っている。
「よーし。ちょっと重いけど、これなら避けられないでしょ! あんたたち、覚悟しなさい!!」
既に私が相手をしていた以外のバイソーたちは、広場にある建造物を壊し始めている。
早く倒さないと、どんどん被害は広がるだろう。
私はとりあえず身近にいた一頭に、破城槌を振りかぶった。
グシャっ!!
あまり心地いいとは言えない奇妙な音とともに、破城槌で殴られたバイソーは動かぬ肉片と化した。
ちょっと、勢いをつけすぎたかもしれない……
「わ、私が悪いんじゃないわよ!! ちょっとこの槌、重すぎるのがいけないんだから!!」
誰に言っているのか自分でも分からないけれど、ひとまず言い訳はしておこう。
もしかしたらおねえさんが聞いてくれているかもしれない。
そう思って、笑顔を作ってからおねえさんの方を振り返る。
すると、「ひゅっ!!」という息を吸い込む音が聞こえ、まるで怯えたような素振りを見せるおねえさんの姿があった。
「あ……柱に完全に隠れたし……」
何故か驚かせてしまったようだ。
いけない、いけない。少し力加減を考えないと。
「まぁいいわ。とりあえずはバイソーたちをやっつけないとね! やー!!」
破城槌を抱えたまま、私は次に近くにいたバイソーにそのまま体当たりをする。
破城槌にぶつかった瞬間、まるで重量がないかにように、バイソーは吹っ飛んでいった。
「次!!」
家屋に体当たりを繰り返し行っているバイソーには、上から下に破城槌を打ち付ける。
超重量物に押しつぶされ、通算四匹目のバイソーも息絶えた。
さすがにそこまでやると、バイソーたちも誰が危険なのか気づいたようで、一斉に私の方を振り向き、威嚇を始めた。
「あらー? ようやく私の凄さに気づいたってところ? 馬鹿な魔獣にも少しは考える頭があるのね!」
「あ……馬鹿って言った……」
……おねえさんの声が聞こえた気がしたけれど、気のせいだろう。うん。
私はいいの! と心の中で叫びながら、すぐに対応できるように破城槌を構えた。
先頭のバイソーが思いがけずやられたせいなのか、群れは戸惑っているようにその場を動かずにいた。
その群れの新しい先頭の一頭に向かって、私は握りしめた拳を振りかぶり――
盛大に空振りをした。
「あぁ! 私のおててが小さすぎるし、腕も短すぎる‼︎」
未だに幼女になったことに慣れておらず、距離感が狂っていた。
突き出した可愛らしい傷一つないすべすべとした拳は、狙ったバイソーの脚のかなり前で止まっていたのだ。
「そもそも、相手がデカすぎる! 顔を殴れば一発なのに、届かないじゃない!」
先ほどのバイソーは、私を角で串刺しにをしようと、頭を地面すれすれに下げた状態で突進してきていた。
そのおかげで、小さくなってしまった私でも、届くことができた。
今一瞬、ファイの顔で、「アリシアは元から小さいだろ」と言うのが聞こえた気がしたけれど、幻聴だろう。
流石の私でも今の幼女姿の私よりは大きかったもんね!
「はっ⁉︎ 関係ないことをついつい考えてしまっていたわ。それにしてもどうしましょう。何度やってもあいつら意外とすばしっこくて攻撃が届かない……」
別のことを考えている間も、私は果敢にバイソーに向かって攻撃を繰り出していた。
しかし、いくら攻撃しても、腕の長さの不利が災いし、一度も攻撃を当てることができない。
「あー、もう! なんか長くておっきいものがあればいいのに! あ、そういえば……」
私はふと目線を広場の中央に向ける。
そこには先ほど見た、金属か何かでできた大きな柱が地面に突き刺さった状態で立っていた。
「確か、あれを引き抜こうとしてたわね。と言うことは、抜ける? おねえさん! あの金属の柱みたいなの何⁉︎」
私は今度は後ろを振り返り、未だに柱の影に隠れたまま、「やれー! そこだー! おしいー‼︎」と声援を送ってくれているおねえさんに向かって叫んだ。
まさか自分に話が飛ぶとは思わなかったのか、一瞬身体をびくんと跳ねさせた後、おねえさんが金属の柱のことを説明してくれた。
「それは、この町に古くから伝わる伝説に登場する、戦神ガウスが使っていたとされる破城槌です‼︎ 戦神ガウスが悪神ワルイーヤーツを殺した後、その破城槌をこの地に突き刺し去っていったとされています‼︎」
「なるほど! おねえさん、ありがとう‼︎」
何故かおねえさんは敬語になっていたが、この際そんな細かいことは気にしないでおこう。
とりあえず、このでっかい柱、破城槌を抜ければ手頃な武器になりそうだ。
「えーと……持つところは……あ! あった‼︎」
ちょうど私こうでの高さのところに、大人の手の平を二つ並べて持てる分ぐらいの長さの柄がある。
とりあえず、そこを掴んで上に引っこ抜いてみる。
「んんんー!! 抜けなーい!! ……抜けたッ!!」
土に刺さっていた部分の長さはさほどでもないが、とにかく重い。
全長は一際背の高いファイよりも大きいだろうか。
太さは、大の大人がすっぽりと隠れることができるくらい。
先端は中心に向かって緩やかに尖っている。
「よーし。ちょっと重いけど、これなら避けられないでしょ! あんたたち、覚悟しなさい!!」
既に私が相手をしていた以外のバイソーたちは、広場にある建造物を壊し始めている。
早く倒さないと、どんどん被害は広がるだろう。
私はとりあえず身近にいた一頭に、破城槌を振りかぶった。
グシャっ!!
あまり心地いいとは言えない奇妙な音とともに、破城槌で殴られたバイソーは動かぬ肉片と化した。
ちょっと、勢いをつけすぎたかもしれない……
「わ、私が悪いんじゃないわよ!! ちょっとこの槌、重すぎるのがいけないんだから!!」
誰に言っているのか自分でも分からないけれど、ひとまず言い訳はしておこう。
もしかしたらおねえさんが聞いてくれているかもしれない。
そう思って、笑顔を作ってからおねえさんの方を振り返る。
すると、「ひゅっ!!」という息を吸い込む音が聞こえ、まるで怯えたような素振りを見せるおねえさんの姿があった。
「あ……柱に完全に隠れたし……」
何故か驚かせてしまったようだ。
いけない、いけない。少し力加減を考えないと。
「まぁいいわ。とりあえずはバイソーたちをやっつけないとね! やー!!」
破城槌を抱えたまま、私は次に近くにいたバイソーにそのまま体当たりをする。
破城槌にぶつかった瞬間、まるで重量がないかにように、バイソーは吹っ飛んでいった。
「次!!」
家屋に体当たりを繰り返し行っているバイソーには、上から下に破城槌を打ち付ける。
超重量物に押しつぶされ、通算四匹目のバイソーも息絶えた。
さすがにそこまでやると、バイソーたちも誰が危険なのか気づいたようで、一斉に私の方を振り向き、威嚇を始めた。
「あらー? ようやく私の凄さに気づいたってところ? 馬鹿な魔獣にも少しは考える頭があるのね!」
「あ……馬鹿って言った……」
……おねえさんの声が聞こえた気がしたけれど、気のせいだろう。うん。
私はいいの! と心の中で叫びながら、すぐに対応できるように破城槌を構えた。
6
あなたにおすすめの小説
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
召喚された聖女はこの世界の平民ですが?家に帰らせていただきます!
碧井 汐桜香
ファンタジー
召喚された聖女は、この世界の平民でした。
バレないように異世界から召喚された聖女のふりをしながら、家に帰る機会を見計らって……。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる