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第二章【天才、魔法の杖を作る】
第十六話【魔法の杖】
しおりを挟む・・・ん?・・・朝?
もう、そんな時間?
何だか、温かいな。
それに、顔に何か当たってる?
何だろう。
もぞもぞ動いてみる。
まぁ、気持ち良いし、いいか。
ああ。でも、そろそろ鍛練を始める時間だから起きないと・・・
幼い頃から早朝鍛練に興味を持ち、お父様や護衛騎士の鍛練に勝手に参加していた私は早起きすること十四年。
体が勝手に目覚め、シャキッと動き出すというのに、どうも今朝は勝手が違った。
「シュガー、熱烈なのは大歓迎だが、そんなにひっついて呼吸されたり、もぞもぞされると流石にくすぐったいぞ」
頭のすぐ上から聞こえてくる、深みがあるのに甘く、吐息が混じった艶のある声に慌てて飛び起きる。
「ちょっ・・・、どうして人のベッドに!」
信じられないことに、アントニオが私のベッドで横になっている。
しかもその胸元ははだけていて、貞操の危機といったものが頭を過ぎる。
オロオロして自分の姿を確認すると、昨夜借りた見慣れない男性用の寝間着をきちんと身につけている事にほっとする。
「人を犯罪者のように・・・。
俺は呼び鈴が鳴ったからこの部屋に来ただけだ。
そしたら、魘されているお前が水を飲みたいような事を言ってるから、手を貸して飲ませた。
寝かせてやったら、今度は俺の腕を離さない。
というより、しがみついてきた。
仕舞いに抱きついてきて、今に至る」
どうだ、解ったか?
ベッドに肩ひじをついて横になったまま、なぜか嬉しそうに笑顔を浮かべている。
はだけた白いシャツの胸元からは逞しい身体が見えて、なぜか直視出来なかった。
落ち着かないので部屋を出て行ってもらうことにする。
「普通に起き上がれるみたいで良かった。
頬はその湿布薬を貼っておけば、腫れや痛みは治るはずだ。
朝食はここに運ぶから待ってろ。
ああそう。
三日はベッドで安静にするんだぞ。
後になってから、調子が悪くなる場合もあるからな。
間違っても鍛練なんてするな」
アントニオはガバッとベッドから起き上がると、私の頭を数回撫でて行った。
・・・湿布薬?
頬に触れてみると、確かに冷たいものが貼られていた。
しかも、痛みも腫れも引いている・・・。
昨夜、てっきり頬を冷やすものと思いきや、医師にはスースーする塗り薬を塗られた。
『アレは無いのか?』
アントニオが医師に聞いていたのは、この湿布薬だったのかな。
寝る前は貼ってなかったはず。
・・・ってことは、貼ってくれた?
呼び鈴を鳴らした記憶もなければ、水を飲みたいなんて言ったことも覚えていない。
でも、結果的に異性と同衾してしまった。
起こってしまったものは、しょうがない。
私はもぞもぞしたのが、実際にはアントニオに擦り寄っていたという恥ずかしい記憶を封印することにした。
「この湿布薬の効き目すごいですね」
朝食を運んできてくれたアントニオは、自分の分も持ってきたようで、分厚いベーコンを口に運んでいる。
私のベーコンは、食べやすいように薄く小さくカットされている。
「この国にはない湿布薬だ。
フレジアって国知ってるか?」
私は頷く。
フレジアは四方を海に囲まれた神秘の国。
フレジアの王族、そして一部の貴族は魔法や錬金術を使うと聞いたことがある。
「この国に来る前はそこで役者をしていた。
まぁ、フレジアでも一流だった俺は色々とツテがあるんだ」
「ヘェ~」
フレジアの魔法薬。
どおりで、あんな効果があったんだ。
「何だ、俺のすごさが解ったか」
アントニオはコーヒーに角砂糖を四つも入れて、それを飲み干す。
「・・・シュガー、そういえばお前、短剣を持っていただろう。
なぜ髪を切ろうとした時、出さなかった?」
「ああ、あれはですね、スパイスさんでしたっけ?
彼がこう、嫌な雰囲気を出してたので」
スパイスさんは私に警戒していた。
多分スパイスさんは、アントニオの護衛的な役割なのかも。
「そうか。
実は、お前が昨夜使った短剣が見つからなかった」
「・・・そうですか」
あの時、図体の大きい男の短剣と同時に飛んで行った。
辺りは暗かったし、見つからなくても仕方ない。
そう思った。
でも、あのライアン様から贈られた短剣が、翌朝騎士によって発見され、血痕のついた短剣が現在捜索願いの出されている私ジュリアナ・アッシュフィールドの私物であることが判り、捜索が拡大しているなんて、私は知る由もなかった。
もう、そんな時間?
何だか、温かいな。
それに、顔に何か当たってる?
何だろう。
もぞもぞ動いてみる。
まぁ、気持ち良いし、いいか。
ああ。でも、そろそろ鍛練を始める時間だから起きないと・・・
幼い頃から早朝鍛練に興味を持ち、お父様や護衛騎士の鍛練に勝手に参加していた私は早起きすること十四年。
体が勝手に目覚め、シャキッと動き出すというのに、どうも今朝は勝手が違った。
「シュガー、熱烈なのは大歓迎だが、そんなにひっついて呼吸されたり、もぞもぞされると流石にくすぐったいぞ」
頭のすぐ上から聞こえてくる、深みがあるのに甘く、吐息が混じった艶のある声に慌てて飛び起きる。
「ちょっ・・・、どうして人のベッドに!」
信じられないことに、アントニオが私のベッドで横になっている。
しかもその胸元ははだけていて、貞操の危機といったものが頭を過ぎる。
オロオロして自分の姿を確認すると、昨夜借りた見慣れない男性用の寝間着をきちんと身につけている事にほっとする。
「人を犯罪者のように・・・。
俺は呼び鈴が鳴ったからこの部屋に来ただけだ。
そしたら、魘されているお前が水を飲みたいような事を言ってるから、手を貸して飲ませた。
寝かせてやったら、今度は俺の腕を離さない。
というより、しがみついてきた。
仕舞いに抱きついてきて、今に至る」
どうだ、解ったか?
ベッドに肩ひじをついて横になったまま、なぜか嬉しそうに笑顔を浮かべている。
はだけた白いシャツの胸元からは逞しい身体が見えて、なぜか直視出来なかった。
落ち着かないので部屋を出て行ってもらうことにする。
「普通に起き上がれるみたいで良かった。
頬はその湿布薬を貼っておけば、腫れや痛みは治るはずだ。
朝食はここに運ぶから待ってろ。
ああそう。
三日はベッドで安静にするんだぞ。
後になってから、調子が悪くなる場合もあるからな。
間違っても鍛練なんてするな」
アントニオはガバッとベッドから起き上がると、私の頭を数回撫でて行った。
・・・湿布薬?
頬に触れてみると、確かに冷たいものが貼られていた。
しかも、痛みも腫れも引いている・・・。
昨夜、てっきり頬を冷やすものと思いきや、医師にはスースーする塗り薬を塗られた。
『アレは無いのか?』
アントニオが医師に聞いていたのは、この湿布薬だったのかな。
寝る前は貼ってなかったはず。
・・・ってことは、貼ってくれた?
呼び鈴を鳴らした記憶もなければ、水を飲みたいなんて言ったことも覚えていない。
でも、結果的に異性と同衾してしまった。
起こってしまったものは、しょうがない。
私はもぞもぞしたのが、実際にはアントニオに擦り寄っていたという恥ずかしい記憶を封印することにした。
「この湿布薬の効き目すごいですね」
朝食を運んできてくれたアントニオは、自分の分も持ってきたようで、分厚いベーコンを口に運んでいる。
私のベーコンは、食べやすいように薄く小さくカットされている。
「この国にはない湿布薬だ。
フレジアって国知ってるか?」
私は頷く。
フレジアは四方を海に囲まれた神秘の国。
フレジアの王族、そして一部の貴族は魔法や錬金術を使うと聞いたことがある。
「この国に来る前はそこで役者をしていた。
まぁ、フレジアでも一流だった俺は色々とツテがあるんだ」
「ヘェ~」
フレジアの魔法薬。
どおりで、あんな効果があったんだ。
「何だ、俺のすごさが解ったか」
アントニオはコーヒーに角砂糖を四つも入れて、それを飲み干す。
「・・・シュガー、そういえばお前、短剣を持っていただろう。
なぜ髪を切ろうとした時、出さなかった?」
「ああ、あれはですね、スパイスさんでしたっけ?
彼がこう、嫌な雰囲気を出してたので」
スパイスさんは私に警戒していた。
多分スパイスさんは、アントニオの護衛的な役割なのかも。
「そうか。
実は、お前が昨夜使った短剣が見つからなかった」
「・・・そうですか」
あの時、図体の大きい男の短剣と同時に飛んで行った。
辺りは暗かったし、見つからなくても仕方ない。
そう思った。
でも、あのライアン様から贈られた短剣が、翌朝騎士によって発見され、血痕のついた短剣が現在捜索願いの出されている私ジュリアナ・アッシュフィールドの私物であることが判り、捜索が拡大しているなんて、私は知る由もなかった。
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思いついたネタを勢いで書いたので投稿しましたヾ(●´∇`●)ノ
『双子の侯爵令嬢の見習い執事は王太子』
評判が真逆な双子の姉妹のどちらかを婚約者に選ばなければいけなくなった王太子が侯爵家に身分を隠して執事として潜入するという異世界恋愛です。
タイトルから作品に飛べます。
よろしければこちらも読んでもらえると嬉しいです。
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