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99%密室暴行事件②

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「時巻くん。この窓からは犯人は入ってこれないな。でも目の付け所はさすがだよ」
 日暮警部補は窓から外を見下ろしてそういった。日暮警部補が窓からどいた後、窓の外を見てみる。
 部屋の窓はベランダがなく、窓から落ちないように手すりはあったけど、3階のここまで登って窓から入ってくるのは無理そうだ。

「そうなると玄関から入ったってことだよね」
 スケットくんは僕に確認するように言った。僕はうんとうなずく。

「加藤さん、玄関は鍵は閉めていたんですか?」
 今度は日暮警部補がボールペンでメモを取りながら事情聴取をする。

「うーん……たぶん閉めてたと思いますよ。刑事さんがピンポン押した時、ちゃんと閉まってましたから。まあ暑いから窓の鍵は開けてあったけど」

「日暮警部補、これは密室事件ですね」

「玄関の鍵は閉まっていて、3階のため窓からの侵入も出来ない。しかし窓の鍵は開いていたことを考えると完全な密室ではない」
 日暮警部補と有栖刑事は頭を抱えている。

「99%密室……」
 スケットくんはそうつぶやいた。

「スケットくんの言う通り。窓以外は閉まっていたと考えると99%密室……。日暮警部補、私はアパートのオーナーにお願いして入口の防犯カメラに怪しい人が映っていないか確認してきます」
 
「スケットくん!有栖刑事と一緒に確認をお願い!」

「分かった!」

 有栖刑事とスケットくんの2人が部屋を出てから、日暮警部補は加藤さんからさらに話を聞いた。

「誰かこの部屋の合鍵を持っている人はいませんか?」

「今は俺の持ってる1本だけです。同じ大学の友達に渡してましたけど、昨日返してもらったのでほらここに」
 加藤さんはそう言って机の上を指さした。
 たしかにそこには鍵が2本置いてある。加藤さんがいつも使っている鍵とその合鍵だ。

「ちなみに誰に渡してましたか?」

「同じアパートなんですけど、隣に住んでる元山(もとやま)カノンさんです。同じ大学なんですよ。謎路大学ってここから近いんで同じ学校のやつ結構いるんですよね」

 日暮警部補は元山さんに話を聞くために一度加藤さんの部屋を出た。

「時巻くん、さっきの話を聞いてどう思った?」

「元山さんが合鍵の合鍵を作っているかもしれないと思いました。そしたら合鍵を返したとしてもいつでも中に入ることが出来ます」

 日暮警部補は僕の推理を聞くとスマホで誰かに電話をかけた。

「日暮だ。有栖、近くの鍵屋さんを回って元山カレンという女性が最近来なかったか聞き込みをしてくれ」

 元山さんがもし合鍵を作っていれば犯人の可能性が高いはず。
 密室を破ることがこの事件の犯人を見つけることにつながるはずだ。

「よし!タイムリープして犯人が誰か見に行こう」
 僕はハッと思い出した。今日はあと1回しかタイムリープが出来ない!
 小春ちゃんに頼まれて落としてしまったお気に入りの鉛筆を探すとき、2回タイムリープしてしまったんだった。
 
 犯人が加藤さんの部屋に侵入した正確な時間が分かればその時間に戻って犯人を突き止められる。
 加藤さんは17時頃に犯人に殴られた。けれど犯人がいつ部屋に入ってきたのかは昼寝をしていたから知らないはずだ。
 それに殴られた時間も加藤さんが寝起きで寝ぼけてたから、正確な時間は分からない。てきとうにタイムリープしたら密室を破ることができなくなってしまう。

 しばらく頭を悩ませていると、

「モドルくん。大丈夫?」
 目の前にはスケットくんがいた。有栖刑事が鍵屋さんへ聞き込みに行ったから戻って来たんだ。

「ごめん。考え事してた。防犯カメラはどうだった?」

 スケットくんは防犯カメラで分かったことを話してくれた。
 防犯カメラは一台でアパートの入口を映していた。
 加藤さんが殴られたという17時頃から2時間前までの映像を見たが誰一人映像には映らなかった。

「ということはこのアパート自体も密室ってことだ!」
 加藤さんの部屋とこのアパート、2つの密室ができてしまった。

「一体だれが犯人なんだろう」
 スケットくんは頭を悩ませている。

「スケットくん。このアパート自体が密室になったおかげで犯人がまだこのアパートのどこかにいることは分かったよ」

「そうか!犯人が逃げたとしたら入口を絶対通るはずだもんね!」
 その通り。犯人は必ずアパートの入口を通るはず。
 怪しい人物やこのアパートの住人以外が通ったとしたらその人が一番怪しいけれど、今回は誰一人映っていない。
 ということは犯人はこのアパートにいるはずだ。

「よし、本当にアパートが密室なのかを確認しよう」
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