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2章 ナーヴェ連合国編
19話 リオンの登場なのです
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俺をパパと呼ぶ猫耳少女を見て、美砂が反応する。
「オ、オサム君、いつの間にこんな大きい子が!?」
「待って、違うよ!?美砂その目やめてくれない!?違う違う違う、分かるでしょ?」
冷たい視線を浴びせてきた美砂は、しゃがんで少女の話しを聞く。
「オサム君が、パパに似てるのかな?君のお名前はなんていうの?」
「フーッ!リオンに話しかけないで欲しいのです!」
優しく話しかけたのに、しっぽを逆立てた少女から威嚇されてしまった美砂は涙目である。
肩を竦め、今度は俺が聞くことにする。
「お名前はリオンって言うのかい?何歳なのかな?」
「リオンは五歳なのです!」
どうやら、俺には普通に答えてくれるらしい。
「そうか、五歳か。リオンはどうして俺のことをパパって呼んだの?」
「え?パパは、パパだからなのです」
「でもリオンと俺は今日初めて会ったよね?ママは?」
「うん、会えて良かったのです!ママはお外に出られないから、リオンがオサムパパを待っているように言われていたのです!」
ん?なんで名前を知ってるんだ?あ、さっき美砂が俺の名前を言ったからかな?
「ママは、オサムパパって言ってたのかな?」
「はい!ママと、ここまで連れてきてくれたお兄ちゃんが、黒髪黒目のオサムパパって言ってたのです。見たらすぐに分かったのです!」
美砂と、今度はエドモンまで冷たい視線を向けてくる。
違うからね?どう考えても年齢的にもおかしいでしょうよ。でも、ママとそのお兄ちゃんが俺を知ってるのは間違いなさそうだな。
「ひとまずママか、お兄ちゃんに会わせて貰ってもいいかな?」
「ママは遠い遠い所にいるのです。お兄ちゃんはシツジなのでママの所に行くみたいだけど、リオンはママの場所が分からないのです」
「遠い所って、この街にはいるんだよね?」
「ママは人間の街にはいないのです。お兄ちゃんはリオンに広場で大道芸をするようにだけ言って、帰っちゃったのです」
迷子かよ。いやこれ迷子なのか?
この場で解決しなそうであるため、美砂とエドモンに意見を聞く。
「どうしようか?」
「どうって、黒髪黒目のオサム君はこの世界に一人しかいないだろうし、オサム君を待ってたのは間違いないよね?」
美砂はニッコリと笑っているが、背後に般若が見えるような……。
「今の話しですと、オサム殿が置いていく判断をするなら、この子は一人になってしまうのでは?」
「パパ、一緒にいてくれないのです?」
「俺たちは旅に出ちゃうし、ずっとこの街にいる予定じゃないんだよ」
「ママからもパパの旅についていくように言われているのです!それに、出来る淑女はそんなことでは慌てないのです!」
リオンは、チッチッチッと舌を器用に鳴らしながら、口元に持ってきた人差し指を音に合わせて左右に動かす。
五歳児に余計なこと教えて、勝手に預ける親兄弟ってなんなの?あ、名前を聞いてみるか。
「そういえば、ママの名前はなんて言うのかな?」
「リオンにも内緒って言って教えてくれなかったのです。だから、ママはママなのです!」
クソ親かよ。
「え、子供に名前を教えない親って何?」
美砂もドン引きである。
今しがたのやり取りを聞いていた憲兵長とも相談し、牢屋に入っていた子供たちとは別に、リオンは俺たちが連れていくことにした。
少し日が傾きつつあるため、俺たちはこの場から外れ宿屋に帰ろうとしたのだが、残念ながら帰して貰えず、国境国の城に軟禁されることになった。
宿の食事を楽しみにしていたので、気分を落としながら城で夕食を頂くことに。
なんせ、本日泊まる予定だった虹の入江亭は、砂漠国から来た料理人が始めた宿みたいで、砂漠料理と海鮮料理のコラボが絶品だと言うのだ。
ということで落ち込みながらの夕食になるかと思ったのだが、なんと生魚料理が沢山出た!
お刺身ではないけど、カルパッチョやマリネのような形で生食文化もあるみたい。美砂を見ると久々の生魚に感動しているようでとても幸せそうな顔をしている。
しかし、こうなると米が食べたいな。旅の目的に追加してもいいかもしれない。
「リオンはママの所に帰るのが目的なんだろう?」
「そうなのです!」
「でも、俺たちは一応目的をもって旅をしているから、リオンのママの所に行けるか分からないぞ?国境王とかに探して貰った方がいいんじゃないか?」
「大丈夫なのです!旅は道連れ世は情けなのです!」
「そんな言い回しをよく知ってんな」
「それに、オサムパパについて行けば、必ずここに帰ってくることになると、ママが言ってたのです」
そんな適当な事を勝手に言うママは一回ぶん殴ってやりたいが……。
「分かった。一緒に行こうか」
色々と話をしながら食事を済ませた俺たちは、明日の国境王との面会が早朝から始まることになったため、早めに寝ることにした。
――翌朝。
「朝早くからすみませんな。国境の国コスタで、国境王と呼ばれとるアルーゴ・コスタじゃ。皆様のご来訪を歓迎しますぞ」
挨拶してくれた国境王は、見事な白ひげを貯えている、人の良さそうなお爺さんであった。
「いいえ、構いませんよ。こちらこそお時間ありがとうございます。俺は熊井理と言います」
「東部美砂です」
「エドモンと申します」
「リオンなのです!」
「ほっほっほ、まさかご来訪頂いた初日にマフィアを壊滅させるとは思いませなんだ」
「既に報告は聞いていると思いますが、勝手してすみません」
「構いませんよ。他の勢力を抑える役目もありましたが、見事に法を抜けてくるものですから、困っていたのも確かです」
「そうですか」
「それに、ルロワ王国のランバート公爵からの手紙を拝見しましてな。何やら麻薬が出回っているとか、うちの領ではセグレトファミリーが配っていたものとよく似ているようでなあ」
「なるほど、それはちょうど良かったです」
「結果論ではあるが、結果が良いことには変わりませんの」
あれ、褒められてる気もするけど、ちょっとチクチクしてる気がするな。
「しかしながら後始末にも時間がかかっていることも事実。そこで、一つお願いを聞いて貰いたいと思っておりますが、いかがですかの?」
あ、やっぱりちょっと怒ってますね?
国境王に迷惑をかけたことは間違いないので、美砂やエドモンと目配せし、要件を聞くことにする。
「どういった内容ですか?」
「まず、麻薬はどうやら奴隷商人が仕入れているようなのじゃ。じゃが、関所や街の積荷検査でも飴の持ち込み物などはなくての。今も奴隷商人に詰め寄っておるのじゃが、持ち込み方法が分からずシラを切られておる」
「その聞き出しを手伝えと?」
「察しが良くて何よりじゃ。何でも情報を聞き出すのが大変上手なのだと聞いてな?」
「本職の方には勝てないと思うのですが……。ん?あぁつまり、コスタ国境王とは関係ない体裁で好きに暴走してくれと言うことですか?」
「ほっほっほ」
笑って誤魔化して返事もしないと。とんだタヌキじじぃだな。
「分かりました、ご迷惑おかけした分は働きましょう。場所はどちらですか?」
「エセオサ奴隷商じゃ」
聞けば、その奴隷商人は急に魔物を多く取り扱い始めたようで、ゴブリンやウルフなども扱っているとのこと。
何に需要があるのか聞いてみると、騎士などの訓練で使うこともあるらしい。駆除対象、つまり人間を食べていない魔物を捉えるのは難しいらしく、大きい都市ではよく売れるようだ。
飴の流入が始まったのと同じ頃に魔物の取り扱いが始まっているそうだから、明らかにその魔物で何かやっているのだろう。
まだ午前中だし、ひとまずエセオサ奴隷商に行ってみよう。正直リオンは連れていきたくなかったのだが、説得が難しく諦めた。
「僕、絶対魔物が怪しいと思うね!」
「私も何か引っかかります。ですが、魔物でどうやって飴を運ぶのでしょう?」
「それは、どうなんだろうね?オサム君は分かる?」
「んー、魔物に絞って考えるなら腹の中とかに入れるかな?回復魔法をかければ傷は塞げるだろ?」
「え……?」
「オ、オサム殿、まさかそんな魔物とはいえ……」
え?普通に考えることだと思うんだが、そんなに驚くような発想か?
「おかしいか?」
「た、確かに可能性はあるかもしれないけど、ちょっと猟奇的かなーなんて……」
「え、ええ……」
「まあ、分かんないけどな。調べるには客として入って、とりあえず魔物を買ってみるしかないんじゃないかな?っと着いたみたいだな」
エセオサ奴隷商はアンダーグラウンドな感じではなく、普通の商店といった様相だ。公爵領では断っていたようだが、この国では奴隷制度が随分と根付いているみたいだな。
中に入ると、店内もとても清潔にしているようで、想像していた奴隷売買とは様子が違う。
「いらっしゃませ、店主のエセオサと申します。本日はどういったご要件でしょうか?」
「ああ、ここは魔物も取り扱いがあると聞いてね。俺たちは旅をしているんだけど、訓練に使えないかと考えているんだ」
「左様でしたか。ではコチラへどうぞ」
ついて行くと、前言撤回。
カーテンの奥は完全にアングラだわ。セグレトファミリーの地下牢とまではいかないが、いい気分にはならないな。
奥の部屋には、まず人間の奴隷が多く並べられていた。特に女性が多いな。
「みんなお腹が苦しそうなのです……」
「お腹?」
リオンがそんなことを言ったが、俺には分からなかった。
「昼食明けに来店されるお客様が多いですからね、先程餌を与えたばかりなのですよ」
餌、ね。それにしても……。
「その割には値札が付いていない奴隷も多いようだが?」
「ええ、大変恐縮ながら当店は人気がございまして、もう売却済みの者も沢山おりますから。では、こちらが魔物の閲覧部屋でございます」
「オ、オサム君、いつの間にこんな大きい子が!?」
「待って、違うよ!?美砂その目やめてくれない!?違う違う違う、分かるでしょ?」
冷たい視線を浴びせてきた美砂は、しゃがんで少女の話しを聞く。
「オサム君が、パパに似てるのかな?君のお名前はなんていうの?」
「フーッ!リオンに話しかけないで欲しいのです!」
優しく話しかけたのに、しっぽを逆立てた少女から威嚇されてしまった美砂は涙目である。
肩を竦め、今度は俺が聞くことにする。
「お名前はリオンって言うのかい?何歳なのかな?」
「リオンは五歳なのです!」
どうやら、俺には普通に答えてくれるらしい。
「そうか、五歳か。リオンはどうして俺のことをパパって呼んだの?」
「え?パパは、パパだからなのです」
「でもリオンと俺は今日初めて会ったよね?ママは?」
「うん、会えて良かったのです!ママはお外に出られないから、リオンがオサムパパを待っているように言われていたのです!」
ん?なんで名前を知ってるんだ?あ、さっき美砂が俺の名前を言ったからかな?
「ママは、オサムパパって言ってたのかな?」
「はい!ママと、ここまで連れてきてくれたお兄ちゃんが、黒髪黒目のオサムパパって言ってたのです。見たらすぐに分かったのです!」
美砂と、今度はエドモンまで冷たい視線を向けてくる。
違うからね?どう考えても年齢的にもおかしいでしょうよ。でも、ママとそのお兄ちゃんが俺を知ってるのは間違いなさそうだな。
「ひとまずママか、お兄ちゃんに会わせて貰ってもいいかな?」
「ママは遠い遠い所にいるのです。お兄ちゃんはシツジなのでママの所に行くみたいだけど、リオンはママの場所が分からないのです」
「遠い所って、この街にはいるんだよね?」
「ママは人間の街にはいないのです。お兄ちゃんはリオンに広場で大道芸をするようにだけ言って、帰っちゃったのです」
迷子かよ。いやこれ迷子なのか?
この場で解決しなそうであるため、美砂とエドモンに意見を聞く。
「どうしようか?」
「どうって、黒髪黒目のオサム君はこの世界に一人しかいないだろうし、オサム君を待ってたのは間違いないよね?」
美砂はニッコリと笑っているが、背後に般若が見えるような……。
「今の話しですと、オサム殿が置いていく判断をするなら、この子は一人になってしまうのでは?」
「パパ、一緒にいてくれないのです?」
「俺たちは旅に出ちゃうし、ずっとこの街にいる予定じゃないんだよ」
「ママからもパパの旅についていくように言われているのです!それに、出来る淑女はそんなことでは慌てないのです!」
リオンは、チッチッチッと舌を器用に鳴らしながら、口元に持ってきた人差し指を音に合わせて左右に動かす。
五歳児に余計なこと教えて、勝手に預ける親兄弟ってなんなの?あ、名前を聞いてみるか。
「そういえば、ママの名前はなんて言うのかな?」
「リオンにも内緒って言って教えてくれなかったのです。だから、ママはママなのです!」
クソ親かよ。
「え、子供に名前を教えない親って何?」
美砂もドン引きである。
今しがたのやり取りを聞いていた憲兵長とも相談し、牢屋に入っていた子供たちとは別に、リオンは俺たちが連れていくことにした。
少し日が傾きつつあるため、俺たちはこの場から外れ宿屋に帰ろうとしたのだが、残念ながら帰して貰えず、国境国の城に軟禁されることになった。
宿の食事を楽しみにしていたので、気分を落としながら城で夕食を頂くことに。
なんせ、本日泊まる予定だった虹の入江亭は、砂漠国から来た料理人が始めた宿みたいで、砂漠料理と海鮮料理のコラボが絶品だと言うのだ。
ということで落ち込みながらの夕食になるかと思ったのだが、なんと生魚料理が沢山出た!
お刺身ではないけど、カルパッチョやマリネのような形で生食文化もあるみたい。美砂を見ると久々の生魚に感動しているようでとても幸せそうな顔をしている。
しかし、こうなると米が食べたいな。旅の目的に追加してもいいかもしれない。
「リオンはママの所に帰るのが目的なんだろう?」
「そうなのです!」
「でも、俺たちは一応目的をもって旅をしているから、リオンのママの所に行けるか分からないぞ?国境王とかに探して貰った方がいいんじゃないか?」
「大丈夫なのです!旅は道連れ世は情けなのです!」
「そんな言い回しをよく知ってんな」
「それに、オサムパパについて行けば、必ずここに帰ってくることになると、ママが言ってたのです」
そんな適当な事を勝手に言うママは一回ぶん殴ってやりたいが……。
「分かった。一緒に行こうか」
色々と話をしながら食事を済ませた俺たちは、明日の国境王との面会が早朝から始まることになったため、早めに寝ることにした。
――翌朝。
「朝早くからすみませんな。国境の国コスタで、国境王と呼ばれとるアルーゴ・コスタじゃ。皆様のご来訪を歓迎しますぞ」
挨拶してくれた国境王は、見事な白ひげを貯えている、人の良さそうなお爺さんであった。
「いいえ、構いませんよ。こちらこそお時間ありがとうございます。俺は熊井理と言います」
「東部美砂です」
「エドモンと申します」
「リオンなのです!」
「ほっほっほ、まさかご来訪頂いた初日にマフィアを壊滅させるとは思いませなんだ」
「既に報告は聞いていると思いますが、勝手してすみません」
「構いませんよ。他の勢力を抑える役目もありましたが、見事に法を抜けてくるものですから、困っていたのも確かです」
「そうですか」
「それに、ルロワ王国のランバート公爵からの手紙を拝見しましてな。何やら麻薬が出回っているとか、うちの領ではセグレトファミリーが配っていたものとよく似ているようでなあ」
「なるほど、それはちょうど良かったです」
「結果論ではあるが、結果が良いことには変わりませんの」
あれ、褒められてる気もするけど、ちょっとチクチクしてる気がするな。
「しかしながら後始末にも時間がかかっていることも事実。そこで、一つお願いを聞いて貰いたいと思っておりますが、いかがですかの?」
あ、やっぱりちょっと怒ってますね?
国境王に迷惑をかけたことは間違いないので、美砂やエドモンと目配せし、要件を聞くことにする。
「どういった内容ですか?」
「まず、麻薬はどうやら奴隷商人が仕入れているようなのじゃ。じゃが、関所や街の積荷検査でも飴の持ち込み物などはなくての。今も奴隷商人に詰め寄っておるのじゃが、持ち込み方法が分からずシラを切られておる」
「その聞き出しを手伝えと?」
「察しが良くて何よりじゃ。何でも情報を聞き出すのが大変上手なのだと聞いてな?」
「本職の方には勝てないと思うのですが……。ん?あぁつまり、コスタ国境王とは関係ない体裁で好きに暴走してくれと言うことですか?」
「ほっほっほ」
笑って誤魔化して返事もしないと。とんだタヌキじじぃだな。
「分かりました、ご迷惑おかけした分は働きましょう。場所はどちらですか?」
「エセオサ奴隷商じゃ」
聞けば、その奴隷商人は急に魔物を多く取り扱い始めたようで、ゴブリンやウルフなども扱っているとのこと。
何に需要があるのか聞いてみると、騎士などの訓練で使うこともあるらしい。駆除対象、つまり人間を食べていない魔物を捉えるのは難しいらしく、大きい都市ではよく売れるようだ。
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まだ午前中だし、ひとまずエセオサ奴隷商に行ってみよう。正直リオンは連れていきたくなかったのだが、説得が難しく諦めた。
「僕、絶対魔物が怪しいと思うね!」
「私も何か引っかかります。ですが、魔物でどうやって飴を運ぶのでしょう?」
「それは、どうなんだろうね?オサム君は分かる?」
「んー、魔物に絞って考えるなら腹の中とかに入れるかな?回復魔法をかければ傷は塞げるだろ?」
「え……?」
「オ、オサム殿、まさかそんな魔物とはいえ……」
え?普通に考えることだと思うんだが、そんなに驚くような発想か?
「おかしいか?」
「た、確かに可能性はあるかもしれないけど、ちょっと猟奇的かなーなんて……」
「え、ええ……」
「まあ、分かんないけどな。調べるには客として入って、とりあえず魔物を買ってみるしかないんじゃないかな?っと着いたみたいだな」
エセオサ奴隷商はアンダーグラウンドな感じではなく、普通の商店といった様相だ。公爵領では断っていたようだが、この国では奴隷制度が随分と根付いているみたいだな。
中に入ると、店内もとても清潔にしているようで、想像していた奴隷売買とは様子が違う。
「いらっしゃませ、店主のエセオサと申します。本日はどういったご要件でしょうか?」
「ああ、ここは魔物も取り扱いがあると聞いてね。俺たちは旅をしているんだけど、訓練に使えないかと考えているんだ」
「左様でしたか。ではコチラへどうぞ」
ついて行くと、前言撤回。
カーテンの奥は完全にアングラだわ。セグレトファミリーの地下牢とまではいかないが、いい気分にはならないな。
奥の部屋には、まず人間の奴隷が多く並べられていた。特に女性が多いな。
「みんなお腹が苦しそうなのです……」
「お腹?」
リオンがそんなことを言ったが、俺には分からなかった。
「昼食明けに来店されるお客様が多いですからね、先程餌を与えたばかりなのですよ」
餌、ね。それにしても……。
「その割には値札が付いていない奴隷も多いようだが?」
「ええ、大変恐縮ながら当店は人気がございまして、もう売却済みの者も沢山おりますから。では、こちらが魔物の閲覧部屋でございます」
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