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椅子取りゲーム事件③
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いつも遅沢くんのことを鈍臭いなといじっている八坂くんもこの時ばかりは拍手を送っていた。
この時は次の日の朝に喧嘩が起こるなんてまったく思いもしなかった――。
担持先生が職員室から帰ってきた。
隣には遊部くんもいる。職員室でみっちり怒られた様子だ。遊部くんの目は涙目だ。
保健室から遅沢くんも帰ってきてそのまま授業が行われた。
そして休み時間。打野くんが八坂くんと話している声が聞こえてくる。
「喧嘩の原因さ、やっぱファイヤードラゴンなのかな」
八坂くんが打野くんにそう言う声は、後ろの席の僕にも聞こえてくる大きさだ。
だけど、八坂くんの言う通り、喧嘩の原因はファイヤードラゴンに違いないと僕も思っていた。
「八坂くんならまだしも遊部くんがファイヤードラゴン奪うために喧嘩なんかしないだろ」
打野くんはお腹を抱えて笑い出す。
「おいおい。なんだよそれ~」
八坂くんは、はぁとため息を吐いた。ちょっと拗ねているようだ。
それにしてもファイヤードラゴンはやっぱり魅力的なんだ。だけど――。
僕は打野くんの言った言葉が引っかかった。
遊部くんは普段はおとなしい性格だ。遅沢くんも遊部くんと一緒でおとなしい性格。
そんな2人がファイヤードラゴンの奪い合いで本当に喧嘩なんてするのだろうか。同じクラスになってから、遊部くんも遅沢くんも声を荒げるのを見たことも聞いたこともない。
何かがおかしい。ファイヤードラゴン以外に理由があるはずだ。
「小春ちゃん喧嘩があったのって何時くらい?」
僕はいつも朝一番に教室に来ている小春ちゃんに聞いてみた。
「私が教室来た時に2人が言い争い始めたから8時10分くらいかな」
小春ちゃんから話を聞いて、僕はあごに手をやって考える。言い争いが始まる時に戻れば喧嘩の原因がわかるはずだ。
「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」
タイムメガネの右クロックを回してタイムリープ。
僕は2人の喧嘩が起きる前にタイムリープした。
時間は8時9分。
教室の真ん中で遊部くんと遅沢くんが立っている。お互い真剣な表情を向け合っている。椅子取りゲームの時のような緊張感がある。
僕は2人の会話を聞くために忍者のようにヒソヒソと歩きながら近づいていく。一番後ろの机の陰に隠れた。
「俺のおかげでファイヤードラゴンがゲットできたんだ。それは俺のものだ」
遊部くんは遅沢くんが大事そうに握っているファイヤードラゴンを見つめている。
「僕が協力したからファイヤードラゴンゲットできたんだよ。それに優勝できたらファイヤードラゴンは2人の物って決めていたじゃないか」
遅沢くんは遊部くんに怯えながらも確かにそう言った。
「あの椅子取りゲームが2人に仕組まれてたなんて……」
2人の会話が本当なら昨日の椅子取りゲームは遊部くんと遅沢くんがズルをしてファイヤードラゴンをゲットしたということになる。
「でもこれで喧嘩の原因はわかったぞ」
2人は協力して椅子取りゲームを優勝しファイヤードラゴンをゲットした。そこまではよかったけど、仲間割れしてファイヤードラゴンを誰のものにするかで喧嘩することになってしまったのだ。
でもここで新しい問題がでてくる。それは2人が協力したのがいつなのか。
僕が椅子取りゲームの優勝賞品がファイヤードラゴンだと知ったのは5時間目。レクの時間が始まるその時だ。
優勝賞品が発表されてからすぐに椅子取りゲームがスタートしたから、その時に遊部くんと遅沢くんが話す暇はなかったはず。
優勝賞品がファイヤードラゴンだと事前に知っていればあれだけど……。
考えを巡らせてるうちに2人の喧嘩は始まって、タイムメガネの3分間が終わった。そして僕はオリジナルタイムに戻ってきた。
僕はすぐに雪見ちゃんの席へ。
「雪見ちゃん聞きたいことがあるんだ。どうやら朝の喧嘩の原因は昨日の5時間目のレクでやった椅子取りゲームみたいなんだ」
「時巻くん。それって一体どういうこと?」
雪見ちゃんは目を丸く見開いて驚いたような表情で質問をする。
この時は次の日の朝に喧嘩が起こるなんてまったく思いもしなかった――。
担持先生が職員室から帰ってきた。
隣には遊部くんもいる。職員室でみっちり怒られた様子だ。遊部くんの目は涙目だ。
保健室から遅沢くんも帰ってきてそのまま授業が行われた。
そして休み時間。打野くんが八坂くんと話している声が聞こえてくる。
「喧嘩の原因さ、やっぱファイヤードラゴンなのかな」
八坂くんが打野くんにそう言う声は、後ろの席の僕にも聞こえてくる大きさだ。
だけど、八坂くんの言う通り、喧嘩の原因はファイヤードラゴンに違いないと僕も思っていた。
「八坂くんならまだしも遊部くんがファイヤードラゴン奪うために喧嘩なんかしないだろ」
打野くんはお腹を抱えて笑い出す。
「おいおい。なんだよそれ~」
八坂くんは、はぁとため息を吐いた。ちょっと拗ねているようだ。
それにしてもファイヤードラゴンはやっぱり魅力的なんだ。だけど――。
僕は打野くんの言った言葉が引っかかった。
遊部くんは普段はおとなしい性格だ。遅沢くんも遊部くんと一緒でおとなしい性格。
そんな2人がファイヤードラゴンの奪い合いで本当に喧嘩なんてするのだろうか。同じクラスになってから、遊部くんも遅沢くんも声を荒げるのを見たことも聞いたこともない。
何かがおかしい。ファイヤードラゴン以外に理由があるはずだ。
「小春ちゃん喧嘩があったのって何時くらい?」
僕はいつも朝一番に教室に来ている小春ちゃんに聞いてみた。
「私が教室来た時に2人が言い争い始めたから8時10分くらいかな」
小春ちゃんから話を聞いて、僕はあごに手をやって考える。言い争いが始まる時に戻れば喧嘩の原因がわかるはずだ。
「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」
タイムメガネの右クロックを回してタイムリープ。
僕は2人の喧嘩が起きる前にタイムリープした。
時間は8時9分。
教室の真ん中で遊部くんと遅沢くんが立っている。お互い真剣な表情を向け合っている。椅子取りゲームの時のような緊張感がある。
僕は2人の会話を聞くために忍者のようにヒソヒソと歩きながら近づいていく。一番後ろの机の陰に隠れた。
「俺のおかげでファイヤードラゴンがゲットできたんだ。それは俺のものだ」
遊部くんは遅沢くんが大事そうに握っているファイヤードラゴンを見つめている。
「僕が協力したからファイヤードラゴンゲットできたんだよ。それに優勝できたらファイヤードラゴンは2人の物って決めていたじゃないか」
遅沢くんは遊部くんに怯えながらも確かにそう言った。
「あの椅子取りゲームが2人に仕組まれてたなんて……」
2人の会話が本当なら昨日の椅子取りゲームは遊部くんと遅沢くんがズルをしてファイヤードラゴンをゲットしたということになる。
「でもこれで喧嘩の原因はわかったぞ」
2人は協力して椅子取りゲームを優勝しファイヤードラゴンをゲットした。そこまではよかったけど、仲間割れしてファイヤードラゴンを誰のものにするかで喧嘩することになってしまったのだ。
でもここで新しい問題がでてくる。それは2人が協力したのがいつなのか。
僕が椅子取りゲームの優勝賞品がファイヤードラゴンだと知ったのは5時間目。レクの時間が始まるその時だ。
優勝賞品が発表されてからすぐに椅子取りゲームがスタートしたから、その時に遊部くんと遅沢くんが話す暇はなかったはず。
優勝賞品がファイヤードラゴンだと事前に知っていればあれだけど……。
考えを巡らせてるうちに2人の喧嘩は始まって、タイムメガネの3分間が終わった。そして僕はオリジナルタイムに戻ってきた。
僕はすぐに雪見ちゃんの席へ。
「雪見ちゃん聞きたいことがあるんだ。どうやら朝の喧嘩の原因は昨日の5時間目のレクでやった椅子取りゲームみたいなんだ」
「時巻くん。それって一体どういうこと?」
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