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7章 ドワーフ国編
80話 ドワーフ国に到着です
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王都を出発した俺たちは、魔獣使いラギュルが地図に印を付けてくれた、ドワーフがよく訪れるという鉱山に到着した。
「うわあ!凄い場所だな!」
「大きいアリの巣みたいなのです!」
「そうだね!」
京介、リオン、美砂のテンションが爆上がりである。パッと見、遊園地のアトラクションみたいだもんな。
到着した場所は大きな広場のような採掘場で、恐らくトロッコのレールと思われる金属線が至る所にある穴から伸びて来ている。
少し触ってみたが、どのレールも揺れを感じないので、もしかしたら今日は運用されていないのかもしれないな。
沢山あるレールを一本一本よく見てみると、鉱山の中に入っていかず、奥へ伸びていくレールを見つけた。
もしかしてこれを辿っていけば集落に辿り着けるか?
「ひとまずこの辺りに泊ってみて、ドワーフが来なかったらこのレールに沿って進んでみようか」
「そのレールが何かあるのか?」
京介が疑問に思ったのか聞いてくる。
「ほら、このレールだけ鉱山の中に入って行かないで、この広場の向こう側へ続いているだろ?もしかしたら向こうに集落があるかもしれない」
「はぁ、なるほどな。オサムはよくこんなことに気が付くな。移動方法にしろ、クマイホームにしろ、発想が凄いや」
「京介殿、こんなことで驚いていては心臓が持ちませんよ」
「毒されていない方が来られると、失いかけた気持ちと向き合うことができますわね」
おい、失礼だぞ。
エリーズにクマイホームを建ててもらい、今日は広場の空いている所で休むことにした。
薪を焚べ、強くなっていく火を眺めながらひと息付く。
「美砂の体感温度調節魔法『ヒートテック』が暖かいからこのまま山道も問題無さそうだな」
「確かにね、暖かすぎず寒くなく、春みたいな気候に感じるよ」
「なら良かったよ!僕寒いの苦手だから春をイメージして作ったんだよね」
美砂は快適さに全振りしてるよな、やはり一家に一台……。
「オサムだけじゃなくて美砂も凄いんだね、俺も一緒に旅に出れば良かったかなぁ」
「まぁ今一緒に出てる訳だし、この旅で何か掴めるかもしれないじゃん」
「そうだな!それより……オサムは何を読んでるんだ?」
「ふっふっふ、これは漫画だ!」
「漫画!?」
そういえば京介にはサブカルの芽吹きを教えていなかったな。
「これはアドルファス帝国にあるアイゼアという街に住む鼻たれイガグリ少年がだな……」
「鼻たれイガグリ少年って……。名前は?」
「名前?」
「いや、人に興味無さ過ぎるだろ!オサムの好きな漫画を描ける人の名前くらい覚えておこうよ!」
「それもそうだな、返送する手紙にそれも書いておこう」
「その漫画のお礼でも書いてるの?」
「いい点と改善点を教えているから、どちらかといえば編集者みたいな感じだな。今は次々案が生まれてきて手が止まらないらしい、これは才能が開花する瞬間かもしれないな」
「何を目指してんだよ……」
京介が呆れたように聞いてくる。
「やっぱり将来的には鼻たれイガグリ少年の下に才能を集めて、少年漫画雑誌みたいなモノを作れるといいよな」
「地球に帰る方法を探す旅じゃなかったっけ?」
「いやいや、帰る方法が万一見つからなかった時の為に、安住の地と娯楽は育てておかないとな」
「それで、帰る方法は何か進展あった?」
「ああ、どうやら穀倉国アジェロの東にある砂漠国アルバニアって所に、美砂の両親が住んでいたみたいでな、恐らくそこに地球へ帰るための手掛かりがあると思う」
「「「「え!?」」」」
やっぱり美砂も気づいていなかったか。
「待って、待って!本当に帰れるの!?ていうか美砂の両親って何!?」
そういえば京介はまだ何も知らなかったよな。俺は京介に、美砂の両親が七百年前にこの世界に来ていること、数百年かけて美砂のお母さんだけが地球へ帰った可能性が高いことを説明した。
だが、東部夫妻は魔法が使えなかったと言われている、一体どうやって異世界転移の魔法を魔石にセットしたのか……。
「『終の住処は娘と共に』か。確かに転移魔石のことも考えると間違い無さそうだね」
「東部にある美しい砂、東部美砂……ですか」
「美砂殿への愛を感じますね」
美砂はボロボロと大粒の涙を流しているが、リオンが抱きついて慰めてくれているみたいだ。
「砂漠といえば、旅の商人に聞いたんだけど……」
京介がそう切り出す。
「何かいい情報がありそうか?」
「いや、ごめん。そんないいもんじゃないかもしれない」
「いいよ、言ってみて」
「うん、確か国境国コスタって所に砂漠国出身の料理人がやってる宿があって、虹の入江亭……だったかな、砂漠料理と海鮮料理のコラボが絶品なんだってさ」
「虹の入江亭……聞いた事あるな」
「あっ!オサム殿、結局国境国の城に泊まることになって行けなかった所ですよ!予約をとったのを覚えています」
「ああ!そうか!マフィアを潰して城へ連行されたから行けなかった宿か」
「知ってる所だったみたいだね。それでその料理人が変わった喋り方をするみたいでね、旅の商人に真似してみてもらったらどうやら関西弁っぽいんだよね」
なん……だと……?
「ありがとう、これは確定だわ。美砂のお父さんは関西弁で砂漠国アルバニアに終の住処を用意した。関西弁は伝染るからな、メフシィ辺境伯や虹の入江亭の主人が出身の地は数百年かけて関西弁になったんだろ」
「その、関西弁というのは伝染るんですの?」
「ああ、長く聞いていると自然とそうなってしまうらしい。命に別状はないらしいんだが……」
「オサム君!変な噂が広がっちゃうでしょッ!」
話していると美砂も泣きやみ、明るい雰囲気で夜を過ごした。
――翌朝。
どこかから歌が聞こえる。
「「「……ポー!仕事が好き」」」
「「「寒き風抜く山々越えて」」」
「「「地の底めざして、我らは旅立つ」」」
「「「朝か夜か闇の中、黄金に輝く魔の鉱石が」」」
「「「我らの行く末照らしてくれる」」」
「「「へイポー!へイポー!仕事が好き」」」
「ガキ使かよッ!!」
いかんいかん、予想外の歌詞についツッコミを入れてしまった……。
歌いながら歩いてきたのは、髭面の小さいオッサン三人組だ。身長は小学生くらいだろうか、俺の胸よりも少し低い程度で、重そうなツルハシを肩に担いでいる。
まさにイメージ通りのドワーフといった様相だな。
「お前らはなんだ!?」
「「なんだ!?」」
「はじめまして、俺たちをドワーフ王に合わせて貰いたいんだけどいいかな?」
俺は魔獣使いラギュルから借りたナイフを抜き、ドワーフ達に見せる。
「お前ら盗賊か!?」
「「盗賊か!」」
「オサム、初対面でナイフを見せて王様に会わせろってのはヤバいんじゃないか?」
「えー、だってこれを見せたら分かる的な事言ってたじゃん。これって印籠的なモノじゃないの?」
「むん?待て!ソレを見せてみろ!」
「「見せてみろ!」」
俺はアダマンタイトのナイフをドワーフに渡す。
「「「フム」」」
「山のドンゴゴ分かるか?」
「分かるか?」
「これは先代ドワーフ王が打ったものだな?」
「「ほう!」」
「これをどこで手に入れた?」
「「どこだ?」」
「ドワーフ国で見せれば融通してもらえると言われてな、魔獣使いラギュルという魔人族から借り受けた」
「案内しよう!」
「「案内しよう!」」
やったぜ!
俺たちは歩きながら自己紹介を兼ねて話をした。
どうやら三人は、鍛冶に強い山の民ドンゴゴ、装飾に強い泉の民ミラゾゾ、建築に強い森の民サネボボという名前らしい。
それぞれ生まれた地の技術を身につけるが、肌に合わないと感じた場合は移住してそちらの技術を身につけに行くらしい。
ゴゴ、ゾゾ、ボボというのはその地の名前らしく前半二文字に土地の名前を付けるのが習わしなんだそうだ。
三人に連れられてしばらく歩いていくと、大きな鉄柵が見えてきた。
「ドンゴゴじゃないか、さっき出ていったばかりだろう?人間なんて連れて来てどうした」
門衛がドンゴゴに話しかける。
「ドワーフ王へ客だ!」
「「客だ!」」
「客ったってお前ら、知らねぇ奴は連れて行けねぇよ」
「先代のナイフを持っているぞ!」
「「持っているぞ!」」
「何!?それは本当かッ!」
「山の民に誓う!」
「泉の民に誓う!」
「森の民に誓う!」
「分かった、ドワーフ王の下へ連れていこう。俺は国軍のムコドドだ!」
ムコ殿みたいな名前だな。
「「「頼んだぞムコドド!」」」
三人は先程の広場の方へ戻って行ったのだが、ナイフの効力が高過ぎて改めてまじまじと見てしまう。
なんか……いわく付きとかじゃないだろうな。
「そのナイフはアダマンタイトという伝説の素材からなる、奇跡のナイフと呼ばれている!それが悪いやつの手に渡る事はあり得ない、つまりお前らは悪いやつじゃない!」
うお、ここまで酷い三段論法は初めて聞いたぞ。
そうか、ドワーフって馬鹿だったんだなあ。
「やはり!その優しそうな表情がお前の性格を表している!」
「オサム君……」
「オサム殿、ドワーフを哀しませてはなりませんよ?」
流石仲間たちだぜ。俺の表情から真意を読み取ったんだな?
そんなやり取りをしながら、俺たちは勾配が少し急な螺旋状に掘られた坑道を下っていく。
これ、転げ落ちたら勢いがついて危ないんじゃないか?俺自身に怪我はなくても、ドワーフを巻き込んで大怪我させたら笑えないからな、足下には気をつけておこう。
とはいえ国の入口だからだろう、松明みたいな照明が適度に設置されていて、足下まで十分に照らしてくれている。
しかし、横幅はいいけど天井が低くいからか圧迫感があるな。手を伸ばせば届くほどだから高さは二メートルくらいだろう。
坑道を抜けると、そこには大空洞が広がっており、煤か何かで黒ずんだ石造りの家々が、所狭しと秩序なく建ち並んでいる。
「うわぁー!ドワーフの国って感じだね!」
「すげぇ、映画とかにそのまま出てきそうな景色じゃん!」
無事にドワーフ国へ辿り着いたみたいだ。
「うわあ!凄い場所だな!」
「大きいアリの巣みたいなのです!」
「そうだね!」
京介、リオン、美砂のテンションが爆上がりである。パッと見、遊園地のアトラクションみたいだもんな。
到着した場所は大きな広場のような採掘場で、恐らくトロッコのレールと思われる金属線が至る所にある穴から伸びて来ている。
少し触ってみたが、どのレールも揺れを感じないので、もしかしたら今日は運用されていないのかもしれないな。
沢山あるレールを一本一本よく見てみると、鉱山の中に入っていかず、奥へ伸びていくレールを見つけた。
もしかしてこれを辿っていけば集落に辿り着けるか?
「ひとまずこの辺りに泊ってみて、ドワーフが来なかったらこのレールに沿って進んでみようか」
「そのレールが何かあるのか?」
京介が疑問に思ったのか聞いてくる。
「ほら、このレールだけ鉱山の中に入って行かないで、この広場の向こう側へ続いているだろ?もしかしたら向こうに集落があるかもしれない」
「はぁ、なるほどな。オサムはよくこんなことに気が付くな。移動方法にしろ、クマイホームにしろ、発想が凄いや」
「京介殿、こんなことで驚いていては心臓が持ちませんよ」
「毒されていない方が来られると、失いかけた気持ちと向き合うことができますわね」
おい、失礼だぞ。
エリーズにクマイホームを建ててもらい、今日は広場の空いている所で休むことにした。
薪を焚べ、強くなっていく火を眺めながらひと息付く。
「美砂の体感温度調節魔法『ヒートテック』が暖かいからこのまま山道も問題無さそうだな」
「確かにね、暖かすぎず寒くなく、春みたいな気候に感じるよ」
「なら良かったよ!僕寒いの苦手だから春をイメージして作ったんだよね」
美砂は快適さに全振りしてるよな、やはり一家に一台……。
「オサムだけじゃなくて美砂も凄いんだね、俺も一緒に旅に出れば良かったかなぁ」
「まぁ今一緒に出てる訳だし、この旅で何か掴めるかもしれないじゃん」
「そうだな!それより……オサムは何を読んでるんだ?」
「ふっふっふ、これは漫画だ!」
「漫画!?」
そういえば京介にはサブカルの芽吹きを教えていなかったな。
「これはアドルファス帝国にあるアイゼアという街に住む鼻たれイガグリ少年がだな……」
「鼻たれイガグリ少年って……。名前は?」
「名前?」
「いや、人に興味無さ過ぎるだろ!オサムの好きな漫画を描ける人の名前くらい覚えておこうよ!」
「それもそうだな、返送する手紙にそれも書いておこう」
「その漫画のお礼でも書いてるの?」
「いい点と改善点を教えているから、どちらかといえば編集者みたいな感じだな。今は次々案が生まれてきて手が止まらないらしい、これは才能が開花する瞬間かもしれないな」
「何を目指してんだよ……」
京介が呆れたように聞いてくる。
「やっぱり将来的には鼻たれイガグリ少年の下に才能を集めて、少年漫画雑誌みたいなモノを作れるといいよな」
「地球に帰る方法を探す旅じゃなかったっけ?」
「いやいや、帰る方法が万一見つからなかった時の為に、安住の地と娯楽は育てておかないとな」
「それで、帰る方法は何か進展あった?」
「ああ、どうやら穀倉国アジェロの東にある砂漠国アルバニアって所に、美砂の両親が住んでいたみたいでな、恐らくそこに地球へ帰るための手掛かりがあると思う」
「「「「え!?」」」」
やっぱり美砂も気づいていなかったか。
「待って、待って!本当に帰れるの!?ていうか美砂の両親って何!?」
そういえば京介はまだ何も知らなかったよな。俺は京介に、美砂の両親が七百年前にこの世界に来ていること、数百年かけて美砂のお母さんだけが地球へ帰った可能性が高いことを説明した。
だが、東部夫妻は魔法が使えなかったと言われている、一体どうやって異世界転移の魔法を魔石にセットしたのか……。
「『終の住処は娘と共に』か。確かに転移魔石のことも考えると間違い無さそうだね」
「東部にある美しい砂、東部美砂……ですか」
「美砂殿への愛を感じますね」
美砂はボロボロと大粒の涙を流しているが、リオンが抱きついて慰めてくれているみたいだ。
「砂漠といえば、旅の商人に聞いたんだけど……」
京介がそう切り出す。
「何かいい情報がありそうか?」
「いや、ごめん。そんないいもんじゃないかもしれない」
「いいよ、言ってみて」
「うん、確か国境国コスタって所に砂漠国出身の料理人がやってる宿があって、虹の入江亭……だったかな、砂漠料理と海鮮料理のコラボが絶品なんだってさ」
「虹の入江亭……聞いた事あるな」
「あっ!オサム殿、結局国境国の城に泊まることになって行けなかった所ですよ!予約をとったのを覚えています」
「ああ!そうか!マフィアを潰して城へ連行されたから行けなかった宿か」
「知ってる所だったみたいだね。それでその料理人が変わった喋り方をするみたいでね、旅の商人に真似してみてもらったらどうやら関西弁っぽいんだよね」
なん……だと……?
「ありがとう、これは確定だわ。美砂のお父さんは関西弁で砂漠国アルバニアに終の住処を用意した。関西弁は伝染るからな、メフシィ辺境伯や虹の入江亭の主人が出身の地は数百年かけて関西弁になったんだろ」
「その、関西弁というのは伝染るんですの?」
「ああ、長く聞いていると自然とそうなってしまうらしい。命に別状はないらしいんだが……」
「オサム君!変な噂が広がっちゃうでしょッ!」
話していると美砂も泣きやみ、明るい雰囲気で夜を過ごした。
――翌朝。
どこかから歌が聞こえる。
「「「……ポー!仕事が好き」」」
「「「寒き風抜く山々越えて」」」
「「「地の底めざして、我らは旅立つ」」」
「「「朝か夜か闇の中、黄金に輝く魔の鉱石が」」」
「「「我らの行く末照らしてくれる」」」
「「「へイポー!へイポー!仕事が好き」」」
「ガキ使かよッ!!」
いかんいかん、予想外の歌詞についツッコミを入れてしまった……。
歌いながら歩いてきたのは、髭面の小さいオッサン三人組だ。身長は小学生くらいだろうか、俺の胸よりも少し低い程度で、重そうなツルハシを肩に担いでいる。
まさにイメージ通りのドワーフといった様相だな。
「お前らはなんだ!?」
「「なんだ!?」」
「はじめまして、俺たちをドワーフ王に合わせて貰いたいんだけどいいかな?」
俺は魔獣使いラギュルから借りたナイフを抜き、ドワーフ達に見せる。
「お前ら盗賊か!?」
「「盗賊か!」」
「オサム、初対面でナイフを見せて王様に会わせろってのはヤバいんじゃないか?」
「えー、だってこれを見せたら分かる的な事言ってたじゃん。これって印籠的なモノじゃないの?」
「むん?待て!ソレを見せてみろ!」
「「見せてみろ!」」
俺はアダマンタイトのナイフをドワーフに渡す。
「「「フム」」」
「山のドンゴゴ分かるか?」
「分かるか?」
「これは先代ドワーフ王が打ったものだな?」
「「ほう!」」
「これをどこで手に入れた?」
「「どこだ?」」
「ドワーフ国で見せれば融通してもらえると言われてな、魔獣使いラギュルという魔人族から借り受けた」
「案内しよう!」
「「案内しよう!」」
やったぜ!
俺たちは歩きながら自己紹介を兼ねて話をした。
どうやら三人は、鍛冶に強い山の民ドンゴゴ、装飾に強い泉の民ミラゾゾ、建築に強い森の民サネボボという名前らしい。
それぞれ生まれた地の技術を身につけるが、肌に合わないと感じた場合は移住してそちらの技術を身につけに行くらしい。
ゴゴ、ゾゾ、ボボというのはその地の名前らしく前半二文字に土地の名前を付けるのが習わしなんだそうだ。
三人に連れられてしばらく歩いていくと、大きな鉄柵が見えてきた。
「ドンゴゴじゃないか、さっき出ていったばかりだろう?人間なんて連れて来てどうした」
門衛がドンゴゴに話しかける。
「ドワーフ王へ客だ!」
「「客だ!」」
「客ったってお前ら、知らねぇ奴は連れて行けねぇよ」
「先代のナイフを持っているぞ!」
「「持っているぞ!」」
「何!?それは本当かッ!」
「山の民に誓う!」
「泉の民に誓う!」
「森の民に誓う!」
「分かった、ドワーフ王の下へ連れていこう。俺は国軍のムコドドだ!」
ムコ殿みたいな名前だな。
「「「頼んだぞムコドド!」」」
三人は先程の広場の方へ戻って行ったのだが、ナイフの効力が高過ぎて改めてまじまじと見てしまう。
なんか……いわく付きとかじゃないだろうな。
「そのナイフはアダマンタイトという伝説の素材からなる、奇跡のナイフと呼ばれている!それが悪いやつの手に渡る事はあり得ない、つまりお前らは悪いやつじゃない!」
うお、ここまで酷い三段論法は初めて聞いたぞ。
そうか、ドワーフって馬鹿だったんだなあ。
「やはり!その優しそうな表情がお前の性格を表している!」
「オサム君……」
「オサム殿、ドワーフを哀しませてはなりませんよ?」
流石仲間たちだぜ。俺の表情から真意を読み取ったんだな?
そんなやり取りをしながら、俺たちは勾配が少し急な螺旋状に掘られた坑道を下っていく。
これ、転げ落ちたら勢いがついて危ないんじゃないか?俺自身に怪我はなくても、ドワーフを巻き込んで大怪我させたら笑えないからな、足下には気をつけておこう。
とはいえ国の入口だからだろう、松明みたいな照明が適度に設置されていて、足下まで十分に照らしてくれている。
しかし、横幅はいいけど天井が低くいからか圧迫感があるな。手を伸ばせば届くほどだから高さは二メートルくらいだろう。
坑道を抜けると、そこには大空洞が広がっており、煤か何かで黒ずんだ石造りの家々が、所狭しと秩序なく建ち並んでいる。
「うわぁー!ドワーフの国って感じだね!」
「すげぇ、映画とかにそのまま出てきそうな景色じゃん!」
無事にドワーフ国へ辿り着いたみたいだ。
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