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5章 獣人国編
72話 戦争の始まりです
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範囲的に薄めに張っているんだろうが、戦艦美砂にも耐えられるほど丈夫なシールドにヒビが入ったんだ。途轍もない衝撃を受けたはずなんだけど……流石獣王、すげえタフだな。
シールドに叩きつけられた獣王は、足取りは少しもたついているようだが、まだまだ戦えそうだ。
何が起こったか良く分かっていなそうだが、立ち止まっている事に危険を感じたのか、ダメージの残る足つきで迫ってくる。
しかし焦っているのか大振りが多いな。
少し間を空けてしまったが、今度は俺から攻撃を仕掛ける。プロレスをやってんじゃないからな、有利な内に畳みかけるのは戦いの鉄則だろう。
先ほどのように正面からは攻めず、今度はステップを駆使して脇腹付近にミドルキックを入れる。
獣王はまたしても闘技場から大きく吹き飛んでいき、美砂の張ったシールドに激突したのだが、今度は先ほどよりも強くぶつからなかった。
もしかして今の攻撃に反応したのか?これは気配察知も半端じゃないな、まだまだ楽しめそうだ。
「ホッホホークス!俺には二人の動きが殆ど見えねぇがライオンマスクが追い込まれてるのは分かるぜッ!!なんという強さだクマイオサム!コイツは本当に人族なのかッ!?」
「人族の教会からから知らせが届いているカバァ!熊井理というのが黒髪黒目なら知的オーガの二つ名を持つ冒険者らしいカバァ!」
「ホークス!オーガ!?なんと人族かと思いきやオーガの亜種だったのか!?強さは恐らく伝説のSランク魔物かッッ!!」
おいぶっ殺すぞ、人間だわ。
「魔物扱いとかウケる。ウチと一緒じゃん、お揃いでいいじゃん」
お前悪魔扱いされて泣いてたのに、もう気にしてないの?開き直るの早くね?
まあいい、折角本気の戦いで気分も盛り上がってるんだ。
「ハァ……ハァ……。なるほど、正面からの戦いでは分が悪いらしい。この私が弱者のように扱われるとは……」
いや、弱者のように扱ってませんが。
え?楽しかったの俺だけ……?
これが弱いもの虐めになるんなら、本気の戦いってなに?相手よりもちょっとでも強かったら弱いもの虐めになっちゃうじゃないか。
また……全力を出せないのか……?
「オサム……」
「いや、すまない。そんな顔をさせるつもりではなかったんだ。私の最後の攻撃を受けてくれるかね?正面から受けきってくれれば、私は降参しよう」
「なるほど、まだ諦めていない訳だな?ならいいだろう。手加減なんてしてみろ、ぶっ殺してやるからな」
「ホッホホークス!ライオンマスクを圧倒しているクマイオサムが、漢受けを受諾したァァァ!絶対王者のプライドを捨て、苦肉の策で勝ちを掴みにライオンマスク!負けるなライオンマスク!!!漢を見せてくれクマイオサムッ!!!」
「最後の技というならアレが来るカバァ!かつて伝説のSランク魔物ヒュドラを倒したと言われる……大地に真っ赤な血の花が咲いたと言われる伝説の必殺技カバァ!!」
おい、技名がさっきから血塗れだぞ。まあ必ず殺すと書いて必殺だから血は出るんだろうけどよ、物騒だな。
ていうか、ヒュドラって伝承では確か頭が九本生えてる龍だっけ?俺……それを殺した技を正面から受けんの?
やっぱ普通に……。
「オサム、もう無理っしょ」
カウンターも勿論ダメだよね。正面から受けるだけなら、とりあえずトランスは発動したままで身体を魔素でコーティングするとして、イメージは……鎧にしておこうか。
「『魔素粒子鎧』」
「素晴らしい防御力をもつ技だと見受けるが、こちらの技を知らさずに打つ訳にはいくまい。これから打つ技は名を『崩龍蓮華』と言う」
「ほう?」
ていうか技のネーミングセンス良くね?俺もなんでも魔素粒子とか付けるの止めて、カッコイイ技名にしようかな……。
「崩龍蓮華はヒュドラを倒す際に使った技だ。ヒュドラは九つの頭を全て同時に潰す必要があって開発したのだがな、狙いを一か所に絞れば九方向からのほぼ同時攻撃となる」
「おいお前まさか……比〇清十郎か?飛天〇剣流なのか?」
「比古……?」
「いやいい、分かったから打ってこい」
俺と獣王は闘技場の中央に戻り、互いに向き合う。
獣王は目を瞑って一つ深呼吸をする、精神を集中させているんだろう。
「では参る、『崩龍蓮華』」
激突。
俺は防御もせず九撃全てを受けきったのだが、足の踏ん張りは効かず美砂の張ったシールドまで吹き飛ばされる。
だがシールドにヒビが入ることもなく、俺がしっかりと着地したのを確認し、獣王が負けを認めた。
「参った。私の負けだ」
「ホッホホークス!三大屈辱の一つである漢受けを覚悟し、背水の陣で挑んだ漢の中の漢ライオンマスク!!ここに更なる漢への敗北を認める!今大会の勝者はァァァァ……クマイィィィィオサァァァムゥゥゥ!!!」
「「「「ウオォォォォォ!!!」」」」
喧騒はしばらく続き、本戦出場者が名前を貰うなどのイベントが済んだ後、長かった武道大会はようやく閉められた。
「ホークス!漢たちよ、感動をありがとう!!」
大会が終わる頃には夕暮れになっていたため、今晩は休み、翌日に登城することとなった。
――翌日。
俺たちは獣王の執務室に来ている。
「娘を仲間に入れてくれニャー!ウチの娘は攻撃力が高いニャー!」
さっきから黒豹の娘アゲがうるさい。
「オトモアイルーならもういるんで結構ですー。ウチのアイルーも攻撃全振りなのでキャラ被りですー」
黒豹の提案を断り、意外とちゃんと執務をしていそうな執務室を見回していると、大きな壁画がある。獣人国にもこの壁画があるんだな。
獣王の執務室には、エルフの長老宅で見たような守護神ハースートの壁画があった。だが、長老の家では雲みたいな表現だったハースートは黒の使徒みたいな見た目で描かれている。
これがもしかして、黒の使徒によって汚染されたハースートか?
それに、壁画の隣にあるこの肖像画。
「ここにもルウとニケの肖像画が飾ってあるんだな」
俺が東の森の爺さんから聞いたルウとニケの名前を出すと、獣王は目が飛び出そうなほど大きく見開き、耳を塞ぎたくなるほど大きな声を出した。
「やはり二人を知っているのかッ!?」
「ああ……実際に知っているのはルウの方なんだが、東の森の爺さんから……もしかして?」
「ああ。手紙に書いてあった通り、生きて……いてくれたのか。この二人はな、我の妻と娘なんだ……」
獣王は俺の両肩を掴み、ボロボロと泣き出してしまった。
「あの日は大雨でな、妻と娘が実家から馬車で移動中、黒の使徒に襲われたんだ。その知らせをここで聞いて急いで駆け付けたんだが、付近には複数の黒い使徒がいるだけでな、森の中は大雨で匂いも足跡も流れちまってたんだ」
「なるほどな。そのまま森を彷徨い、命がけでルウを助けて人間の国まで辿りついたのか。大した……女性だな」
「ああ、何かの末裔だとかいう話しで結婚したのだが、そんなものは関係ない。アイツほどいい雌はこの世におらんぞ」
ルウは王族だったんだなぁ。じゃあこの国に帰ってきたら姫様なのか?あの凶悪面で?
「それで、オサム殿はルウとどんな関係なんだ?」
獣王が何を気にしてか聞いてくるのだが、なんだこの圧力は?
関係……。関係?そういえばなんだろうな、喧嘩友達は違うか。一応師匠みたいな感じなのかな?納得いかんけど。
「武の師匠みたいなもんだな」
「ルウがオサム殿を育てたのか!?」
「まあ戦い方も分からない一番最初に手ほどきを受けたという点では間違っていない。何度も殺されかけたから、アレが手ほどきと言っていいものか議論の余地は残るけどな」
「ルウはどうだった?その……肖像画のニケと同じように……美人に育っただろう?」
「あー、まあ確かに喋らなけばそっくりなんだが、性格的には獣王との血のつながりを感じるな。口元なんかは笑った獣王にそっくりで凶悪だ」
「ウサギ獣人だぞ?」
獣王がキョトンとしながら確認してくるので、念押ししてやる。
「間違いなくウサギ獣人だな、でも肉食だ」
「オサム殿、積もる話しもあるかと思いますが……」
ああ、そうだった。
朝食をとりながら、今日何を確認するかを整理したんだったな。
「獣王、まず聞きたいんだけど、人間の国と手を組んで魔人族と戦うのは反対だって言ってたよな?共通の敵ではないとかって、その理由を教えてくれるか?」
「ああ、それには黒の使徒も絡んでくるのだが、黒の使徒に物理攻撃が効かないのは知っているか?」
「やっぱり物理攻撃が無効なのか」
「であるからな、獣人族とは頗る相性が悪い。そして、この壁画にもある通り、黒の使徒こそが世界共通の敵であり倒さなければならない存在なのだ。万一魔人族が滅んだら、世界は終わるぞ?」
「確かに、黒の使徒はこの世界を破壊する存在だという記述がチラホラ見つかっているな」
「我が知っていることとしては、黒の使徒が古からいる何かであり、徐々に自然を破壊しているということだ。森へ行ったなら分かると思うが、黒の使徒は自然に限らず全ての生き物を腐らせているだろう?」
なるほど、そういうことか。
もしかして黒の使徒によって世界を滅ぼすために、魔力を扱える者を消そうとしている?アフロディーテは降魔薬によって人間を、パンチローザは生贄によって魔人族を滅ぼそうとしていると考えると辻褄が合いそうだな。
魔法を使える奴がいなくなれば、黒の使徒を倒せる奴がいなくなるってことだし……うん、なんか繋がった。この説はそう離れたものじゃない、そんな気がする。
「なるほど分かった。それから……」
俺が次の質問をしようとすると、何度か世話になった象獣人の門衛が緊急事態を伝えに来た。
「大変です!教会から緊急の知らせが入りました!」
「なんだ?報告しろ」
「魔人族と人族の戦争が始まったようです!場所はルロワ王国、魔人族が数万に及ぶ軍で攻めてきたようです!」
なん……だと……?
シールドに叩きつけられた獣王は、足取りは少しもたついているようだが、まだまだ戦えそうだ。
何が起こったか良く分かっていなそうだが、立ち止まっている事に危険を感じたのか、ダメージの残る足つきで迫ってくる。
しかし焦っているのか大振りが多いな。
少し間を空けてしまったが、今度は俺から攻撃を仕掛ける。プロレスをやってんじゃないからな、有利な内に畳みかけるのは戦いの鉄則だろう。
先ほどのように正面からは攻めず、今度はステップを駆使して脇腹付近にミドルキックを入れる。
獣王はまたしても闘技場から大きく吹き飛んでいき、美砂の張ったシールドに激突したのだが、今度は先ほどよりも強くぶつからなかった。
もしかして今の攻撃に反応したのか?これは気配察知も半端じゃないな、まだまだ楽しめそうだ。
「ホッホホークス!俺には二人の動きが殆ど見えねぇがライオンマスクが追い込まれてるのは分かるぜッ!!なんという強さだクマイオサム!コイツは本当に人族なのかッ!?」
「人族の教会からから知らせが届いているカバァ!熊井理というのが黒髪黒目なら知的オーガの二つ名を持つ冒険者らしいカバァ!」
「ホークス!オーガ!?なんと人族かと思いきやオーガの亜種だったのか!?強さは恐らく伝説のSランク魔物かッッ!!」
おいぶっ殺すぞ、人間だわ。
「魔物扱いとかウケる。ウチと一緒じゃん、お揃いでいいじゃん」
お前悪魔扱いされて泣いてたのに、もう気にしてないの?開き直るの早くね?
まあいい、折角本気の戦いで気分も盛り上がってるんだ。
「ハァ……ハァ……。なるほど、正面からの戦いでは分が悪いらしい。この私が弱者のように扱われるとは……」
いや、弱者のように扱ってませんが。
え?楽しかったの俺だけ……?
これが弱いもの虐めになるんなら、本気の戦いってなに?相手よりもちょっとでも強かったら弱いもの虐めになっちゃうじゃないか。
また……全力を出せないのか……?
「オサム……」
「いや、すまない。そんな顔をさせるつもりではなかったんだ。私の最後の攻撃を受けてくれるかね?正面から受けきってくれれば、私は降参しよう」
「なるほど、まだ諦めていない訳だな?ならいいだろう。手加減なんてしてみろ、ぶっ殺してやるからな」
「ホッホホークス!ライオンマスクを圧倒しているクマイオサムが、漢受けを受諾したァァァ!絶対王者のプライドを捨て、苦肉の策で勝ちを掴みにライオンマスク!負けるなライオンマスク!!!漢を見せてくれクマイオサムッ!!!」
「最後の技というならアレが来るカバァ!かつて伝説のSランク魔物ヒュドラを倒したと言われる……大地に真っ赤な血の花が咲いたと言われる伝説の必殺技カバァ!!」
おい、技名がさっきから血塗れだぞ。まあ必ず殺すと書いて必殺だから血は出るんだろうけどよ、物騒だな。
ていうか、ヒュドラって伝承では確か頭が九本生えてる龍だっけ?俺……それを殺した技を正面から受けんの?
やっぱ普通に……。
「オサム、もう無理っしょ」
カウンターも勿論ダメだよね。正面から受けるだけなら、とりあえずトランスは発動したままで身体を魔素でコーティングするとして、イメージは……鎧にしておこうか。
「『魔素粒子鎧』」
「素晴らしい防御力をもつ技だと見受けるが、こちらの技を知らさずに打つ訳にはいくまい。これから打つ技は名を『崩龍蓮華』と言う」
「ほう?」
ていうか技のネーミングセンス良くね?俺もなんでも魔素粒子とか付けるの止めて、カッコイイ技名にしようかな……。
「崩龍蓮華はヒュドラを倒す際に使った技だ。ヒュドラは九つの頭を全て同時に潰す必要があって開発したのだがな、狙いを一か所に絞れば九方向からのほぼ同時攻撃となる」
「おいお前まさか……比〇清十郎か?飛天〇剣流なのか?」
「比古……?」
「いやいい、分かったから打ってこい」
俺と獣王は闘技場の中央に戻り、互いに向き合う。
獣王は目を瞑って一つ深呼吸をする、精神を集中させているんだろう。
「では参る、『崩龍蓮華』」
激突。
俺は防御もせず九撃全てを受けきったのだが、足の踏ん張りは効かず美砂の張ったシールドまで吹き飛ばされる。
だがシールドにヒビが入ることもなく、俺がしっかりと着地したのを確認し、獣王が負けを認めた。
「参った。私の負けだ」
「ホッホホークス!三大屈辱の一つである漢受けを覚悟し、背水の陣で挑んだ漢の中の漢ライオンマスク!!ここに更なる漢への敗北を認める!今大会の勝者はァァァァ……クマイィィィィオサァァァムゥゥゥ!!!」
「「「「ウオォォォォォ!!!」」」」
喧騒はしばらく続き、本戦出場者が名前を貰うなどのイベントが済んだ後、長かった武道大会はようやく閉められた。
「ホークス!漢たちよ、感動をありがとう!!」
大会が終わる頃には夕暮れになっていたため、今晩は休み、翌日に登城することとなった。
――翌日。
俺たちは獣王の執務室に来ている。
「娘を仲間に入れてくれニャー!ウチの娘は攻撃力が高いニャー!」
さっきから黒豹の娘アゲがうるさい。
「オトモアイルーならもういるんで結構ですー。ウチのアイルーも攻撃全振りなのでキャラ被りですー」
黒豹の提案を断り、意外とちゃんと執務をしていそうな執務室を見回していると、大きな壁画がある。獣人国にもこの壁画があるんだな。
獣王の執務室には、エルフの長老宅で見たような守護神ハースートの壁画があった。だが、長老の家では雲みたいな表現だったハースートは黒の使徒みたいな見た目で描かれている。
これがもしかして、黒の使徒によって汚染されたハースートか?
それに、壁画の隣にあるこの肖像画。
「ここにもルウとニケの肖像画が飾ってあるんだな」
俺が東の森の爺さんから聞いたルウとニケの名前を出すと、獣王は目が飛び出そうなほど大きく見開き、耳を塞ぎたくなるほど大きな声を出した。
「やはり二人を知っているのかッ!?」
「ああ……実際に知っているのはルウの方なんだが、東の森の爺さんから……もしかして?」
「ああ。手紙に書いてあった通り、生きて……いてくれたのか。この二人はな、我の妻と娘なんだ……」
獣王は俺の両肩を掴み、ボロボロと泣き出してしまった。
「あの日は大雨でな、妻と娘が実家から馬車で移動中、黒の使徒に襲われたんだ。その知らせをここで聞いて急いで駆け付けたんだが、付近には複数の黒い使徒がいるだけでな、森の中は大雨で匂いも足跡も流れちまってたんだ」
「なるほどな。そのまま森を彷徨い、命がけでルウを助けて人間の国まで辿りついたのか。大した……女性だな」
「ああ、何かの末裔だとかいう話しで結婚したのだが、そんなものは関係ない。アイツほどいい雌はこの世におらんぞ」
ルウは王族だったんだなぁ。じゃあこの国に帰ってきたら姫様なのか?あの凶悪面で?
「それで、オサム殿はルウとどんな関係なんだ?」
獣王が何を気にしてか聞いてくるのだが、なんだこの圧力は?
関係……。関係?そういえばなんだろうな、喧嘩友達は違うか。一応師匠みたいな感じなのかな?納得いかんけど。
「武の師匠みたいなもんだな」
「ルウがオサム殿を育てたのか!?」
「まあ戦い方も分からない一番最初に手ほどきを受けたという点では間違っていない。何度も殺されかけたから、アレが手ほどきと言っていいものか議論の余地は残るけどな」
「ルウはどうだった?その……肖像画のニケと同じように……美人に育っただろう?」
「あー、まあ確かに喋らなけばそっくりなんだが、性格的には獣王との血のつながりを感じるな。口元なんかは笑った獣王にそっくりで凶悪だ」
「ウサギ獣人だぞ?」
獣王がキョトンとしながら確認してくるので、念押ししてやる。
「間違いなくウサギ獣人だな、でも肉食だ」
「オサム殿、積もる話しもあるかと思いますが……」
ああ、そうだった。
朝食をとりながら、今日何を確認するかを整理したんだったな。
「獣王、まず聞きたいんだけど、人間の国と手を組んで魔人族と戦うのは反対だって言ってたよな?共通の敵ではないとかって、その理由を教えてくれるか?」
「ああ、それには黒の使徒も絡んでくるのだが、黒の使徒に物理攻撃が効かないのは知っているか?」
「やっぱり物理攻撃が無効なのか」
「であるからな、獣人族とは頗る相性が悪い。そして、この壁画にもある通り、黒の使徒こそが世界共通の敵であり倒さなければならない存在なのだ。万一魔人族が滅んだら、世界は終わるぞ?」
「確かに、黒の使徒はこの世界を破壊する存在だという記述がチラホラ見つかっているな」
「我が知っていることとしては、黒の使徒が古からいる何かであり、徐々に自然を破壊しているということだ。森へ行ったなら分かると思うが、黒の使徒は自然に限らず全ての生き物を腐らせているだろう?」
なるほど、そういうことか。
もしかして黒の使徒によって世界を滅ぼすために、魔力を扱える者を消そうとしている?アフロディーテは降魔薬によって人間を、パンチローザは生贄によって魔人族を滅ぼそうとしていると考えると辻褄が合いそうだな。
魔法を使える奴がいなくなれば、黒の使徒を倒せる奴がいなくなるってことだし……うん、なんか繋がった。この説はそう離れたものじゃない、そんな気がする。
「なるほど分かった。それから……」
俺が次の質問をしようとすると、何度か世話になった象獣人の門衛が緊急事態を伝えに来た。
「大変です!教会から緊急の知らせが入りました!」
「なんだ?報告しろ」
「魔人族と人族の戦争が始まったようです!場所はルロワ王国、魔人族が数万に及ぶ軍で攻めてきたようです!」
なん……だと……?
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