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4章 迷いの森編
49話 新事実がザックザク、です
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禁書庫は地下にあるようだ。
今までいた場所は室内とはいえ天井が高く、空間をかなり広く感じていたので、目の前にある地下へと向かう階段はかなり閉塞感がある。
階段を降りていくと、一目で重厚であることが分かる重苦しい雰囲気の扉が俺たちを出迎える。
扉を開け中へ入ると、本の博物館のような光景が広がっていた。
いや『味のメリーゴーランドやー』みたいな話しじゃないぞ?
実際に本が、本一冊分置ける大きさのテーブルの上に置かれていて、鍛冶屋で日本刀を飾っている時にも見た透明なケースで覆われているんだ。
禁書庫は俺が予想していたような本棚が沢山ある図書館のような形ではなく、一冊一冊丁寧に保管されている場所だったみたいだな。
「ご自由に見てもらって結構ですが、本の持ち出しは禁止です。それからここで見聞きしたことは、軽はずみに口にしないようお願いします」
「分かりました」
俺たちはそれぞれ気になる本を手に取り内容を見る。しかし、美砂とエドモンは全く興味がないようだ。リオンに関しては、教皇が座っている椅子の横で寝ている……まあつまらないよな。
「オサム君、調べたいこと教えてくれれば僕も手伝うよ」
「私も手伝います」
「ありがとう。じゃあ主神ハスートや邪神ボールドが出てくるものと、ザックームや黒の使徒が出てくるものを調べてくれ」
俺は……過去の勇者と魔王の話しでも探そうかな。
これか……。
ふむ。今からちょうど三百三十三年前に召喚された勇者の名前は……キョウカ・ココノエだったのか。これは、完全に京介の親戚とかじゃないのか?
あれ?初っ端から予想外過ぎて、え!?マジで言ってんの!?
魔王の名前は無い……が、『勇者は何故か魔法を使えなかったが、ドワーフにオリハルコンの刀を打たせ、刀があることで魔法が使えるようになった』ですか。あれこれ、俺と同じな気がするぞ?
「オサム君、主神ハースートの話しならあったけど、ハスートはないね」
では、本当の名前はハースートということか。そういえばさっき教皇もハースートって言っていたか?
「ハースートはどうだった?」
「なんだか、色んな種族を守る守護神のようなものみたい。どこかの種族を贔屓するんじゃなくて、全ての種族を絶滅から守ってくれてるみたい」
「種の保存、だろうか」
「うん、そんな感じの印象を受けるね」
「それでボールドの件は何かあったか?」
「あまり……。千年前に突如現れたボールドと、ハースートが生み出した女神や魔神と共に戦ったとしか分からないね」
突然現れた、か。
すると、ハースートの眷属である女神や魔神は、少なくとも千年前時点に限っていえば悪しき存在では無さそうだよな。
まあ神は善悪なんていう二元的な評価を下せる存在では無いんだろうが……。
「こちらも黒の使徒とザックームについての記述が見つかりましたが、この本はちょっと興味深いですね」
「どんな内容なんだ?」
「邪神はハースートであり、主神がボールドであるという記述。それに、地球という世界から来た思念エネルギーが黒の使徒を生み出したと。それから、勇者と魔王は本来味方で、この世界を守るために遣わされた存在だと」
「その本だけ、随分と今の伝承とは違う内容だな」
「その本には諸説あり、魔王が人々を惑わす為に書いたとも言われます」
俺たちの話しを聞いていた教皇が口を挟んでくる。なるほどな、しかしそうすると気になる……。
「そんな危険なものを、なぜ保管してまで後世に繋げているのでしょう?」
「分かりません。私も若い時に同じ疑問を持ったのですが、嘘か誠か、どうやら世界を救った勇者様の願いだそうなのです」
なぜ勇者がこの本を……。
背表紙を見ると、そこには『後輩である地球人へ。八重桜隼人』という著者の名前が書かれている。
おいおい、まさか先代魔王も日本人とか言うんじゃないだろうな……。
本の詳しい内容は、黒の使徒はこの世界を破壊する存在であり、魔力をもって倒すとザックームになること。
自分は魔王としてこの世界に来たが、本来は勇者と協力して、女神や魔神と崇められる悪神共を倒す使命を持っていたことが綴られている。
コイツもしかして隠里ジパングの始祖……か?剣聖は、『我が流派は世界を守ることを本懐とする』と言っていたよな、話しは繋がりそうだな。
それと、今から七百年ほど前には、女神や魔神と戦うために人々を扇動し、人間世界から除外されてしまった日本人夫婦がいたことも書かれていた。
史実では、この魔王は勇者に倒されているんだよな……。この本が事実だとすると、なぜ勇者であるキョウカ・ココノエは魔王を倒すことにしたんだ?
似た境遇の俺が勇者だとして、俺には使命など与えられていないことも気にかかる。
触手魔人が世界を破壊しようとしていたことから、黒の使徒の件については間違いない事実なのだろう。
七百年の日本人の痕跡、それから先代魔王の痕跡を追えば真実が見えてくるだろうか。それに、何故かとても重要なことのような気がする。
これから新たな旅の目的を考えていると、エリーズがぼーっと何かを見ているので、気になって聞いてみる。
「エリーズは何を見ているんだ?」
「おそらく世界地図、ですわ。ここまで精巧で他種族の領域まで描かれているものは初めて見ましたの」
へぇ、縮図が合っているのか分かんないし、どうやってここまでの地図を作ったのか知らないけど、本当ならかなり大きな大陸だな。
ルロワ王国からアレス教国までの距離でザックリ計算すると、横二万キロで縦一万キロくらいあるっぽい。
そうだ、ヘパイストス遺跡の位置が五芒星だとして、残りの遺跡の場所も計算してみるか。
ここと、ここ……それに、中心点はアレス教国なんだな。何かを封印……?邪神?
「その指を差した場所はなんですの?」
「ああ、多分、未発見のヘパイストス遺跡がある場所だよ」
「一つはルロワ王国の王弟領、もう一つは迷いの森……ですわね」
「迷いの森?」
「ええ。別名、精霊の森とも呼ばれていますわ。この分厚い森が、獣人国と争いにならない理由の一つとして挙げられますの」
「へええ。精霊か……」
精霊を見つけたら虫カゴとかにとっ捕まえて、なんか出来ないかな?
「オサム様……。精霊はおとぎ話ですから、その存在は確認されていませんわ」
「まだ何も言ってないけど……」
「でも、お顔に書いてありましたわ」
俺、ポーカーとか得意だったんだけどな。
まぁそんなことより、迷いの森を抜けた先に獣人国があるのか。リオンの母親の件も片付けないといけないからな、次の目的地は獣人国だと色々都合が良さそうだ。
「教皇はヘパイストス遺跡の番号は誰が付けたものか知っていますか?」
「いえ、いつしかそう呼ばれるようになっていたようですね」
ふーん……。
他に……、人体の仕組みについて書かれたものは無さそうだな……。よし、決めた。
「禁書庫に連れてきてくれてありがとうございます。満足しました」
「では、戻りましょうか」
俺たちは教皇と最初に会った場所まで戻り、その場で解散した。
「それで、これからどうするの?」
美砂が質問してくる。
「まずは迷いの森へ行こう。予想が合っていればヘパイストス第二遺跡があるはずだ」
「迷いの森はアドルファス帝国を経由する必要がありますね。ここからですとルロワ王国へ帰るより、帝国へ直接向かった方が早そうですわね」
そうなんだよな。
でも、計算上だけど五芒星ならヘパイストス第五遺跡は王国領にあるはずだ。それに、先代魔王の件もある……。
「そうだな、直接帝国方面に向かうか。王国にある遺跡は王国の人間で探してもらおうか」
「そういえば、王城にはヴィーナスの格好した魔法少女がいたもんね。第五遺跡はやっぱり王国にあるってことだね」
「ルロワ王に手紙だけ出しておけばいいかな?京介にも手紙でキョウカ・ココノエの事を聞いてみよう」
「我が国の王を顎で使うようで気が引けてしまいますわね……」
「七百年前の日本人、それから先代魔王だと予想される八重桜隼人の足跡も追いたいからね。俺たちにはやることが一杯なのだよ」
「国王様だって暇ではありませんのよ?」
「それに迷いの森へ向かう途中の帝国で、剣聖ストークスを捕まえられれば隠里の場所も聞きたいな」
「オサム様、こちらの都合は良く分かりましたが、皇帝だって暇では無いでしょうし『隠里』なんですわよ?」
「僕も、隠里って言うくらいだから隠してるんだと思うよ?」
「まあダメなら迷いの森へそのまま向えばいいし、ダメ元で聞いてみればいいさ」
「じゃあ帝国に向かって、隠里ジパングか迷いの森が目的地だね!」
「そうだな、数日ゆっくりして旅の準備を整えようか」
――数日後。
準備を整えた俺たちは、ここから魔物馬車で五日程の距離にあるアドルファス帝国へ向かった。
「出発なのです!」
リオンは移動中が一番楽しそうだな。
今日はよく冷え込んでいて、俺なら絶対外に出たくないので毛布にくるまっているのだが、リオンはとても元気に走り回っている。
何もしないのは暇なので、俺は禁書庫で見た世界地図を覚えている範囲で描き起こす。
しかし、禁書庫にあった地図には公爵領も王弟領も無かった。恐らく随分古いものだと予想されるため、今までの旅で分かっていることはどんどん加筆していく。
うむ、揺れる馬車の中で描いたにしては、いい感じの出来ではないだろうか。
「物凄く精巧ですわね、これだけで王都に屋敷が買えるだけの価値があると思いますわ」
「うわー、オサム君って絵も上手いんだね」
「色相と色調まで必要とする絵画は一定の才能が必要だけど、線で形をデッサンするだけなら簡単なんだぞ?」
「僕、木とか植物すら上手く書けないよ……」
「仕方ない、立派なオタクになるためには最低限のデッサンも嗜む必要がある、教えてしんぜよう」
「別に立派なオタクになりたいとは思ってないんだけど……」
こうして、馬車旅での時間潰し方法が一つ追加された。
今までいた場所は室内とはいえ天井が高く、空間をかなり広く感じていたので、目の前にある地下へと向かう階段はかなり閉塞感がある。
階段を降りていくと、一目で重厚であることが分かる重苦しい雰囲気の扉が俺たちを出迎える。
扉を開け中へ入ると、本の博物館のような光景が広がっていた。
いや『味のメリーゴーランドやー』みたいな話しじゃないぞ?
実際に本が、本一冊分置ける大きさのテーブルの上に置かれていて、鍛冶屋で日本刀を飾っている時にも見た透明なケースで覆われているんだ。
禁書庫は俺が予想していたような本棚が沢山ある図書館のような形ではなく、一冊一冊丁寧に保管されている場所だったみたいだな。
「ご自由に見てもらって結構ですが、本の持ち出しは禁止です。それからここで見聞きしたことは、軽はずみに口にしないようお願いします」
「分かりました」
俺たちはそれぞれ気になる本を手に取り内容を見る。しかし、美砂とエドモンは全く興味がないようだ。リオンに関しては、教皇が座っている椅子の横で寝ている……まあつまらないよな。
「オサム君、調べたいこと教えてくれれば僕も手伝うよ」
「私も手伝います」
「ありがとう。じゃあ主神ハスートや邪神ボールドが出てくるものと、ザックームや黒の使徒が出てくるものを調べてくれ」
俺は……過去の勇者と魔王の話しでも探そうかな。
これか……。
ふむ。今からちょうど三百三十三年前に召喚された勇者の名前は……キョウカ・ココノエだったのか。これは、完全に京介の親戚とかじゃないのか?
あれ?初っ端から予想外過ぎて、え!?マジで言ってんの!?
魔王の名前は無い……が、『勇者は何故か魔法を使えなかったが、ドワーフにオリハルコンの刀を打たせ、刀があることで魔法が使えるようになった』ですか。あれこれ、俺と同じな気がするぞ?
「オサム君、主神ハースートの話しならあったけど、ハスートはないね」
では、本当の名前はハースートということか。そういえばさっき教皇もハースートって言っていたか?
「ハースートはどうだった?」
「なんだか、色んな種族を守る守護神のようなものみたい。どこかの種族を贔屓するんじゃなくて、全ての種族を絶滅から守ってくれてるみたい」
「種の保存、だろうか」
「うん、そんな感じの印象を受けるね」
「それでボールドの件は何かあったか?」
「あまり……。千年前に突如現れたボールドと、ハースートが生み出した女神や魔神と共に戦ったとしか分からないね」
突然現れた、か。
すると、ハースートの眷属である女神や魔神は、少なくとも千年前時点に限っていえば悪しき存在では無さそうだよな。
まあ神は善悪なんていう二元的な評価を下せる存在では無いんだろうが……。
「こちらも黒の使徒とザックームについての記述が見つかりましたが、この本はちょっと興味深いですね」
「どんな内容なんだ?」
「邪神はハースートであり、主神がボールドであるという記述。それに、地球という世界から来た思念エネルギーが黒の使徒を生み出したと。それから、勇者と魔王は本来味方で、この世界を守るために遣わされた存在だと」
「その本だけ、随分と今の伝承とは違う内容だな」
「その本には諸説あり、魔王が人々を惑わす為に書いたとも言われます」
俺たちの話しを聞いていた教皇が口を挟んでくる。なるほどな、しかしそうすると気になる……。
「そんな危険なものを、なぜ保管してまで後世に繋げているのでしょう?」
「分かりません。私も若い時に同じ疑問を持ったのですが、嘘か誠か、どうやら世界を救った勇者様の願いだそうなのです」
なぜ勇者がこの本を……。
背表紙を見ると、そこには『後輩である地球人へ。八重桜隼人』という著者の名前が書かれている。
おいおい、まさか先代魔王も日本人とか言うんじゃないだろうな……。
本の詳しい内容は、黒の使徒はこの世界を破壊する存在であり、魔力をもって倒すとザックームになること。
自分は魔王としてこの世界に来たが、本来は勇者と協力して、女神や魔神と崇められる悪神共を倒す使命を持っていたことが綴られている。
コイツもしかして隠里ジパングの始祖……か?剣聖は、『我が流派は世界を守ることを本懐とする』と言っていたよな、話しは繋がりそうだな。
それと、今から七百年ほど前には、女神や魔神と戦うために人々を扇動し、人間世界から除外されてしまった日本人夫婦がいたことも書かれていた。
史実では、この魔王は勇者に倒されているんだよな……。この本が事実だとすると、なぜ勇者であるキョウカ・ココノエは魔王を倒すことにしたんだ?
似た境遇の俺が勇者だとして、俺には使命など与えられていないことも気にかかる。
触手魔人が世界を破壊しようとしていたことから、黒の使徒の件については間違いない事実なのだろう。
七百年の日本人の痕跡、それから先代魔王の痕跡を追えば真実が見えてくるだろうか。それに、何故かとても重要なことのような気がする。
これから新たな旅の目的を考えていると、エリーズがぼーっと何かを見ているので、気になって聞いてみる。
「エリーズは何を見ているんだ?」
「おそらく世界地図、ですわ。ここまで精巧で他種族の領域まで描かれているものは初めて見ましたの」
へぇ、縮図が合っているのか分かんないし、どうやってここまでの地図を作ったのか知らないけど、本当ならかなり大きな大陸だな。
ルロワ王国からアレス教国までの距離でザックリ計算すると、横二万キロで縦一万キロくらいあるっぽい。
そうだ、ヘパイストス遺跡の位置が五芒星だとして、残りの遺跡の場所も計算してみるか。
ここと、ここ……それに、中心点はアレス教国なんだな。何かを封印……?邪神?
「その指を差した場所はなんですの?」
「ああ、多分、未発見のヘパイストス遺跡がある場所だよ」
「一つはルロワ王国の王弟領、もう一つは迷いの森……ですわね」
「迷いの森?」
「ええ。別名、精霊の森とも呼ばれていますわ。この分厚い森が、獣人国と争いにならない理由の一つとして挙げられますの」
「へええ。精霊か……」
精霊を見つけたら虫カゴとかにとっ捕まえて、なんか出来ないかな?
「オサム様……。精霊はおとぎ話ですから、その存在は確認されていませんわ」
「まだ何も言ってないけど……」
「でも、お顔に書いてありましたわ」
俺、ポーカーとか得意だったんだけどな。
まぁそんなことより、迷いの森を抜けた先に獣人国があるのか。リオンの母親の件も片付けないといけないからな、次の目的地は獣人国だと色々都合が良さそうだ。
「教皇はヘパイストス遺跡の番号は誰が付けたものか知っていますか?」
「いえ、いつしかそう呼ばれるようになっていたようですね」
ふーん……。
他に……、人体の仕組みについて書かれたものは無さそうだな……。よし、決めた。
「禁書庫に連れてきてくれてありがとうございます。満足しました」
「では、戻りましょうか」
俺たちは教皇と最初に会った場所まで戻り、その場で解散した。
「それで、これからどうするの?」
美砂が質問してくる。
「まずは迷いの森へ行こう。予想が合っていればヘパイストス第二遺跡があるはずだ」
「迷いの森はアドルファス帝国を経由する必要がありますね。ここからですとルロワ王国へ帰るより、帝国へ直接向かった方が早そうですわね」
そうなんだよな。
でも、計算上だけど五芒星ならヘパイストス第五遺跡は王国領にあるはずだ。それに、先代魔王の件もある……。
「そうだな、直接帝国方面に向かうか。王国にある遺跡は王国の人間で探してもらおうか」
「そういえば、王城にはヴィーナスの格好した魔法少女がいたもんね。第五遺跡はやっぱり王国にあるってことだね」
「ルロワ王に手紙だけ出しておけばいいかな?京介にも手紙でキョウカ・ココノエの事を聞いてみよう」
「我が国の王を顎で使うようで気が引けてしまいますわね……」
「七百年前の日本人、それから先代魔王だと予想される八重桜隼人の足跡も追いたいからね。俺たちにはやることが一杯なのだよ」
「国王様だって暇ではありませんのよ?」
「それに迷いの森へ向かう途中の帝国で、剣聖ストークスを捕まえられれば隠里の場所も聞きたいな」
「オサム様、こちらの都合は良く分かりましたが、皇帝だって暇では無いでしょうし『隠里』なんですわよ?」
「僕も、隠里って言うくらいだから隠してるんだと思うよ?」
「まあダメなら迷いの森へそのまま向えばいいし、ダメ元で聞いてみればいいさ」
「じゃあ帝国に向かって、隠里ジパングか迷いの森が目的地だね!」
「そうだな、数日ゆっくりして旅の準備を整えようか」
――数日後。
準備を整えた俺たちは、ここから魔物馬車で五日程の距離にあるアドルファス帝国へ向かった。
「出発なのです!」
リオンは移動中が一番楽しそうだな。
今日はよく冷え込んでいて、俺なら絶対外に出たくないので毛布にくるまっているのだが、リオンはとても元気に走り回っている。
何もしないのは暇なので、俺は禁書庫で見た世界地図を覚えている範囲で描き起こす。
しかし、禁書庫にあった地図には公爵領も王弟領も無かった。恐らく随分古いものだと予想されるため、今までの旅で分かっていることはどんどん加筆していく。
うむ、揺れる馬車の中で描いたにしては、いい感じの出来ではないだろうか。
「物凄く精巧ですわね、これだけで王都に屋敷が買えるだけの価値があると思いますわ」
「うわー、オサム君って絵も上手いんだね」
「色相と色調まで必要とする絵画は一定の才能が必要だけど、線で形をデッサンするだけなら簡単なんだぞ?」
「僕、木とか植物すら上手く書けないよ……」
「仕方ない、立派なオタクになるためには最低限のデッサンも嗜む必要がある、教えてしんぜよう」
「別に立派なオタクになりたいとは思ってないんだけど……」
こうして、馬車旅での時間潰し方法が一つ追加された。
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