魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する

黄舞

文字の大きさ
上 下
4 / 41
第一章【魔力ゼロの天才、転生する】

第四話【赤爵の少年】

しおりを挟む
 赤髪の少年はにやけた顔のまま言い放つと、最後は周りの二人の方に大げさに話を振った。
 それに呼応するように周りの二人も次々と言葉を放つ。

「きっと家でも穀潰しを置く気などないと言われて、いられなくなったんですよ。リチャード様」
「そりゃあそうでしょう。ろくな魔法も使えない貴族など、存在価値がありませんからね」

 どうやら俺、もといフィリオに向かって言っているのだとはわかるが、リチャードと呼ばれたリーダー格の少年のことも、言われる内容についてもさっぱり理解できない。
 とりあえず侍女を学園内に帯同できるってことはそれなりの格の高い貴族の家に生まれたのだろう。
 俺はできるだけ穏便に済ませようと、言葉を選んで返事をした。

「やぁ。久しぶり……なのかな? 申し訳ないけど、今までの記憶を全て失ってしまっていてね。正直、君たちのことも何も覚えてないんだ。授業に遅れてしまうから、そこを通してくれないかな?」

 俺がそう言った瞬間、リチャードは顔を真っ赤にして俺に向かって指をさして怒鳴った。

「ふざけるな! このリチャードを忘れてしまっただと!? どこでそんな猿知恵吹き込まれたか知らないが、思い出せないならその身体をもって思い知らせてやる!」

 何故か『忘れた』という言葉がリチャードの逆鱗に触れてしまったようだ。
 俺に指をさしたまま口の中で小さく詠唱をしているのが見える。
 出会い頭に測ってみていたが、リチャードの潜在魔力量はフィリオよりも格段に上。
 しかし俺は慌てることなくリチャードの魔法が打ち出されるのを待っていた。

「火よ!」

 リチャードの指から黄色い小さな火の玉が飛び出し、走るくらいの速さで俺に向かってくる。
 俺は悪い意味で予想を裏切られ、苦笑する。
 聞こえてきた詠唱から、第一原理すらまともに扱えていないことがわかっていたが、まさかここまでひどいとは。
 しかしリチャードが放った魔法は、俺に向けて放たれたのは間違いない。
 どうやらこのリチャードもフィリオを自死へと向かわせた原因の一人だと見て間違いなさそうだ。
 周りでは、すでに人垣ができていて、俺たちの動向を野次馬のように見守っている。
 避ければ後ろの誰かに当たるだろうし、消してしまっては面白くない。
 かといって俺が何かしたとわかれば、それはそれで面倒なことになりそうだ。
 ならば……

「浮遊」

 俺は素早く空中に印を刻むと、飛んでくる火の玉にその印を貼り付ける。
 すると途端に火の玉は加速し上空へと急上昇し始めた。

「破裂」

 俺が次の魔法を唱えた時、上空で火の玉は強い光と音が発生しながら消滅した。
 突然の出来事に魔法を使ったリチャードも周囲の野次馬も驚いて声すら出せずにいるようだ。
 当然だが、俺は一連の魔法を周囲にばれないようにやっていた。
 俺はこれ見よがしに驚きのあまり間抜けな顔をしているリチャードに向かって嫌味を言ってやった。

「リチャード。君のことは。これは君からの復帰祝いかな? ありがたくいただくよ。これからも仲良くしてくれ。それじゃあ」
「な……なぁ……?」

 未だに驚きでロクな言葉を発することができずにいるリチャードたちを横切り、俺は当初の目的である教室へ向かおうとした。
 ところが、厄介事というのは次々からやってくるらしい。
 今の祝砲を聞いたのか、一人の少女がすごい剣幕で俺の方に駆け寄って来たのだ。
 彼女の動きに合わせて前の大きな膨らみが弾む。
 その女性の存在に気づいた野次馬たちは蜘蛛の子を散らすようにこの場から離れていく。
 どうやらそれなりに恐れられている存在らしい。

「なんだ今の爆発は!? 学園内での私的な魔法の使用に制限があることを知らんのか!」

 目の前まで来た長い金髪を持つ少女は、自身の豊かな胸を支えるように腕組みをしながら、俺とリチャードたちの前で仁王立ちをした。
しおりを挟む
思いついたネタを勢いで書いたので投稿しましたヾ(●´∇`●)ノ
双子の侯爵令嬢の見習い執事は王太子
評判が真逆な双子の姉妹のどちらかを婚約者に選ばなければいけなくなった王太子が侯爵家に身分を隠して執事として潜入するという異世界恋愛です。
タイトルから作品に飛べます。
よろしければこちらも読んでもらえると嬉しいです。
感想 28

あなたにおすすめの小説

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹
ファンタジー
 初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。  一人には勇者の証が。  もう片方には証がなかった。  人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。  しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。  それが判明したのは五歳の誕生日。  証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。  これは、俺と仲間の復讐の物語だ――

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら
ファンタジー
 主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。  勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。  しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。  更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。  自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。 これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...