魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する

黄舞

文字の大きさ
上 下
12 / 41
第一章【魔力ゼロの天才、転生する】

第十二話【同類】

しおりを挟む
 再びサーミリアの方へと身体を向けた俺は素直な質問を投げかける。

「なんか用か?」
「ええ。もちろん。ねぇ。どうやったの? 私の魔力量測定に間違いはありえないわ。あなたの魔力量は貴族として平凡。それに今まで特別な噂も聞いたことがない」

 サーミリアは妖艶な笑みを顔に浮かばせながら、俺を見つめる。
 まるで珍しい研究対象を見つけたような、そんな目つきだ。

「でもね? 何か変な感じもするのよねぇ。まるで開けてはいけない神話の箱がその底に沈んでいるような……」
「この世の全ての災厄が封じられている箱のことか?」
「ええ。ねぇ。ペイル君、あなた本当に何者なの?」
「何者も何も、ただのこの学園の一年生さ」

 俺はサーミリアの質問を適当に受け流しながら、言われたことの一つが気になっていた。
 サーミリアも言ったように俺の魔力量は常人よりは多いが、貴族としては平凡で、それは俺自身が調べた結果とも一致している。
 しかし、先ほどの四重複合魔法を使おうとした時に、感じた違和感。
 まるで、俺の身体の中に全貌を見ることすら敵わない何かがあるような気がしたのだ。
 あのままさらに五重、六重と重ねていったとしたら、何かとてつもない問題が起こる直感がして、やめたというのもある。
 それを一度の測定で視えたということは、サーミリアの魔力測定能力は並外れているということだろう。

「もう! はぐらかすのが得意なのね……じゃあ、こっちはきちんと教えてくれるかしら? 何を潜ませていようが、たった今あなたはそれを扱うことができていないはずだわ。それなのに、ねぇどうやったの?」

 その瞬間、俺は直感した。
 この女性サーミリアは、ある意味俺と同類と言っていい。
 彼女は取りつかれているのだ。
 知識欲という魔物に。
 しかし俺は慌てることなく、淡々と言葉を返した。

「どうやったとは? さっき自分で言っていたじゃないか。俺には壁を壊すような魔力量はない。かと言って、俺には俺のために外から壁を壊してくれるような実力の持ち主の知り合いはいない」
「いいのよ。偽らなくても。いくら古くなったとはいえ、たかが入学して半年のガキに壊せるほど学園長の魔法はやわじゃないわ。それにね、魔力痕って知ってる? 魔法を唱えると、その威力に応じた痕跡がしばらく残るのよ。それを視るには特別な力が必要だけれど、私には視えるの。あなたの周りにびっくりするくらいの魔力痕がね」
「魔力痕だと?」

 魔力痕というのは初めて聞く言葉だ。
 俺はサーミリアに隠し通せないという事実よりも、自分の知らない世界がまだある事実に心を躍らせていた。
 いまだに恍惚の表情で俺を見つめているサーミリアに、俺は提案を投げかける。

「その魔力痕というのは、どうやって見るんだ? やり方を俺に教えてくれたら、俺も先生の質問に素直に答えよう」
「ダメよ! ダメ、ダメ‼ そんな安い女じゃないの。あー、もう! いいわ。秘密は自分で暴く方がずーっと素敵ですものね」
「そうか。交渉決裂だな。俺も魔力痕の見方については独自に学ぶとしよう。ただ、魔力痕という新しい知識を与えてくれた礼として、一つヒントをやろう」
「あら、意外と優しいのね? ミステリアスも好きだけど、優しい男も好きよ。でも一番好きなのは強い雄」
「先生の性癖に興味は一切ないが。魔力と魔法は容器に入った水とその容器から取り出した水の関係に似ている。以上だ」
「なるほど……余計わかりにくくなった気もしないでもないけれど、きっとその中に答えがあるのね。うふふふ……」
「あっはっはっは!」

 サーミリアと俺は、互いに見つめ合ったまま高らかと声を出して笑った。
しおりを挟む
思いついたネタを勢いで書いたので投稿しましたヾ(●´∇`●)ノ
双子の侯爵令嬢の見習い執事は王太子
評判が真逆な双子の姉妹のどちらかを婚約者に選ばなければいけなくなった王太子が侯爵家に身分を隠して執事として潜入するという異世界恋愛です。
タイトルから作品に飛べます。
よろしければこちらも読んでもらえると嬉しいです。
感想 28

あなたにおすすめの小説

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹
ファンタジー
 初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。  一人には勇者の証が。  もう片方には証がなかった。  人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。  しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。  それが判明したのは五歳の誕生日。  証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。  これは、俺と仲間の復讐の物語だ――

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...