魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する

黄舞

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第二章【天才、魔法の杖を作る】

第三十二話【アムレットの杖2】

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 ガストンから杖を受け取ったアムレットはまじまじと出来上がったばかりの杖を見つめる。
 白い杖の先端にはゲイザーの眼球を素材とした球状の核が据えられていた。

「さて。最後に嬢ちゃんの魔力をこの杖に通して終わりだ。なんでもいい。この杖を使って魔法を使ってくれ」
「そうすれば、この杖は晴れてアムレット嬢ちゃんの物となる。そうなれば、他の誰かが使うおうとしたって使えないって話さね」

 ガストンとアメリアの言葉に、アムレットは困った顔を俺に向ける。

「なんだっていいって言うんだから、慣れ親しんだ魔法を使ってみればいいんじゃないか?」

 俺はアムレットの視線に応えてそう言う。
 アムレットは少し考えるそぶりをした後、決心がついたような顔で、魔法の詠唱を始める。
 それは、ごく初歩の回復魔法だった。
 おそらくアムレットがこれまでに最も慣れ親しんだ魔法なのだろう。

「祝福を」

 杖を握ったままアムレットが唱えた魔法は杖と共鳴し、甲高い音が鳴り響く。
 アムレットの手から杖へと魔障が移動し、核で増幅され真っ白な光が増加していく。
 放たれた光がガストンにぶつかる。
 ガストンは少し驚いた顔した。

「おほ! これは凄いわい。見えにくかった手元が良く見えおる」

 嬉しそうな声を出すガストンを尻目に、アメリアはまじめな顔をして、アムレットに言う、

「これで、その杖は正真正銘アムレット嬢ちゃんのための物になった。間違っても雑に扱うんじゃないよ」
「は、はい! 凄いです……まるで私の身体の一部みたいで……」

 無事にアムレットの杖は、出来上がったようだ。
 これで実技の授業も問題なくこなせるだろう。

「その杖はアムレット嬢ちゃんに合わせて作ったが、成長に合わせて調整が必要だ。定期的に……そうさね。半年に一回くらいは顔を見せな」
「分かりました! 本当にありがとうございます‼」

 ひとしきりの礼をしたアムレットと学園へと戻る。
 戻った際にサーミリアに見つかり、文句を言われたりもしたが、上手くしのいだ。
 ユニコニア寮の前までアムレットを送った時、アムレットは俺の目を見つめ、少し頬を赤らめて礼を言ってきた。

「あの……フィリオ君。ほんとにありがとう。こんなすごい杖を手に入れられるなんて……ほんと……ありがとう」
「ああ。気にするな。正直素材集めも楽しかったしな。それじゃあ、またな」

 そう返した俺に、アムレットは一瞬間を置き、決心したような表情で言葉を続けた。

「あ、あの! 私ね! 私、フィリオ君のことが好きだよ!」

 はっきりとした声でアムレットはそう言った。
 好きと人に言われたのは初めてかもしれない。
 前世では、そもそも人とのかかわりを極力避けてきた。
 自分でも、こうやって他人の面倒を見ている自分に少し驚く。

「ありがとう。俺もアムレットが友人になってくれてよかったと思うよ」

 俺は素直な気持ちをアムレットに返す。
 アムレットが俺を友人として好んでくれているの嬉しいし、俺もアムレットのことをいい友人だと思っている。
 しかし、何故か俺の返事を聞いたアムレットは、少し残念そうな顔をしてから、笑みを作った。

「う、うん! これからもよろしくね! それじゃあ、今日はほんとありがとう!」
「ああ、解毒魔法の方もよろしく頼む。それじゃあな」

 俺はアムレットを後にして、両親とルーナが待つ家へと帰る。
 家に付くと両親が今日はどこへ行ったのかとか、どうだったのかとか、妙にはしゃいだ様子で聞いてきたが、詳しい話などできるわけもなく、俺は適当にごまかした。

 次の日、実技の授業があり、アムレットは作ったばかりの自分の杖を持参し、参加した。
 指導教官であるメルビンが、修繕を終えたばかりの第三競技場で自慢げに話している。

「良いかね? 先日、この壁の一部が破損してしまったが、それは誇るべきことだ。ここにいるフレア君の魔法が素晴らしかった証左だ。他の者たちも、そのくらいの魔法をやがて使えるようになるため、一生懸命訓練に励んでほしいものだね!」

 名指しされたリチャードは妙に得意げだ。
 いつもの取り巻きの二人に対し、自分の使った魔法がどれだけ素晴らしいかご高説を垂れている。
 別に壁を壊したのが俺だと喧伝する必要などないので、俺は黙ってリチャードの好きなようにさせておいた。

「さて。それじゃあ、少しの間を置いてしまったが、早速それぞれの得意な魔法を伸ばす訓練をしよう。みんな、杖は持っているね?」

 メルビンの言葉に、それぞれが手にもつ杖を掲げた。
 以前は持っていなかったアムレットも同様にだ。
 俺は、残念ながらまだ素材集めすら始められていないので、今回も杖はない。

「おや。君は確か編入生の……ツンバ君だったかね……? ようやく杖を用意できたようだね」
「シルバです。先生。はい。この通り」

 アムレットが見せた杖を一瞥して、メルビンは鼻を鳴らす。

「ふん。平民が一丁前に杖を持つかね。まぁいい。国が作った制度上は君にも許されている。この学園にいる間だけだがね。しかし、勘違いしてはいかんよ? 杖を手にしただけではそう簡単に魔法を上手く扱えるようにはならんのだよ。どれ、試しにその杖であそこの的に魔法を撃ってみたまえ」

 メルビンは偉そうな態度で顎で第三競技場中央に設置された木製の的を指さした。
 修繕は終わったものの、以前設置された魔法陣は規模が大きく、また学園長が忙しいために建物全体への魔法無力効果は作れなかったらしい。
 今回新しく設置された魔法陣の製作者はメルビンらしく、開始早々自慢げに話していた。
 なんでも、中央に新しく描かれた魔法陣と的に描かれた魔法陣とで、的とその周囲にのみ、以前と同様魔法無力効果を持たせているんだとか。
 俺は話を聞いた時に魔法陣を解析してみたが、残念ながら学園長の作ったものと比べても見劣りする作りだった。

「はい! 頑張ります!」

 アムレットは指示されたように、集団から一人離れ、的に杖の先端で狙いを定め、前回と同様の魔法を唱える。
 手から杖の先端にはめこまれたゲイザーの眼球を素材とした核へと魔力が伝わる。
 核に施された無属性特化の演算機能により、アムレットの魔力は高度に精錬されていき、魔障によるこぶし大の揺らぎが発生した。

「衝撃よ!」

 力ある言葉により発生した不可視の衝撃波は三つのうちの真ん中の的にぶつかり、耳障りな高音を発した。
 次の瞬間、的の端にヒビが生じ、そのヒビが弾き割れると共に音は鳴りやんだ。

「ど、どうでしょう?」

 自分の繰り出した魔法に自信が持てないのか、アムレットは上目遣いにメルビンに問う。
 問われたメルビンは飛び出た目を丸々と見開きながら固まっていた。

「ど、どうやら。一つだけ不良があったようだね。いやはや。私としたことが。まぁ、最近忙しかったからね……」

 メルビンはあくまでアムレットの魔法の威力を認めず、たまたま一つだけ魔法陣の効果が弱かったことにしたいようだ。
 まぁ、不良があるって言うのはあながち間違いではないが。
 それが一つだけかどうか……
 俺はアムレットが唱えたのと同系列の無属性攻撃魔法を小声で唱え、手のひらを右の的へと向けた。

「砕け、塵芥じんかいと化せ」

 空間を歪ませながら無色透明の波動が的へと放たれる。
 俺の放った魔法がぶつかると、的は小さく震えた後、一瞬で塵となり崩れ去った。

「メルビン先生。どうやら不良品は一つだけじゃなかったようです。自分が放った魔法でも壊れてしまいました」

 俺は両肩をすくめながら、わざとらしく大き目の声で言う。
 メルビンは先ほどよりもさらに大きく目を見開き、崩れて塵の山と化した的と俺を交互に見る。

「は、はははは……私としたことが……どうやら、仕事のし過ぎで疲れたが溜まっていたようだね。今日の授業は中止。それぞれ、自習したまえ。私は少し休暇をもらうよ……そうだ。最近忙しすぎたからね……」

 そう言うとメルビンは第三競技場から去っていった。
 アムレットが俺の方を見て、笑う。
 俺も笑顔で返す。
 実習になったことを喜んでいるクラスメイトを尻目に、俺とアムレットは第三競技場を後にした。
 後ろの方ではリチャードが一つ残った手付かずの的に魔法を唱えていた。

「燃え盛れ、火よ!」
「あれ? なんも起こらないですね。リチャード様」
「壁も壊すくらいの魔法をまた見せてくださいよ!」
「ば、馬鹿! これは……あれだ! こっちの二つはメルビン先生の言う通り不良品で、これが唯一まともな的だったんだ! 僕の魔法を受けてもビクともしないとは! さすがメルビン先生‼」
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思いついたネタを勢いで書いたので投稿しましたヾ(●´∇`●)ノ
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評判が真逆な双子の姉妹のどちらかを婚約者に選ばなければいけなくなった王太子が侯爵家に身分を隠して執事として潜入するという異世界恋愛です。
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