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5.アビと二人三脚で
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「…この世界で旦那に対抗できる実力者は現時点ではいないんですよ?その能力を生かして、旦那の好きな特撮モノ【正義の味方】でお金持ち作戦です」
はぁ?何言ってんのこいつ。確かに特撮の○○マンとか○○仮面○○ダーは好きな番組だけどもさ。
「アレですよ。反社会組織の活動拠点を強襲して、構成員を魔術で殲滅。表に出せないお金でウハハハハです」
何か?俺に戦闘で人殺しをさせて金を奪え、と言ってるのか。
無理無理、絶対無理だって。相手が社会で言うところの悪人だからって、リアルで【正義の味方】なんてハードル高すぎ。
俺はケンカが苦手で……そうじゃなくても軽い人見知りなんだぞ。
とてもじゃないが、強面(こわもて)の奴らを退治して、ウワマエはねるなんて……俺のキャラじゃねぇもん。
「はぁ~この期に及んで及び腰。力使いたいんでしょ?生活を安定させて親孝行できますよ?悪いやつらから金を奪って世の中に還元すれば、皆も幸せになってハッピー!?な良案なのに……この旦那ときたら」
あきれたようにため息をついて”やれやれ”と肩をすくめ首を振る。
お前はあくま(悪魔)で勧誘員か?それとも腹黒○○造か?
もっと穏やかな危険のない方法でお願いします。
「……じゃあ、こういうのはどうです?悪いやつらの近く…そうですね、1㎞ぐらいが限界みたいですけど。その位置から【収納空間】へ取り込む方向でいく、ってのは?」
俺仕様のアイテムボックスは直接手に触れなくても”いい”仕様らしい。
正直助かる。スプラッターな物体や溶解性の物なんて触れたくないわ。
「【収納空間】ってのは、【アイテムボックス】のことか?にしても悪いやつとはいえ他人から奪うの確定か」
最初に【創造魔術】で作りだしてから一度として使用していないスキル。
実際あれば便利でしかない…あるわけだが。
しかし、取り込んだ物体がどうなるんだ?
突然、力が消えたら取り出せなくなるのも怖い。
収納場所に困るものが多いのは悩みどころだけど、失うリスクに比べたらねぇ…
元ネタが某有名RPGだったせいか、最初手に入れた【アイテムボックス】は《一種類99個まで無制限に収納》というベタなやつだった。
普通に考えると、収納される場所が不明だ。アニメや漫画でも異空間や異次元空間扱いだけど。
原理不明なのは信用できない。
魔術による現象を検証しておきながら、今更だが。
魔術で再現された現象は、現代知識で辛うじて科学の力でも再現できるかも?なんて気がするから許容できる。
子供の頃なら『ブラックホールで吸い込んで、ホワイトホールから取り出す』なんてことを平気で言っていたような気がする。
でも、実際の【ブラックホール】は、超新星爆発後の恒星の成れの果ての重力場であって、『穴』なんてない。
当然、吸い込まれたものを吐き出す、対なる穴【ホワイトホール】も確認されていない。
じゃあ、異世界ならアリかというと、行ったこと無いし…
たとえ行けたとしても訳の分からない力は使いたくない。でも、なあ……
自分の理解不能な分野ではついつい考え込んでしまうのは、涼の欠点の一つでもある。
「ああ~もうっ!…うじうじと考えていても時間の無駄です。実際に行ってみますか?【収納空間】」
何でもないことのように言うアビ。
「へ?スキルの話だよな?まさか収納場所に入れるの?普通異世界モノ小説だと生き物は収納不可が鉄則だぞ」
大抵というか…ほとんどがそうだな。
微生物や細菌類、キノコなどの菌糸なんか、どういう扱いなんだろう、って疑問があるにはあるんだが、魔法的な何かで取り込んだ後に無害化されている、んだよな?
……………………………………………………………………………………
「……ジャンっ!ここが収納場所になる空間ですね」
「えっ、おい!確認も移動手順も吹っ飛ばしやがって。初《転移》っていう感動を返せよ!」
アビに連れられた?
というか、どこかに移動した、という感覚は全然なかった。
涼たちは何もない空間にいた。
上下や左右の感覚も無く、どこもかしこも白いどこまでも白い空間。
自分がここにいるということは、空気があるのだろう。
と、思わせて自発呼吸なく行動する自分の体に気付いてため息。
もう既に【人間?】を通り越して、生物辞めてませんか俺。
「安心してください。旦那の体は【適応能力】スキルのおかげで、移動時に瞬時にこの”世界”に適応する体になってます」
もう、色々と突っ込むのがむなしい。
で?ここはなんだ?
今”世界”って言ったよな?
多重並行世界という括りなのか?
突っ込めなくても疑問は多い。
「旦那はまた横着して~会話は言葉のキャッチボール、って言いますし。対人恐怖症克服のためにも”うち”のような美少女で練習してくださいよ、いけず~」
こいつ、また。『いけず』言うな。仕方がないな……
「で、アビ…ここはなんだ」
「パーソナルスペース。割り当て領域。前任者%$%&#の所有スペースだそうです」
また【前任者】か…何者なんだろうな?
アビが意味不なことを言う前後の会話から大体の予想はつく。
まず俺が生まれた【世界】。隣り合わせで存在する【異世界】。
加えて、収納空間として使う、この広大無辺なる空間。
俺がいた世界の管理者【G-3】の上位者ぽいから、ぶっちゃけ【世界創成】に関わった【神】の一人っていう線が濃厚だ。
アビが伝えてくれた…遺言?からにじみ出るのは懐かしい知り合いのような気安さだ。
とても、別次元の上位存在には思えない。
追い追い分かるってんだから今は詮索してもしょうがない。
自分の力の源は十中八九、世界創造に関わった神のごとき力を振るう【人間】であると思う。
では普通の【人間】かというと??????だ…
「この空間の広さは、旦那に分かり易い単位で言うと鍋田ドーム…じゃ広大さがいまいち伝わりませんか…」
アビが俺に分かる範囲で、この何も無い空間の広さを教えてくれる。
因(ちな)みに鍋田ドームは俺が住む町の郊外にある、私立高の全天候型競技場のことだ。
あの有名な東京ドームに似せた外観を持ちつつ、観客席の大半が屋外に露出している、という訳が分からないデザインだ。
何でも私立高の生徒の保護者会に属する富裕な親たちからの寄付金ですべて賄(まかな)おうとするも、建築デザインが想定外の材料費高騰に跳ね返り、急遽(きゅうきょ)、私学会(各地の私立高が加盟する、公助団体?)に援助を申し込むも断られたらしい。
それで二進も三進も行かなくなった学園長が、保護者会の重鎮のナントカというオッサンに頼み込み、オッサンの一族銀行が、私立高の敷地を抵当権に入れて……とか、なんやかんやで建設された、町の名所にして負の遺産だな。
「地球型惑星の大きさではまだ不十分ですね…まぁ旦那の周囲にあるモノなら何でも取り込めますよ」
広さの比較ができないのか、アビはぶっちゃけた。
おい!どんだけ広いんだよ。最終的には太陽系ぐらいの広さがある、らしいな。
この地球にあるものどころか、太陽が何十個も入るような手つかずの空間なんて規模がでかすぎる。
……うん。物がたくさん入る、ということでいいや。
「ここは何も%$&&#&ないし、決められていませんから好きなようにできます」
アビの言葉尻から推測するに、パソコン用語的に未インストール状態のハードディスクだな。
なら、パソコン(PC)のハードディスク(HD)のように、パーティション分割みたいなことをしてみよう。
……………………………………………………………………………………
「…一区画を地球型惑星一個分として、有機物と無機物それぞれ一個分ずつ。それらの中で50音とアルファベット順の区画分けを鍋田ドームを一個分として分けてくれ」
アビは俺の指示通り、この空間で設定を終えていく。
少し離れたところに何らかの区画がアルだろうと感じる。
今は何も収納されていないし、そもそもが区画からして広大であるので何も見えない。
「それで、それぞれの区画内に時間停止と時間経過の効果を持たせた空間を設定。収納物に対して個別にできるようにできるか?」
できなければ、空間ごとでもいいんだが。
「いえ、モーマンタイ。問題ありません。個別設定できます。例えば食肉なら熟成期間を調整可能。例》豆を用いた食材の製作…シヨウ油・豆腐・豆乳・おか、発酵させて納豆もできます。後、旦那の好きなゲームみたいに収納物に《解体と加工》作業の自動化を選択可能ですが……旦那自身が刃物片手に血みどろで解体をしたい主義なら、専用の解体ナイフをご用意します?」
いい、いらん、スプラッタは極力回避で。便利だよな自動解体。
異世界モノであったり無かったり仕様がバラバラだけど、あれば重宝する。
魔物を倒して素材の確保に、悪人の遺体から金目の物を分別して売りさばく。
人はばらして移植手術用に転売するか……おい、何考えてる!?
昨日までの俺は殺人行為に対して忌避感が半端ない、小心者だったはずなのに……ふとした瞬間に目的の為なら手段は二の次のように感じている。……考え方がまるで殺人狂や犯罪者だ。
もしくは内蔵ブローカーと言い換えてもいい。
アビのいうがまま涼は流れ作業をこなしていた。
アビは涼自身が生み出したアドバイザーであり、ナビゲーターである。
自分に不都合なことはしない、全ては自分自身のためを思っての助言でアリ行動だ、と肯定していた。
果たして、本当にそうなのだろうか?涼自身の中に滞る本心の発露が”アビ”だとすれば…それは?
それは、”涼”自身の本心であり本望、彼自身の本能。であれば、アビの行いは全て自分の望みであり、その結果更なる災厄や苦難が”涼”自身に降りかかろうと全ては己が成したことで”自業自得”といえよう。
これは、いよいよ影響が出てきたようだ、最適化が精神に変調をもたらしている。
【器】として【前任者】が求める基本スペックが、人を人と思わず感情にとらわれない理路整然と事を運べる、マシーンのようなものであるべきである、からだろうか。
異世界モノ小説でも肉体が若返った主人公が、見た目相応の精神や思考能力に変化する、という記述が多い。
であれば、肉体の最適化による精神面への変化はありうる。
実感すると怖いものだ、と涼は感じた。色々と変容ししまった自分。
まるで異世界モノ小説の主人公になったような気分だ。
ここは、まだ現実世界で俺の自室なわけだが。
分不相応な力を手にしてオロオロしていた自身は鳴りを潜め、自分以外を低く見る傲岸不遜な面が現れつつあった。
理性では危険な兆候であると理解していながら、ある面では本当になりたかった”自分”なのでは?という思いもある。
俺は変わる。変わらざるを得ない。
あの時、神を気取るアイツから力をもらうことに”否”、と突き放せなかった時から、とっくにレールの切り替え終わっていた。
なら、変わろう。昨日までの自分を忘れるのではなく、それを持ちつつも良い方向に持っていける自分になりたい。今はただ、そう願う涼であった。
……………………………………………………………………………………
物語が進まないうえに初心説明回みたいな流れでした。
副題付けました。
はぁ?何言ってんのこいつ。確かに特撮の○○マンとか○○仮面○○ダーは好きな番組だけどもさ。
「アレですよ。反社会組織の活動拠点を強襲して、構成員を魔術で殲滅。表に出せないお金でウハハハハです」
何か?俺に戦闘で人殺しをさせて金を奪え、と言ってるのか。
無理無理、絶対無理だって。相手が社会で言うところの悪人だからって、リアルで【正義の味方】なんてハードル高すぎ。
俺はケンカが苦手で……そうじゃなくても軽い人見知りなんだぞ。
とてもじゃないが、強面(こわもて)の奴らを退治して、ウワマエはねるなんて……俺のキャラじゃねぇもん。
「はぁ~この期に及んで及び腰。力使いたいんでしょ?生活を安定させて親孝行できますよ?悪いやつらから金を奪って世の中に還元すれば、皆も幸せになってハッピー!?な良案なのに……この旦那ときたら」
あきれたようにため息をついて”やれやれ”と肩をすくめ首を振る。
お前はあくま(悪魔)で勧誘員か?それとも腹黒○○造か?
もっと穏やかな危険のない方法でお願いします。
「……じゃあ、こういうのはどうです?悪いやつらの近く…そうですね、1㎞ぐらいが限界みたいですけど。その位置から【収納空間】へ取り込む方向でいく、ってのは?」
俺仕様のアイテムボックスは直接手に触れなくても”いい”仕様らしい。
正直助かる。スプラッターな物体や溶解性の物なんて触れたくないわ。
「【収納空間】ってのは、【アイテムボックス】のことか?にしても悪いやつとはいえ他人から奪うの確定か」
最初に【創造魔術】で作りだしてから一度として使用していないスキル。
実際あれば便利でしかない…あるわけだが。
しかし、取り込んだ物体がどうなるんだ?
突然、力が消えたら取り出せなくなるのも怖い。
収納場所に困るものが多いのは悩みどころだけど、失うリスクに比べたらねぇ…
元ネタが某有名RPGだったせいか、最初手に入れた【アイテムボックス】は《一種類99個まで無制限に収納》というベタなやつだった。
普通に考えると、収納される場所が不明だ。アニメや漫画でも異空間や異次元空間扱いだけど。
原理不明なのは信用できない。
魔術による現象を検証しておきながら、今更だが。
魔術で再現された現象は、現代知識で辛うじて科学の力でも再現できるかも?なんて気がするから許容できる。
子供の頃なら『ブラックホールで吸い込んで、ホワイトホールから取り出す』なんてことを平気で言っていたような気がする。
でも、実際の【ブラックホール】は、超新星爆発後の恒星の成れの果ての重力場であって、『穴』なんてない。
当然、吸い込まれたものを吐き出す、対なる穴【ホワイトホール】も確認されていない。
じゃあ、異世界ならアリかというと、行ったこと無いし…
たとえ行けたとしても訳の分からない力は使いたくない。でも、なあ……
自分の理解不能な分野ではついつい考え込んでしまうのは、涼の欠点の一つでもある。
「ああ~もうっ!…うじうじと考えていても時間の無駄です。実際に行ってみますか?【収納空間】」
何でもないことのように言うアビ。
「へ?スキルの話だよな?まさか収納場所に入れるの?普通異世界モノ小説だと生き物は収納不可が鉄則だぞ」
大抵というか…ほとんどがそうだな。
微生物や細菌類、キノコなどの菌糸なんか、どういう扱いなんだろう、って疑問があるにはあるんだが、魔法的な何かで取り込んだ後に無害化されている、んだよな?
……………………………………………………………………………………
「……ジャンっ!ここが収納場所になる空間ですね」
「えっ、おい!確認も移動手順も吹っ飛ばしやがって。初《転移》っていう感動を返せよ!」
アビに連れられた?
というか、どこかに移動した、という感覚は全然なかった。
涼たちは何もない空間にいた。
上下や左右の感覚も無く、どこもかしこも白いどこまでも白い空間。
自分がここにいるということは、空気があるのだろう。
と、思わせて自発呼吸なく行動する自分の体に気付いてため息。
もう既に【人間?】を通り越して、生物辞めてませんか俺。
「安心してください。旦那の体は【適応能力】スキルのおかげで、移動時に瞬時にこの”世界”に適応する体になってます」
もう、色々と突っ込むのがむなしい。
で?ここはなんだ?
今”世界”って言ったよな?
多重並行世界という括りなのか?
突っ込めなくても疑問は多い。
「旦那はまた横着して~会話は言葉のキャッチボール、って言いますし。対人恐怖症克服のためにも”うち”のような美少女で練習してくださいよ、いけず~」
こいつ、また。『いけず』言うな。仕方がないな……
「で、アビ…ここはなんだ」
「パーソナルスペース。割り当て領域。前任者%$%&#の所有スペースだそうです」
また【前任者】か…何者なんだろうな?
アビが意味不なことを言う前後の会話から大体の予想はつく。
まず俺が生まれた【世界】。隣り合わせで存在する【異世界】。
加えて、収納空間として使う、この広大無辺なる空間。
俺がいた世界の管理者【G-3】の上位者ぽいから、ぶっちゃけ【世界創成】に関わった【神】の一人っていう線が濃厚だ。
アビが伝えてくれた…遺言?からにじみ出るのは懐かしい知り合いのような気安さだ。
とても、別次元の上位存在には思えない。
追い追い分かるってんだから今は詮索してもしょうがない。
自分の力の源は十中八九、世界創造に関わった神のごとき力を振るう【人間】であると思う。
では普通の【人間】かというと??????だ…
「この空間の広さは、旦那に分かり易い単位で言うと鍋田ドーム…じゃ広大さがいまいち伝わりませんか…」
アビが俺に分かる範囲で、この何も無い空間の広さを教えてくれる。
因(ちな)みに鍋田ドームは俺が住む町の郊外にある、私立高の全天候型競技場のことだ。
あの有名な東京ドームに似せた外観を持ちつつ、観客席の大半が屋外に露出している、という訳が分からないデザインだ。
何でも私立高の生徒の保護者会に属する富裕な親たちからの寄付金ですべて賄(まかな)おうとするも、建築デザインが想定外の材料費高騰に跳ね返り、急遽(きゅうきょ)、私学会(各地の私立高が加盟する、公助団体?)に援助を申し込むも断られたらしい。
それで二進も三進も行かなくなった学園長が、保護者会の重鎮のナントカというオッサンに頼み込み、オッサンの一族銀行が、私立高の敷地を抵当権に入れて……とか、なんやかんやで建設された、町の名所にして負の遺産だな。
「地球型惑星の大きさではまだ不十分ですね…まぁ旦那の周囲にあるモノなら何でも取り込めますよ」
広さの比較ができないのか、アビはぶっちゃけた。
おい!どんだけ広いんだよ。最終的には太陽系ぐらいの広さがある、らしいな。
この地球にあるものどころか、太陽が何十個も入るような手つかずの空間なんて規模がでかすぎる。
……うん。物がたくさん入る、ということでいいや。
「ここは何も%$&&#&ないし、決められていませんから好きなようにできます」
アビの言葉尻から推測するに、パソコン用語的に未インストール状態のハードディスクだな。
なら、パソコン(PC)のハードディスク(HD)のように、パーティション分割みたいなことをしてみよう。
……………………………………………………………………………………
「…一区画を地球型惑星一個分として、有機物と無機物それぞれ一個分ずつ。それらの中で50音とアルファベット順の区画分けを鍋田ドームを一個分として分けてくれ」
アビは俺の指示通り、この空間で設定を終えていく。
少し離れたところに何らかの区画がアルだろうと感じる。
今は何も収納されていないし、そもそもが区画からして広大であるので何も見えない。
「それで、それぞれの区画内に時間停止と時間経過の効果を持たせた空間を設定。収納物に対して個別にできるようにできるか?」
できなければ、空間ごとでもいいんだが。
「いえ、モーマンタイ。問題ありません。個別設定できます。例えば食肉なら熟成期間を調整可能。例》豆を用いた食材の製作…シヨウ油・豆腐・豆乳・おか、発酵させて納豆もできます。後、旦那の好きなゲームみたいに収納物に《解体と加工》作業の自動化を選択可能ですが……旦那自身が刃物片手に血みどろで解体をしたい主義なら、専用の解体ナイフをご用意します?」
いい、いらん、スプラッタは極力回避で。便利だよな自動解体。
異世界モノであったり無かったり仕様がバラバラだけど、あれば重宝する。
魔物を倒して素材の確保に、悪人の遺体から金目の物を分別して売りさばく。
人はばらして移植手術用に転売するか……おい、何考えてる!?
昨日までの俺は殺人行為に対して忌避感が半端ない、小心者だったはずなのに……ふとした瞬間に目的の為なら手段は二の次のように感じている。……考え方がまるで殺人狂や犯罪者だ。
もしくは内蔵ブローカーと言い換えてもいい。
アビのいうがまま涼は流れ作業をこなしていた。
アビは涼自身が生み出したアドバイザーであり、ナビゲーターである。
自分に不都合なことはしない、全ては自分自身のためを思っての助言でアリ行動だ、と肯定していた。
果たして、本当にそうなのだろうか?涼自身の中に滞る本心の発露が”アビ”だとすれば…それは?
それは、”涼”自身の本心であり本望、彼自身の本能。であれば、アビの行いは全て自分の望みであり、その結果更なる災厄や苦難が”涼”自身に降りかかろうと全ては己が成したことで”自業自得”といえよう。
これは、いよいよ影響が出てきたようだ、最適化が精神に変調をもたらしている。
【器】として【前任者】が求める基本スペックが、人を人と思わず感情にとらわれない理路整然と事を運べる、マシーンのようなものであるべきである、からだろうか。
異世界モノ小説でも肉体が若返った主人公が、見た目相応の精神や思考能力に変化する、という記述が多い。
であれば、肉体の最適化による精神面への変化はありうる。
実感すると怖いものだ、と涼は感じた。色々と変容ししまった自分。
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ここは、まだ現実世界で俺の自室なわけだが。
分不相応な力を手にしてオロオロしていた自身は鳴りを潜め、自分以外を低く見る傲岸不遜な面が現れつつあった。
理性では危険な兆候であると理解していながら、ある面では本当になりたかった”自分”なのでは?という思いもある。
俺は変わる。変わらざるを得ない。
あの時、神を気取るアイツから力をもらうことに”否”、と突き放せなかった時から、とっくにレールの切り替え終わっていた。
なら、変わろう。昨日までの自分を忘れるのではなく、それを持ちつつも良い方向に持っていける自分になりたい。今はただ、そう願う涼であった。
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