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第二章【天才、魔法の杖を作る】
第二十話【思わぬ同行者】
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「ねぇ。フィリオ君……フィリオ君が凄いってことは私十分分かっているつもりだよ?」
ガストンたちから必要な素材の説明を受けた俺とアムレットが学園へ戻る飛行中、アムレットは不安そうな顔つきで俺に話しかけてきた。
どうやら素材を俺たち自ら集めるということに、未だに自信が持てないようだ。
「さっきも言っただろ? ゲイザーも他の素材も俺たちなら問題なく狩れるって。別に全て殲滅する必要なんかないんだ。一体狩れればいいんだよ?」
「そんなこと言っても、もしフィリオ君が怪我したら!」
「それこそアムレットの出番じゃないか。回復魔法や補助魔法は自分自身にはかけられないんだから」
自分の魔力を変換して、身体強化や治癒、状態異常回復など、アムレットが得意とする魔法は他人に使えるが、自分自身には使えない。
もちろん俺も使えるが、理論をどんなに弄ろうが、原理的に自分には使えない。
そういう意味ではアムレットは俺の欠点を補ってくれる能力の持ち主といえる。
「それはそうだけど……」
「まぁ、危なくなったら無理をせずに逃げるさ。せっかく手に入れた生を簡単に手放すつもりはないからな」
「え? せっかく手に入れたって。フィリオ君、たまに変な言い回しするよね。あはははは」
ツボに入ったのか、今まで不安げだった表情は吹き飛び、アムレットは大口を開けて盛大に笑う。
相変わらず感情がころころと変わって忙しいやつだな、と思うと同時に、ここまで感情を表に出せるアムレットのことを正直羨ましいと感じた。
「とにかく。予定通り、明日は魔法の練習はなしで、素材集めに行くぞ。この際だから授業は朝からサボりだな」
「え!? サボるって。大丈夫かな?」
「正直、今受けている授業の内容なら、出席するだけ時間の無駄だ。出席日数ってのがなければ全て別のことの時間を使う」
「うーん。フィリオ君ってほんと。謎なんだよなぁ」
俺の顔を覗き込むように見つめてくるアムレットのことを無視して、俺は上空高く飛行を続けていた敷物の高度を下げていく。
学園上空に着いたのだ。
音も立てずに人気のないところに着地させると、アムレットに念を押す。
「それじゃあ、明日の朝。授業開始時刻にここに集合だ。遅れるなよ?」
「うん! こう見えて朝には強いから大丈夫だよ! その代わり、夜には弱いけど……ふわぁ。なんだか眠たくなっちゃった」
アムレットはそう言いながら大きく欠伸をする。
小さな手をいっぱいに広げて口の前に置いているが、逆に指と指の隙間から口の中が丸見えだ。
できるだけ急ぎはしたものの、すでに日は沈んでしまった。
それにこの国の誰もが知る伝説の中の人物と対面したのだから、余計な気も使っていたんだろう。
間違ってもここで寝てしまわないように、アムレットの寮まで彼女を送っていき、それから俺は自宅へと戻るために門へと進んだ。
「坊っちゃま。お帰りなさいませ。お待ちしておりました」
門に着いた途端、侍女のルーナから声をかけられ、俺は驚いた。
今日は遅くなるから、迎えはいらないと伝達を頼んでいたはずだ。
ずっとここで立って俺の帰りを待っていたのだろうか。
「ルーナ。こんな遅くにどうしているんだ? まさか、伝達が届いてなかったのか?」
俺の言葉にルーナは首を横に振る。
「いいえ。確かに本日のお帰りが遅くなることも、迎えがいらないことも承っております」
「じゃあどうして。遅くなるとは伝えたが、いつ帰るか正確な時刻まで言ってなかったはずだ」
「お帰りが遅くなるとのことだったからです。これは私のわがままです。どうかお許しを」
深々と頭を下げるルーナの姿を見て、俺は悟った。
言動が大きく変わったとしても、ルーナから見れば俺は生前のフィリオと何も違わないのだ。
俺が遅くなると伝達を出したのは今回が初めて。
ルーナからしたら、俺の意思なのかそれ以外の者に無理やり言わされてしまっているのかわからなかったのだろう。
かといって学園の中に入り、俺を探すこともできない。
それは両親ですら一緒だ。
貴族としてもっとも立場の低い淡爵では、子供に何かあったかもしれない程度の不確かな情報では、口を挟むことなどできないだろう。
何もできず、ただ俺の無事を案じて俺を待ち続けていたのだ。
俺の許しの言葉を待っているのか、一向に頭を上げないルーナに俺は謝罪の言葉をかける。
「頭を上げてくれ。ルーナ。今回の件は俺が軽率だった。今後気を付けるよ。すまなかった」
ゆっくりと下げていた上半身を戻し、ルーナは優しい笑顔で答える。
「いいえ。坊っちゃま。とんでもないことでございます。私が勝手にやったことでございます」
「そうか。ありがとう」
ルーナに先導され、馬車に乗り込む。
家路へと走り出した馬車の中で、彼女から俺がどこで何をしていたのかなどという質問は一切なかった。
いつかは伝えなければいけないのだと思いながら、俺はそのタイミングをいつにするか、どこまで真実を話すのか、真剣に考え始めた。
◇
次の日、俺はアムレットとの約束通り、予定の時刻に集合場所へ向かった。
少し早く着いたせいもあり、アムレットの姿はまだない。
「素材集めの順番的にまずはゲイザーだな。残りの方はアムレットがいれば苦もなく手に入れられるだろうし」
独り言を呟きながら、俺は昨日のガストンたちとのやり取りを思い出す。
杖本体の素材に関して、ガストンがアムレットに聞いた時の彼女の慌てっぷりを思い出し、思わず苦笑する。
俺としてはその事実が確認できてありがたかったが、デリカシーの欠けらも無いとアメリアに怒られていたガストンは少し気の毒だ。
ガストンがあの場で聞いてくれなかったら、俺からのアムレットに聞く羽目になっていたのだから。
そんなことを考えていると、こちらに近づいて来る人影が見えた。
俺は声をかけようと口を開いたところで固まる。
二人のうちの一人、アムレットが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「フィリオ君、おはよう。あの……それで……その……」
もじもじと要点をなさないアムレットの言葉を最後まで待たず、俺は今抱いている最大の疑問を聞く。
「アムレット。なんでサーミリア先生が一緒にいるんだ?」
アムレットと一緒に俺の目の前に立つのは、学園の教員であるサーミリアだった。
相変わらず扇情的な格好を恥ずかしげもなくしているサーミリアは、朱に塗られた唇を上げ、自ら説明を始めた。
「何故って、私もその『素材狩り』というものに同行させてもらうからよ。もちろん。断ったら大変なことになるって、言わなくても優秀なペイル君なら分かるわよね?」
「フィリオ君。ほんとごめん! 昨日、寮に帰るところを先生に見られちゃってたみたい!!」
対象的な二人を見つめ、俺は大きくため息を吐いた。
ガストンたちから必要な素材の説明を受けた俺とアムレットが学園へ戻る飛行中、アムレットは不安そうな顔つきで俺に話しかけてきた。
どうやら素材を俺たち自ら集めるということに、未だに自信が持てないようだ。
「さっきも言っただろ? ゲイザーも他の素材も俺たちなら問題なく狩れるって。別に全て殲滅する必要なんかないんだ。一体狩れればいいんだよ?」
「そんなこと言っても、もしフィリオ君が怪我したら!」
「それこそアムレットの出番じゃないか。回復魔法や補助魔法は自分自身にはかけられないんだから」
自分の魔力を変換して、身体強化や治癒、状態異常回復など、アムレットが得意とする魔法は他人に使えるが、自分自身には使えない。
もちろん俺も使えるが、理論をどんなに弄ろうが、原理的に自分には使えない。
そういう意味ではアムレットは俺の欠点を補ってくれる能力の持ち主といえる。
「それはそうだけど……」
「まぁ、危なくなったら無理をせずに逃げるさ。せっかく手に入れた生を簡単に手放すつもりはないからな」
「え? せっかく手に入れたって。フィリオ君、たまに変な言い回しするよね。あはははは」
ツボに入ったのか、今まで不安げだった表情は吹き飛び、アムレットは大口を開けて盛大に笑う。
相変わらず感情がころころと変わって忙しいやつだな、と思うと同時に、ここまで感情を表に出せるアムレットのことを正直羨ましいと感じた。
「とにかく。予定通り、明日は魔法の練習はなしで、素材集めに行くぞ。この際だから授業は朝からサボりだな」
「え!? サボるって。大丈夫かな?」
「正直、今受けている授業の内容なら、出席するだけ時間の無駄だ。出席日数ってのがなければ全て別のことの時間を使う」
「うーん。フィリオ君ってほんと。謎なんだよなぁ」
俺の顔を覗き込むように見つめてくるアムレットのことを無視して、俺は上空高く飛行を続けていた敷物の高度を下げていく。
学園上空に着いたのだ。
音も立てずに人気のないところに着地させると、アムレットに念を押す。
「それじゃあ、明日の朝。授業開始時刻にここに集合だ。遅れるなよ?」
「うん! こう見えて朝には強いから大丈夫だよ! その代わり、夜には弱いけど……ふわぁ。なんだか眠たくなっちゃった」
アムレットはそう言いながら大きく欠伸をする。
小さな手をいっぱいに広げて口の前に置いているが、逆に指と指の隙間から口の中が丸見えだ。
できるだけ急ぎはしたものの、すでに日は沈んでしまった。
それにこの国の誰もが知る伝説の中の人物と対面したのだから、余計な気も使っていたんだろう。
間違ってもここで寝てしまわないように、アムレットの寮まで彼女を送っていき、それから俺は自宅へと戻るために門へと進んだ。
「坊っちゃま。お帰りなさいませ。お待ちしておりました」
門に着いた途端、侍女のルーナから声をかけられ、俺は驚いた。
今日は遅くなるから、迎えはいらないと伝達を頼んでいたはずだ。
ずっとここで立って俺の帰りを待っていたのだろうか。
「ルーナ。こんな遅くにどうしているんだ? まさか、伝達が届いてなかったのか?」
俺の言葉にルーナは首を横に振る。
「いいえ。確かに本日のお帰りが遅くなることも、迎えがいらないことも承っております」
「じゃあどうして。遅くなるとは伝えたが、いつ帰るか正確な時刻まで言ってなかったはずだ」
「お帰りが遅くなるとのことだったからです。これは私のわがままです。どうかお許しを」
深々と頭を下げるルーナの姿を見て、俺は悟った。
言動が大きく変わったとしても、ルーナから見れば俺は生前のフィリオと何も違わないのだ。
俺が遅くなると伝達を出したのは今回が初めて。
ルーナからしたら、俺の意思なのかそれ以外の者に無理やり言わされてしまっているのかわからなかったのだろう。
かといって学園の中に入り、俺を探すこともできない。
それは両親ですら一緒だ。
貴族としてもっとも立場の低い淡爵では、子供に何かあったかもしれない程度の不確かな情報では、口を挟むことなどできないだろう。
何もできず、ただ俺の無事を案じて俺を待ち続けていたのだ。
俺の許しの言葉を待っているのか、一向に頭を上げないルーナに俺は謝罪の言葉をかける。
「頭を上げてくれ。ルーナ。今回の件は俺が軽率だった。今後気を付けるよ。すまなかった」
ゆっくりと下げていた上半身を戻し、ルーナは優しい笑顔で答える。
「いいえ。坊っちゃま。とんでもないことでございます。私が勝手にやったことでございます」
「そうか。ありがとう」
ルーナに先導され、馬車に乗り込む。
家路へと走り出した馬車の中で、彼女から俺がどこで何をしていたのかなどという質問は一切なかった。
いつかは伝えなければいけないのだと思いながら、俺はそのタイミングをいつにするか、どこまで真実を話すのか、真剣に考え始めた。
◇
次の日、俺はアムレットとの約束通り、予定の時刻に集合場所へ向かった。
少し早く着いたせいもあり、アムレットの姿はまだない。
「素材集めの順番的にまずはゲイザーだな。残りの方はアムレットがいれば苦もなく手に入れられるだろうし」
独り言を呟きながら、俺は昨日のガストンたちとのやり取りを思い出す。
杖本体の素材に関して、ガストンがアムレットに聞いた時の彼女の慌てっぷりを思い出し、思わず苦笑する。
俺としてはその事実が確認できてありがたかったが、デリカシーの欠けらも無いとアメリアに怒られていたガストンは少し気の毒だ。
ガストンがあの場で聞いてくれなかったら、俺からのアムレットに聞く羽目になっていたのだから。
そんなことを考えていると、こちらに近づいて来る人影が見えた。
俺は声をかけようと口を開いたところで固まる。
二人のうちの一人、アムレットが申し訳なさそうに声をかけてきた。
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もじもじと要点をなさないアムレットの言葉を最後まで待たず、俺は今抱いている最大の疑問を聞く。
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思いついたネタを勢いで書いたので投稿しましたヾ(●´∇`●)ノ
『双子の侯爵令嬢の見習い執事は王太子』
評判が真逆な双子の姉妹のどちらかを婚約者に選ばなければいけなくなった王太子が侯爵家に身分を隠して執事として潜入するという異世界恋愛です。
タイトルから作品に飛べます。
よろしければこちらも読んでもらえると嬉しいです。
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