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5話 辛さの基準
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僕は走っていた。
なんのために?
わからない。
誰のために?
わからない。
もうめちゃくちゃだ。
気づいた時、僕の目の前には血の海と大勢のロボットがバラバラになっている......。
誰がやったんだ?
僕は後ろを振り返る。
後ろにはもう1人の僕がいる。そして、「僕」は「僕」を指さした。
「お前がやったんだ」
「僕」が言う。
違う..
「いいや。お前だ」
...違う、僕は......
違う..違う..僕は....僕は....
「うぅ..」
頭痛がする。汗で服がびっしょりだ。いつの間にか、夢を見てしまっていた。しかも、とんだ悪夢だ。
昼寝のつもりが、熟睡してしまったみたいだ。体が重い。このまま寝てしまいたいが、夜、眠れなくなってしまうので起きなければ。
僕は重い体を起こすと、すぐそばにトビハがいた。表情が強ばっている。勝手に修理したことを怒っているのか?
「ごめん..勝手に..。その、寝てたから..」
僕は、少し頭を下げた。
トビハからの返事は無い。しかし、何か言いたげだ。
「....」
無言が続いた。気まずい空気が、部屋一面に広がる。そんな空気を変えたのがトビハだった。
「..あ....」
トビハの声だった。か細い、今にも消えてしまいそうな声。
「..ありがとうございました」
よかった。どうやら、感謝してくれているようだった。何故だろう、飛び上がりたいほど嬉しかった。
「いや、これくらい。清宮に頼まれたことだから」
「..」
トビハは再び口を閉ざす。会話が続かないなぁ..
何か、話すきっかけを見つけないと。
「僕..記憶が無いんだ」
僕のいきなりの言葉に、トビハは戸惑いながらもこちらも真剣な表情で見てくる。言葉の続きを待っているようだった。
「しかも、戦争中の記憶がぽっくりね。だから、戦争がどれだけ悲惨なものだったのか、とか正直分からないんだ」
トビハの表情は複雑な感情に満ちていた。
「自分が何者なのかもわからない。何をしていたのかもね。ただ、なぜかエンジニアとしての記憶は消えなかったんだ。だから、僕の今残ってる力で、1人でも多くの人たちを救いたいんだ。もちろん、ロボットもね..」
「..なんで」
トビハの声は震えていた。「なんで」と言っていた。静かな声だが、その時はハッキリと聞こえた。
「やっぱりなんでもないです」
僕の顔を見ると、ぷいっとそっぽを向いた。
「ごめんな」
「なんで謝るんですか..」
「君は誰かのために戦っていたんだろ?僕なんか、何してたのか....きっと腰を抜かして何もできてなかったさ」
「私は、ロボットですから」
「関係ないよ。君は、僕と一緒で人間さ」
「一緒にしないでください」
この時、初めてトビハは笑った。
彼女の笑顔は、柔らかく儚く、今にも消えてしまいそうな小さな笑顔だった。
なんのために?
わからない。
誰のために?
わからない。
もうめちゃくちゃだ。
気づいた時、僕の目の前には血の海と大勢のロボットがバラバラになっている......。
誰がやったんだ?
僕は後ろを振り返る。
後ろにはもう1人の僕がいる。そして、「僕」は「僕」を指さした。
「お前がやったんだ」
「僕」が言う。
違う..
「いいや。お前だ」
...違う、僕は......
違う..違う..僕は....僕は....
「うぅ..」
頭痛がする。汗で服がびっしょりだ。いつの間にか、夢を見てしまっていた。しかも、とんだ悪夢だ。
昼寝のつもりが、熟睡してしまったみたいだ。体が重い。このまま寝てしまいたいが、夜、眠れなくなってしまうので起きなければ。
僕は重い体を起こすと、すぐそばにトビハがいた。表情が強ばっている。勝手に修理したことを怒っているのか?
「ごめん..勝手に..。その、寝てたから..」
僕は、少し頭を下げた。
トビハからの返事は無い。しかし、何か言いたげだ。
「....」
無言が続いた。気まずい空気が、部屋一面に広がる。そんな空気を変えたのがトビハだった。
「..あ....」
トビハの声だった。か細い、今にも消えてしまいそうな声。
「..ありがとうございました」
よかった。どうやら、感謝してくれているようだった。何故だろう、飛び上がりたいほど嬉しかった。
「いや、これくらい。清宮に頼まれたことだから」
「..」
トビハは再び口を閉ざす。会話が続かないなぁ..
何か、話すきっかけを見つけないと。
「僕..記憶が無いんだ」
僕のいきなりの言葉に、トビハは戸惑いながらもこちらも真剣な表情で見てくる。言葉の続きを待っているようだった。
「しかも、戦争中の記憶がぽっくりね。だから、戦争がどれだけ悲惨なものだったのか、とか正直分からないんだ」
トビハの表情は複雑な感情に満ちていた。
「自分が何者なのかもわからない。何をしていたのかもね。ただ、なぜかエンジニアとしての記憶は消えなかったんだ。だから、僕の今残ってる力で、1人でも多くの人たちを救いたいんだ。もちろん、ロボットもね..」
「..なんで」
トビハの声は震えていた。「なんで」と言っていた。静かな声だが、その時はハッキリと聞こえた。
「やっぱりなんでもないです」
僕の顔を見ると、ぷいっとそっぽを向いた。
「ごめんな」
「なんで謝るんですか..」
「君は誰かのために戦っていたんだろ?僕なんか、何してたのか....きっと腰を抜かして何もできてなかったさ」
「私は、ロボットですから」
「関係ないよ。君は、僕と一緒で人間さ」
「一緒にしないでください」
この時、初めてトビハは笑った。
彼女の笑顔は、柔らかく儚く、今にも消えてしまいそうな小さな笑顔だった。
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