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第4話
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ルーランが夢に出てきてから、私はますます夢を見るのが楽しみになっていた。
メアと同じで、ルーランも夢を見るたびに登場してくれる。
そして、夢で誓いを立てた通り、私に付き添い、一緒に旅をしてくれたのだ。
ルーランは気さくな性格で、共に旅する道中はとても心地の良いものだった。
私はいつの間にか夢でだけ出会うことができる男性、ルーランに恋をしてしまった。
恋など諦めていた私は、夢の中でだけでもと、恋心を募らせ、そしてついにルーランに想いを告げる決心をした。
恋にうとい私でも、ルーランは私に好意を持ってくれている様な気がしたからだ。
目の前ではいつもの様に、優しい目をしたルーランが微笑みを携え、私を見ている。
私は一度大きく呼吸をすると、唾を飲み込み、そして伝えるべき言葉を言うために口を開けた。
ところが、そこで私は目が覚めてしまった。
続きは今日の夜にお預けだと思っていた私は、珍しく城の中で用事ができ、普段歩くことのない通路を案内人に連れられ歩いてた。
すると通路の窓から庭が見えた。
そこでは武装をした男性が大勢で訓練をしている最中だった。
何気なくその集団に目を向けた私は、自分の目を疑った。
もしかしたら、と思わなかったと言ったら嘘になる。
だけど、まさか本当にいるとは思っていなかった。
訓練をする集団の最前方、一人集団に会いたいする様に立った男性は、夢で見た時と同じ様に緋色の髪をしていた。
ただ、夢の私と同じ様に、少し髪の毛が記憶より短かった。
「聖女様。あれは我が国が誇る騎士たちでこございます。あの者たちは一騎当千。聖女様の祈りと騎士たちが居れば、この国はいつまでも安泰でございますよ」
「すいません。あの先頭に立っている緋色の髪をした男性の名は?」
「あのお方はアガモンド卿。若くして騎士長に抜擢された素晴らしいお人ですよ」
「アガモンド卿……下の名前はなんと?」
私がやけに騎士長に興味を示すのを不思議に思ったのか、案内人は少し眉をひそめて、そしてこう答えた。
「下の名前ですか? えーっと……そうそう。ルーラン様ですよ」
「ああ! なんてこと!」
思わず私は叫んでしまった。
その声にさらに訝し気な顔をした案内人は先を促す。
「さぁさぁ、こちらへ。少し急ぎますよ」
その日から私はいつもの夢を見なくなってしまった。
ルーランもメアさえも夢に出てきてくれることはなくなってしまった。
そもそもあれだけ体感を伴った夢すら見なくなったのだ。
そして繰り返される日々に私は追われて、夢の出来事をいつしか忘れてしまいそうになっていた。
メアと同じで、ルーランも夢を見るたびに登場してくれる。
そして、夢で誓いを立てた通り、私に付き添い、一緒に旅をしてくれたのだ。
ルーランは気さくな性格で、共に旅する道中はとても心地の良いものだった。
私はいつの間にか夢でだけ出会うことができる男性、ルーランに恋をしてしまった。
恋など諦めていた私は、夢の中でだけでもと、恋心を募らせ、そしてついにルーランに想いを告げる決心をした。
恋にうとい私でも、ルーランは私に好意を持ってくれている様な気がしたからだ。
目の前ではいつもの様に、優しい目をしたルーランが微笑みを携え、私を見ている。
私は一度大きく呼吸をすると、唾を飲み込み、そして伝えるべき言葉を言うために口を開けた。
ところが、そこで私は目が覚めてしまった。
続きは今日の夜にお預けだと思っていた私は、珍しく城の中で用事ができ、普段歩くことのない通路を案内人に連れられ歩いてた。
すると通路の窓から庭が見えた。
そこでは武装をした男性が大勢で訓練をしている最中だった。
何気なくその集団に目を向けた私は、自分の目を疑った。
もしかしたら、と思わなかったと言ったら嘘になる。
だけど、まさか本当にいるとは思っていなかった。
訓練をする集団の最前方、一人集団に会いたいする様に立った男性は、夢で見た時と同じ様に緋色の髪をしていた。
ただ、夢の私と同じ様に、少し髪の毛が記憶より短かった。
「聖女様。あれは我が国が誇る騎士たちでこございます。あの者たちは一騎当千。聖女様の祈りと騎士たちが居れば、この国はいつまでも安泰でございますよ」
「すいません。あの先頭に立っている緋色の髪をした男性の名は?」
「あのお方はアガモンド卿。若くして騎士長に抜擢された素晴らしいお人ですよ」
「アガモンド卿……下の名前はなんと?」
私がやけに騎士長に興味を示すのを不思議に思ったのか、案内人は少し眉をひそめて、そしてこう答えた。
「下の名前ですか? えーっと……そうそう。ルーラン様ですよ」
「ああ! なんてこと!」
思わず私は叫んでしまった。
その声にさらに訝し気な顔をした案内人は先を促す。
「さぁさぁ、こちらへ。少し急ぎますよ」
その日から私はいつもの夢を見なくなってしまった。
ルーランもメアさえも夢に出てきてくれることはなくなってしまった。
そもそもあれだけ体感を伴った夢すら見なくなったのだ。
そして繰り返される日々に私は追われて、夢の出来事をいつしか忘れてしまいそうになっていた。
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