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椅子取りゲーム事件⑥
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だけど何回戦行われるか分からなければ秒数を覚えるにも限界がある。もちろん全部同じ秒数で音楽を止めてしまったら担持先生や雪見ちゃんにも怪しまれてしまう。
「じゃあきっとアイコンタクトだ。例えばまばたきした回数で知らせたとか」
スケットくんの名推理。それなら誰にもバレずに意思疎通が出来る。
しかしそれをしていないことは僕自身が一番分かっていた。
だって椅子取りゲーム中、二人はずっと自分の腕時計を見ていたから。
「それは無理なはずだよ……時巻くんが僕と遊部くんがずっと腕時計を見ていたのを見ているんだから……」
僕の発言が2人のアリバイを証明してしまった。スケットくんは見るからに落ち込んでいる。
だけど遅沢くんの言う通りだ。とすると何か別の方法で秒数を合わせていたはずだ。
僕はタイムメガネの右クロックを回して叫んだ。
「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」
僕は3回戦目が行われる直前までタイムリープした。
「みんな!椅子取りゲーム、スタート!」
遊部くんの掛け声と同時に音楽が鳴る。
僕は視点を変えて2人の足元を観察する。アイコンタクトで止めるタイミングを決めているわけじゃないのは前回のタイムリープで分かった。
だとすれば見えないところ、足を使って足音などで合図を送っているんだと考えた。
しかし2人の足元は特になんの変化もなかった。遅沢くんは普通に椅子の周りを回っているだけだし、遊部くんはただ立っているだけ。
気が付けば音楽は止まり、遅沢くん、打野くん、スケットくんの3人が勝ち残った。
タイムメガネの左クロックで残り時間を見てみる。この時間に残っていられるのは1分30秒。
椅子が一旦すべて片付けられ残りの椅子が丸い椅子1つになったところだった。もう一度タイムメガネの左クロックで残り時間を見てみる。
「残り1分……」
この1分間でトリックを見破らなければ今日のタイムリープはこれで3回目。
これ以上タイムリープをすることは出来なくて、トリックを見破ることができなくなる。
「足音でもないということは……」
頭を悩ませる。お互いがお互いの姿を見ないで腕時計を見ているということは、目で見なくても分かる合図なのは確か。例えば――。
「スマートウォッチを2人が使っているなら、メッセージのやり取りでタイミングを教えているんだってなったのに」
だけどそれも違う。スマートウォッチはそもそも学校に持ってきちゃダメだし、2人が普通の腕時計を使っているのは確認済。
「さあ!最後の椅子取りゲーム、スタート!」
再び音楽が鳴り始める。考えを巡らせている間に椅子取りゲームがスタートした。
これで4回目、いや僕にとっては8回目の椅子取りゲームだ。今までの椅子取りゲームを思い返す。
「まさか!」
タイムリープする前は確かではないけど、タイムリープしてからの椅子取りゲームで音楽が止まる時間は大体同じだった。
椅子取りゲームと椅子取りゲームの間に椅子を減らす作業があってそれが約30秒。
2回目のタイムリープでは1回戦がスタートし椅子の片付けがあり2回戦が終わった瞬間に3分間のタイムリープが終了した。
今回のタイムリープも同じ流れだとしたら。そして8回も聞いた遊部くんのスタートの合図。
1分間流れ続けた音楽はピタリと止まった。優勝したのはもちろん遅沢くん。
タイムメガネの左クロックについている秒針が頂点に到着し、3分間の終わりを知らせる。
今まさにオリジナルタイムに戻ろうとする中、最後に遊部くんの方を見てみる。遊部くんはまるで自分が優勝したかのように嬉しそうな顔をしていた。
オリジナルタイムに戻ってきた。トリックは完全に見破った。
「確かに遅沢くんの言う通り。遊部と遅沢は確かにずっと腕時計を見ていた。それは2人が目でアイコンタクトしていないアリバイになっている。でもそれは不自然だ」
「一体どういうことなんだよ」
八坂くんは僕の推理ショーに飽きたようでお菓子をせがむ子供のように身を乗り出した。
「八坂くんは椅子取りゲームに参加していた時、どこを見てた?」
「じゃあきっとアイコンタクトだ。例えばまばたきした回数で知らせたとか」
スケットくんの名推理。それなら誰にもバレずに意思疎通が出来る。
しかしそれをしていないことは僕自身が一番分かっていた。
だって椅子取りゲーム中、二人はずっと自分の腕時計を見ていたから。
「それは無理なはずだよ……時巻くんが僕と遊部くんがずっと腕時計を見ていたのを見ているんだから……」
僕の発言が2人のアリバイを証明してしまった。スケットくんは見るからに落ち込んでいる。
だけど遅沢くんの言う通りだ。とすると何か別の方法で秒数を合わせていたはずだ。
僕はタイムメガネの右クロックを回して叫んだ。
「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」
僕は3回戦目が行われる直前までタイムリープした。
「みんな!椅子取りゲーム、スタート!」
遊部くんの掛け声と同時に音楽が鳴る。
僕は視点を変えて2人の足元を観察する。アイコンタクトで止めるタイミングを決めているわけじゃないのは前回のタイムリープで分かった。
だとすれば見えないところ、足を使って足音などで合図を送っているんだと考えた。
しかし2人の足元は特になんの変化もなかった。遅沢くんは普通に椅子の周りを回っているだけだし、遊部くんはただ立っているだけ。
気が付けば音楽は止まり、遅沢くん、打野くん、スケットくんの3人が勝ち残った。
タイムメガネの左クロックで残り時間を見てみる。この時間に残っていられるのは1分30秒。
椅子が一旦すべて片付けられ残りの椅子が丸い椅子1つになったところだった。もう一度タイムメガネの左クロックで残り時間を見てみる。
「残り1分……」
この1分間でトリックを見破らなければ今日のタイムリープはこれで3回目。
これ以上タイムリープをすることは出来なくて、トリックを見破ることができなくなる。
「足音でもないということは……」
頭を悩ませる。お互いがお互いの姿を見ないで腕時計を見ているということは、目で見なくても分かる合図なのは確か。例えば――。
「スマートウォッチを2人が使っているなら、メッセージのやり取りでタイミングを教えているんだってなったのに」
だけどそれも違う。スマートウォッチはそもそも学校に持ってきちゃダメだし、2人が普通の腕時計を使っているのは確認済。
「さあ!最後の椅子取りゲーム、スタート!」
再び音楽が鳴り始める。考えを巡らせている間に椅子取りゲームがスタートした。
これで4回目、いや僕にとっては8回目の椅子取りゲームだ。今までの椅子取りゲームを思い返す。
「まさか!」
タイムリープする前は確かではないけど、タイムリープしてからの椅子取りゲームで音楽が止まる時間は大体同じだった。
椅子取りゲームと椅子取りゲームの間に椅子を減らす作業があってそれが約30秒。
2回目のタイムリープでは1回戦がスタートし椅子の片付けがあり2回戦が終わった瞬間に3分間のタイムリープが終了した。
今回のタイムリープも同じ流れだとしたら。そして8回も聞いた遊部くんのスタートの合図。
1分間流れ続けた音楽はピタリと止まった。優勝したのはもちろん遅沢くん。
タイムメガネの左クロックについている秒針が頂点に到着し、3分間の終わりを知らせる。
今まさにオリジナルタイムに戻ろうとする中、最後に遊部くんの方を見てみる。遊部くんはまるで自分が優勝したかのように嬉しそうな顔をしていた。
オリジナルタイムに戻ってきた。トリックは完全に見破った。
「確かに遅沢くんの言う通り。遊部と遅沢は確かにずっと腕時計を見ていた。それは2人が目でアイコンタクトしていないアリバイになっている。でもそれは不自然だ」
「一体どういうことなんだよ」
八坂くんは僕の推理ショーに飽きたようでお菓子をせがむ子供のように身を乗り出した。
「八坂くんは椅子取りゲームに参加していた時、どこを見てた?」
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