上 下
42 / 46
第2章

第40話【金をばら撒け】

しおりを挟む
「見つけたぞ! ショーニン!!」

 ポイントを稼ごうと広場に向かった俺に声をかけてきた奴がいた。
 声はどこかで聞いた気もするが、見た目も名前も知らない奴だ。

「ここであったが百年目! 弟の恨み、覚悟しろ!!」
「えーっと……誰だ?」

 弟の恨みってのが分からん。
 そもそも恨まれるようなことなどしてはいない。

「しらばっくれるな!! お前のせいで、弟は垢BANされたんだぞ! ああ! 可哀想な弟よ!! 正義感が強いだけだったのに!!」
「垢BANって……まさかお前……?」

「忘れたとは言わせないぞ! 我ら四兄弟の末弟ゲレゲレの無念、ここで晴らしてやる!!」
「って、文彦じゃねぇのかよ!? 誰だよゲレゲレって!」

 てっきりあの【神官】の事かと思ったら、全然知らない奴だったぞ。
 マジで誰?

「ふざけるな!! 弟はなぁ、チートってやつが許せねぇだけだったんだよ……真面目なやつだったからなぁ。それ何度も何度も殺しやがって! お前が一回負けてやれば、弟は執拗にお前を狙うことなんてしなかったんだ!!」
「あー、思い出したぞ。アレだろ。前に文彦の書いたことを真に受けて何度も攻撃してきた奴。そうかぁ、あいつ垢BANされたかぁ……ざまだな」

 文彦ってのは前に俺をチート野郎とかブログに書いて、関係ないヒミコにまで迷惑かけたクソ野郎だ。
 結局ロキのおかげで見事垢BANしたって話だったが、そいつが流したデマを信じてうるさいくらい攻撃してきたのが、確かゲレゲレって名前だったな。

 てか四兄弟ってすげぇな。こいつの名前はチロル。
 チョコレートみたいな名前だけど、近くにいるプックルとボロンゴっていうのが残りなのかな?

「貴様ァ! 喰らえ! 我ら四兄弟【キラーパンサー】の実力!!」
「うるせぇ!!」

 おあつらえ向きに一直線に並んだから、俺は【銭投げ】を使って黙らせる。
 HPが高いやつが一人いたが、【連帯保証】も使ったから一撃だった。

 こいつら兄弟らしいから、まさに連帯保証人になってもおかしくないしな。
 お、ポイントが入ったぞ。どんどん行くか。

「いたぞー!! ショーニンだ! 囲めー!! あいつがラスボスだぞ!! ひとまず共闘だ!!」
「おう! あいつを倒してから、そっから残った奴のサドンデスだぞ!!」

『おーっと! 話題のショーニン選手! 大勢のプレイヤーに囲まれております! 大ピーンチ!!』

 おいおい……確かにルール上は問題ないけど、あからさまな個人狙いは正直どうなんだ?
 まぁいいけどな。

 俺は片っ端から見える範囲に【銭投げ】を使う。
 さっき使ったばかりの【連帯保証】は使えないから、サクサクは無理だが、確実に落としていこう。

「ぐえぇぇぇ! やっぱり強え!! 【貫通】持ちだぞ! ライン注意!!」
「うわぁああ! 正信ーー! 俺を置いて逝くなー!!」

 アップデートのおかげか、それなりに攻撃を食らうプレイヤーもいた。
 しかしそいつらは、俺の反射で攻撃を返されて返り討ちにあう。

 HPはまだまだ余裕があるが、集まってきたから頃合かな?
 俺はクールタイムが終わった【連帯保証】を使った後に、新しく覚えたスキル【金をばら撒く】を使う。

【金をばら撒く】
その場で回転しながらジルを10連ばら撒き敵に固定ダメージ(ジル×0.01)を与える。使用したジルは失う。(最大使用可能ジル100万ジル)

 これは待望の商人専用範囲攻撃スキル。
 言うなれば【銭投げ】の範囲版だな。

 しかもこれもが付与される。
 こいつはやべぇぞ?

「喰らえ!!」

 スキルを唱えた瞬間、俺は猛スピードで回転する。
 そこから放たれる10本のコインの筋!

 当たったやつは片っ端からダメージを受け、オーバーキルになった分はHPが高かったり、当たらなかったやつにダメージが飛んだりと阿鼻叫喚だ。

『うおおおお!! これがチート野郎と呼ばれたショーニンの実力だァ!! 一気にプレイヤーを殲滅しましたー! まさにチート!!』

 おい……GM、何言ってんだよ。
 しかも今呼び捨てにしたよね?

 まぁ、いいか。
 いいのか?

 ちなみにこんなスキルは連打は出来ない。
 クールタイムは30秒。長くはないが短くもない。

 まだ生き残った奴がいるな。
 大量にダメージを与えたおかげで、【吸収】の効果でHPは満たんだ。

 また地味に倒していってもいいが、これはポイントをできるだけ多く稼ぐイベント。
 時間をかけるのはよした方がいい。

「ということで、【ヘルフレイム】!!」
「ぐぎゃぁあああああ!!」

 出しみ惜しみすることなく、最大火力で行くぜ。
 これでこの辺りのプレイヤーは殲滅できたな。

『容赦ない!! 容赦ありません、ショーニン選手!! お前は魔神じゃない! 悪魔だーー!!』

 ……。
 もうあのGMは無視だな……。

「えーと、ポイントは……お! 一位だ! って、二位はロキのチームかよ!!」
「やっと見つけたぞ!! ショーニン、勝負だ!!」

 と叫んだ矢先に向こうから来てくれたようだ。
 相手は五人、ロキと葵そして他のやつらもパーティメンバー、見たことがある。

 一人いないのは……スルトってやつだな。
 まぁいい、相手にとって不足はない、勝つのは俺だ!
しおりを挟む

処理中です...