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4章 迷いの森編
56話 黒ギャル精霊の名前はロアです
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黒ギャルから、自分が悪魔だとカミングアウトを受けた訳だけど……、一つ気になる。
「お前精霊じゃないの?」
「え!?ウチのこと精霊に見えんの?」
「え、逆に精霊との違いが分かんない。黒ギャルってこと?美砂は分かる?」
「えー、精霊はドレス着てた……かな?」
あー服ね。確かにニーハイブーツ履いてるし、つけ爪もしてるから恰好も立派なギャルだよな。
「ふぇ……ふぇぇえええん……」
え~めっちゃ泣き出しちゃったよ。なんかこの子泣いてばっかりだな、何?悪魔ってそうなの?あれか、小悪魔的な?
何が原因で泣き出したのか分からないが、今度は全身から鳴き声を迸らせるような泣き方で、美砂もオロオロしている。
しばらく気が済むまで泣かせてあげて、ようやく泣き止んできたので話しを聞いてあげることにした。
「ぐす……」
「それで、何が悲しかったんだ?」
「ウチ、悪魔だから……」
「悪魔なのが何かあるのか?というか結局、精霊との違いはなんなの?」
「ウチ、生贄になった魔人族が捨てられた場所で生まれたんだ。何百年もかけて溜まった、汚れた魔素から生まれたんだって。だから精霊じゃなくて悪魔なんだって皆から……」
「皆って、それ誰に言われたの?」
「精霊たちから。それに、エルフ達からも攻撃を受けて抵抗したら、本に封印されたんだ。何百年も、寂しかったんだ……」
あれ、懲らしめようと思ってたのに、背景が思ってたより胸糞悪いぞ?
「えっと……とりあえず精霊の楽園とエルフの里を滅ぼしたらいいのかな?その後なら心置き無くコイツを懲らしめられる?」
「なんですの?その超理論……」
「オサム君、無理に懲らしめなくても」
「いや、お前らはエドモンの傷の状態を見てないから……。コイツ本当に死ぬ寸前まで追い込んでたんだぞ?しかも俺たちを人質にして、エルフの家族を操ってだ!胸糞背景は関係ないだろ」
「でも、それを言うって事はオサム君もこの子の背景を聞いて、懲らしめる気にならなくなったんでしょ?」
「ん?まぁ……、なんだろ。そういう感情が無いわけじゃない気もする」
「オサム様のこと……分かってきた気がしますわ」
「オサム君は友達少なかったから……」
「え、どういうこと?」
エリーズの言葉を聞いて、美砂も同意するように苦笑している。なんか俺より俺の事分かってるのやめない?友達少ないけど……解せないよ?
「でも、大事にされてるのは分かるよ。それに、エドモンさんは多分怒らないから、その代わりに怒ってくれてるんじゃないかな」
むぅ……。何か発言するだけ不利になりそうな気がする。
「そうですわね。この子をどうするかは、エドモンに決定権があると思いますわ。オサム様はどう思います?」
「そこまで言われて否定するほど子供じゃありませんよー」
「じゃあエドモンの回復を待ちましょうか」
エリーズが話をまとめてくれた。
「分かった。じゃあその前に、お前!この霧戻せんだろ?」
「え?この霧はウチじゃないし」
「なんだって?」
霧がコイツじゃないとすると誰が……、世界樹か!?
「この霧は世界樹から出てるし、ウチには消せないよ」
確かに、村の外から森ごと全てを壊そうとしたら霧が引いた。コイツは結界に阻まれて外に出られなかったから、結界が壊れるのは都合が良かったはずだ。
じゃあ世界樹は何のために霧を……、エルフをコイツから守るため?
「お前、エルフのこと殺そうとか考えてた?」
「そんなこと考える訳ないし!」
いや、よく考えればコイツのいた場所は、まるで宝物でも隠すかのように霧が濃かった。それってつまり、エルフからコイツを守るため?
あれ、今何か一瞬全てが繋がったような気がする。なんだっけか。
確かアレス教国の禁書庫で美砂と話した時だから……。『なんだか、色んな種族を守る守護神のようなものみたい。どこかの種族を贔屓するんじゃなくて、全ての種族を絶滅から守ってくれてるみたい』と言っていたときだ。
そうか、種の保存だ。
ハースートに作られた世界樹の役割はハースートと同じで種の保存なんだ。
やっぱり、エルフからコイツを守るために霧で守っていたということか。
であれば……。
俺はエルフと敵対してもコイツを守りきることに決めた。
すると、伸ばした自分の手の先すら見えなかった濃霧が段々散っていき、木々が見え、離れた所にあるエルフの家も見えるようになってきた。
なるほどね、俺が全力で守ればエルフが敵対しても守り切れるということかな?
しばらく霧が消えていくのを見ていると、霧が全て消える頃、ちょうどエドモンも目を覚ましてくれた。
「おや……?」
「「「エドモン!」」」
驚いたような顔を見せたエドモンだったが、俺たちを顔を見ると安心したように微笑んだ。
「無事で何よりです」
「コッチのセリフだよ……。ありがとうエドモン」
「オサム君から聞いたよ、守ってくれてありがとうございます!」
「貴方の騎士道を尊敬しますわ、それと私も感謝を」
「それで、起きて早速悪いんだが、エドモンに決めて欲しいことがあるんだよ」
「私に、ですか?」
俺は感情などを除外し、黒ギャル精霊について分かったことを説明した。
「なるほど。それでこの子の処罰を、ですか……」
真剣な表情で黒ギャル精霊を見つめている、エドモンはどういう感情なんだろうな。
「私は言われていた通り、この子が精霊とは違う存在だと、悪魔なんだと思ってしまいましたが、オサム殿や美砂殿は違うのですね?」
「ああ、ただの黒ギャル精霊だな」
「うん、僕も普通に個性の範囲だと思う」
「例えばですが、オサム殿の精霊としてついてもらうことも出来るのでしょうか?」
エドモンは、今度は黒ギャル精霊に質問する。
「うぇ!?で、出来るけど?」
「ではそうしましょう。これからオサム殿の力になってくれれば、私はそれで構いませんよ」
エドモン、人間が出来過ぎだろう……。
「そ、それで……、お、お前はどう思ってるわけ?」
「エドモンが許したんだ、俺からは特に何もないよ」
黒ギャル精霊が恐る恐る質問してきたため、簡潔に返答した。もともと俺は折檻する気満々だったからな、エドモンが許しても俺が許さないとでも思っていたのだろう。
ん?あれ、返事を間違ったか?なんかだいぶ悲しそうにしているが……。
「まさか……。お前、折檻して欲しかったのか?」
「違うよッ!ばかぁ!」
「オサム様、それはあんまりですわ」
「オサム君……。この子は許して欲しいんじゃなくて、オサム君について行っても嫌じゃないか聞いてるんだよ?」
なん……だと……?
元々精霊でちびっ子属性が付いているにも関わらず、黒ギャルなんていうマイナーな属性をつけて俺の油断を誘っておき、とどめはツンデレ属性ですと!?
うむうむ、悪くない。ファンシーな感じ、悪くないぞ。
「いい……ならいんだ!」
黒ギャル精霊はこんがり焼けた頬と耳を赤く染め、そっぽを向いた。
「まあ、もう伝わってると思うけど一応言っておくわ。お前放っておいたら独りなんだろ?俺たちが地球に帰る時まではついてきなよ。その後の事はその時考えりゃいいだろ」
「地球って所だってついてくし」
「じゃあ、アレだな。いつまでも黒ギャル精霊なんて呼び名じゃダメだろう、お前って名前とかないのか?」
「ウチ、元々そんな呼ばれ方した事ないし。黒ギャルでもいい」
「ダメだよ、そんなの絶対ダメ!オサム君そんな適当に付けたらダメだからね!」
「まあ流石に俺も本名が黒ギャルってのはどうかと思うよ?」
信用なさすぎませんか?ちょっと悲しいんですけど……。
「んー、じゃあ『ロア』って名前はどうだ?」
「オサム君それって、まさかギャル雑誌の名前から……?」
「ギャル雑誌?違うよ、昔観光でハイチ共和国に行ったことあるんだけど、そこの国教では精霊が認められていて、その名前が確か『ロア』だったんだよね。だから『ロア』ってのは俺たちの世界だと精霊って意味だな」
俺の説明を聞き、ロアは目を輝かせた。
「ロアでいい。ロアがいい!ロア、ロア、ウチの名前!!」
「うん、じゃあロア!これからよろしくな」
「よろしく!オサム」
新たに精霊ロアが仲間に加わり、霧の件が解決したことを長老へ報告することにした。
村の借家がある方へ帰ると、霧が無くなったことに気が付いたのか、遠目に見ても物凄い数のエルフ達が続々と家から出てきている。
そういえばエルフの里だったな。集落規模とはいえ、広場のような場所にこれだけの人が集まっているとなると、住人がほとんど全員出てきているんじゃないだろうか。
広場の集まりに近づいていくと声が聞こえてくる。
「悪魔はどうなったんだ」
「精霊様の導きで人間が来たらしい。その人間達が始末してくれたのでは?」
「我々エルフに出来ないことを何故人間ができるんだ」
「霧が晴れている内に、悪魔の討伐に向かった方がいいんじゃないか?」
おうおう、勝手なことばっかり言ってるね。
「おい……人間達が帰ってきたぞ」
「あれって、悪魔を連れてないか?」
「まさか、操られてるんじゃ……」
「静まれい!」
どよめきや喧噪で溢れていた広場一帯が、男性の一声で静寂に包まれた。
人込みの中から長老ヴェトスが現れ、ロアをちらりと見る。さきほどの声の主は長老だったのか、張りのある声も出せるんだな。
「熊井殿、どうやら無事に帰られたようじゃが……。どういうことか聞かせて貰えるかの?」
「ええ、問題ありませんよ。このまま報告しましょう、こちらも言いたいことがありますし」
俺は今朝霧の中を出発してからの事を順番に説明する。特にロアが悪魔ではなく精霊であることを強調し、くだらない迫害じみた言動をすぐに止めさせるよう言い含めた。
「なるほど、それは申し訳なかったのじゃ」
「ウチはもう気にしてないからいい」
エルフの長老がロアへ頭を下げ、それをロアが許したのでこの件はおしまいだ。
「それにしても、これで熊井殿は更にお強くなるという事ですな」
なんで?どういうこと?
「お前精霊じゃないの?」
「え!?ウチのこと精霊に見えんの?」
「え、逆に精霊との違いが分かんない。黒ギャルってこと?美砂は分かる?」
「えー、精霊はドレス着てた……かな?」
あー服ね。確かにニーハイブーツ履いてるし、つけ爪もしてるから恰好も立派なギャルだよな。
「ふぇ……ふぇぇえええん……」
え~めっちゃ泣き出しちゃったよ。なんかこの子泣いてばっかりだな、何?悪魔ってそうなの?あれか、小悪魔的な?
何が原因で泣き出したのか分からないが、今度は全身から鳴き声を迸らせるような泣き方で、美砂もオロオロしている。
しばらく気が済むまで泣かせてあげて、ようやく泣き止んできたので話しを聞いてあげることにした。
「ぐす……」
「それで、何が悲しかったんだ?」
「ウチ、悪魔だから……」
「悪魔なのが何かあるのか?というか結局、精霊との違いはなんなの?」
「ウチ、生贄になった魔人族が捨てられた場所で生まれたんだ。何百年もかけて溜まった、汚れた魔素から生まれたんだって。だから精霊じゃなくて悪魔なんだって皆から……」
「皆って、それ誰に言われたの?」
「精霊たちから。それに、エルフ達からも攻撃を受けて抵抗したら、本に封印されたんだ。何百年も、寂しかったんだ……」
あれ、懲らしめようと思ってたのに、背景が思ってたより胸糞悪いぞ?
「えっと……とりあえず精霊の楽園とエルフの里を滅ぼしたらいいのかな?その後なら心置き無くコイツを懲らしめられる?」
「なんですの?その超理論……」
「オサム君、無理に懲らしめなくても」
「いや、お前らはエドモンの傷の状態を見てないから……。コイツ本当に死ぬ寸前まで追い込んでたんだぞ?しかも俺たちを人質にして、エルフの家族を操ってだ!胸糞背景は関係ないだろ」
「でも、それを言うって事はオサム君もこの子の背景を聞いて、懲らしめる気にならなくなったんでしょ?」
「ん?まぁ……、なんだろ。そういう感情が無いわけじゃない気もする」
「オサム様のこと……分かってきた気がしますわ」
「オサム君は友達少なかったから……」
「え、どういうこと?」
エリーズの言葉を聞いて、美砂も同意するように苦笑している。なんか俺より俺の事分かってるのやめない?友達少ないけど……解せないよ?
「でも、大事にされてるのは分かるよ。それに、エドモンさんは多分怒らないから、その代わりに怒ってくれてるんじゃないかな」
むぅ……。何か発言するだけ不利になりそうな気がする。
「そうですわね。この子をどうするかは、エドモンに決定権があると思いますわ。オサム様はどう思います?」
「そこまで言われて否定するほど子供じゃありませんよー」
「じゃあエドモンの回復を待ちましょうか」
エリーズが話をまとめてくれた。
「分かった。じゃあその前に、お前!この霧戻せんだろ?」
「え?この霧はウチじゃないし」
「なんだって?」
霧がコイツじゃないとすると誰が……、世界樹か!?
「この霧は世界樹から出てるし、ウチには消せないよ」
確かに、村の外から森ごと全てを壊そうとしたら霧が引いた。コイツは結界に阻まれて外に出られなかったから、結界が壊れるのは都合が良かったはずだ。
じゃあ世界樹は何のために霧を……、エルフをコイツから守るため?
「お前、エルフのこと殺そうとか考えてた?」
「そんなこと考える訳ないし!」
いや、よく考えればコイツのいた場所は、まるで宝物でも隠すかのように霧が濃かった。それってつまり、エルフからコイツを守るため?
あれ、今何か一瞬全てが繋がったような気がする。なんだっけか。
確かアレス教国の禁書庫で美砂と話した時だから……。『なんだか、色んな種族を守る守護神のようなものみたい。どこかの種族を贔屓するんじゃなくて、全ての種族を絶滅から守ってくれてるみたい』と言っていたときだ。
そうか、種の保存だ。
ハースートに作られた世界樹の役割はハースートと同じで種の保存なんだ。
やっぱり、エルフからコイツを守るために霧で守っていたということか。
であれば……。
俺はエルフと敵対してもコイツを守りきることに決めた。
すると、伸ばした自分の手の先すら見えなかった濃霧が段々散っていき、木々が見え、離れた所にあるエルフの家も見えるようになってきた。
なるほどね、俺が全力で守ればエルフが敵対しても守り切れるということかな?
しばらく霧が消えていくのを見ていると、霧が全て消える頃、ちょうどエドモンも目を覚ましてくれた。
「おや……?」
「「「エドモン!」」」
驚いたような顔を見せたエドモンだったが、俺たちを顔を見ると安心したように微笑んだ。
「無事で何よりです」
「コッチのセリフだよ……。ありがとうエドモン」
「オサム君から聞いたよ、守ってくれてありがとうございます!」
「貴方の騎士道を尊敬しますわ、それと私も感謝を」
「それで、起きて早速悪いんだが、エドモンに決めて欲しいことがあるんだよ」
「私に、ですか?」
俺は感情などを除外し、黒ギャル精霊について分かったことを説明した。
「なるほど。それでこの子の処罰を、ですか……」
真剣な表情で黒ギャル精霊を見つめている、エドモンはどういう感情なんだろうな。
「私は言われていた通り、この子が精霊とは違う存在だと、悪魔なんだと思ってしまいましたが、オサム殿や美砂殿は違うのですね?」
「ああ、ただの黒ギャル精霊だな」
「うん、僕も普通に個性の範囲だと思う」
「例えばですが、オサム殿の精霊としてついてもらうことも出来るのでしょうか?」
エドモンは、今度は黒ギャル精霊に質問する。
「うぇ!?で、出来るけど?」
「ではそうしましょう。これからオサム殿の力になってくれれば、私はそれで構いませんよ」
エドモン、人間が出来過ぎだろう……。
「そ、それで……、お、お前はどう思ってるわけ?」
「エドモンが許したんだ、俺からは特に何もないよ」
黒ギャル精霊が恐る恐る質問してきたため、簡潔に返答した。もともと俺は折檻する気満々だったからな、エドモンが許しても俺が許さないとでも思っていたのだろう。
ん?あれ、返事を間違ったか?なんかだいぶ悲しそうにしているが……。
「まさか……。お前、折檻して欲しかったのか?」
「違うよッ!ばかぁ!」
「オサム様、それはあんまりですわ」
「オサム君……。この子は許して欲しいんじゃなくて、オサム君について行っても嫌じゃないか聞いてるんだよ?」
なん……だと……?
元々精霊でちびっ子属性が付いているにも関わらず、黒ギャルなんていうマイナーな属性をつけて俺の油断を誘っておき、とどめはツンデレ属性ですと!?
うむうむ、悪くない。ファンシーな感じ、悪くないぞ。
「いい……ならいんだ!」
黒ギャル精霊はこんがり焼けた頬と耳を赤く染め、そっぽを向いた。
「まあ、もう伝わってると思うけど一応言っておくわ。お前放っておいたら独りなんだろ?俺たちが地球に帰る時まではついてきなよ。その後の事はその時考えりゃいいだろ」
「地球って所だってついてくし」
「じゃあ、アレだな。いつまでも黒ギャル精霊なんて呼び名じゃダメだろう、お前って名前とかないのか?」
「ウチ、元々そんな呼ばれ方した事ないし。黒ギャルでもいい」
「ダメだよ、そんなの絶対ダメ!オサム君そんな適当に付けたらダメだからね!」
「まあ流石に俺も本名が黒ギャルってのはどうかと思うよ?」
信用なさすぎませんか?ちょっと悲しいんですけど……。
「んー、じゃあ『ロア』って名前はどうだ?」
「オサム君それって、まさかギャル雑誌の名前から……?」
「ギャル雑誌?違うよ、昔観光でハイチ共和国に行ったことあるんだけど、そこの国教では精霊が認められていて、その名前が確か『ロア』だったんだよね。だから『ロア』ってのは俺たちの世界だと精霊って意味だな」
俺の説明を聞き、ロアは目を輝かせた。
「ロアでいい。ロアがいい!ロア、ロア、ウチの名前!!」
「うん、じゃあロア!これからよろしくな」
「よろしく!オサム」
新たに精霊ロアが仲間に加わり、霧の件が解決したことを長老へ報告することにした。
村の借家がある方へ帰ると、霧が無くなったことに気が付いたのか、遠目に見ても物凄い数のエルフ達が続々と家から出てきている。
そういえばエルフの里だったな。集落規模とはいえ、広場のような場所にこれだけの人が集まっているとなると、住人がほとんど全員出てきているんじゃないだろうか。
広場の集まりに近づいていくと声が聞こえてくる。
「悪魔はどうなったんだ」
「精霊様の導きで人間が来たらしい。その人間達が始末してくれたのでは?」
「我々エルフに出来ないことを何故人間ができるんだ」
「霧が晴れている内に、悪魔の討伐に向かった方がいいんじゃないか?」
おうおう、勝手なことばっかり言ってるね。
「おい……人間達が帰ってきたぞ」
「あれって、悪魔を連れてないか?」
「まさか、操られてるんじゃ……」
「静まれい!」
どよめきや喧噪で溢れていた広場一帯が、男性の一声で静寂に包まれた。
人込みの中から長老ヴェトスが現れ、ロアをちらりと見る。さきほどの声の主は長老だったのか、張りのある声も出せるんだな。
「熊井殿、どうやら無事に帰られたようじゃが……。どういうことか聞かせて貰えるかの?」
「ええ、問題ありませんよ。このまま報告しましょう、こちらも言いたいことがありますし」
俺は今朝霧の中を出発してからの事を順番に説明する。特にロアが悪魔ではなく精霊であることを強調し、くだらない迫害じみた言動をすぐに止めさせるよう言い含めた。
「なるほど、それは申し訳なかったのじゃ」
「ウチはもう気にしてないからいい」
エルフの長老がロアへ頭を下げ、それをロアが許したのでこの件はおしまいだ。
「それにしても、これで熊井殿は更にお強くなるという事ですな」
なんで?どういうこと?
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