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謎路小学校カンニング事件⑥
しおりを挟む「この答えについて誰よりもいつもと違う違和感を感じていたクラスメイトがいる」
「それは誰なの?」
小春ちゃんは教室中を見渡しながらそう言った。
「それは天道才子ちゃん、きみだ」
僕の呼びかけに才子ちゃんは立ち上がった。
「よく気がついたわね名探偵さん」
才子ちゃんはこのカンニング疑惑についてずっと黙っていたが今日初めて口を開いた。
「いつも八坂くんの後ろの席にいる才子ちゃんが気がつかないはずはない。なんてったって、八坂くん。きみの机は他のクラスメイトの机より高いのだから!」
僕がそう言うと八坂くんは驚いた表情をして手を口に当てた。
「謎路小学校の机は4年生までが普通の高さの机で、5年生と6年生は少し高い机を使っているのはみんなも知っての通りだ。八坂くんは高学年の教室から自分の机と椅子を交換したんだ!」
スケットくんはそれを待ちかねたように30センチの定規を僕から受け取ると、八坂くんの机と才子ちゃんの机を測り始めた。
「モドル君!八坂くんと才子ちゃんの机の高さに7センチの差があるよ!」
「その7センチが不可能なカンニングを可能にさせたんだ!」
僕の見事な推理にクラスメイトは拍手を送った。
「認めない!だって筆箱にある小さな鏡じゃ、テスト用紙の答えを見ることなんてできないはずだ」
八坂くんがそう言うので、僕は実際に八坂くんの席に座り実験してみた。
「確かに……」
7センチの高さによって筆箱の鏡に後ろの席のテスト用紙を見ることはできた。だけど文字までは読み取れない。
ここまで何とか推理したのにあと一歩が足りないのか……。
「そうだろそうなんだよ!確かに机は交換した。それは認めるよ。でもカンニングはしてない。できっこないんだ!」
八坂くんのニタリとした笑顔がいつの間にか戻ってきた。
僕は考えを巡らせる。けれど何も出てこない。この小さな鏡でカンニングしたことは事実。でも文字が読み取れないのも事実だ。文字を大きくする方法があれば……。
「モドルくん。これだ」
スケットくんが僕の耳につぶやいた。
手には理科の授業で使っている虫眼鏡がある。そうだ。これだ。さすがはスケットくん。
「八坂くん!この虫眼鏡を使えばカンニング可能だ!これでのトリックは全て破られた!」
もう何度目かの決め台詞。八坂くんは力尽きたように膝から崩れ落ちて教室の床に座り込んだ。
その時ちょうど教室のドアが開いた。
「話は聞かせてもらったぞ。八坂くん!職員室に来なさい!」
担持先生がちょうど教室に入ってきた。どうやら僕の推理をドアの向こう側で聞いていたようだ。
担持先生と八坂くんが教室から出ていくと、拍手が巻き起こる。
「さすがだよモドルくん!」
「また助けられたよスケットくん!」
僕とスケットくんは握手をした。スケットくんのさすがのサポートがあったからなんとかカンニングを証明できた。
「さすが謎路町のホームズとワトソン!」
打野くんの声が響き渡る。それに続いて他のクラスメイトからも同じ声が。
その後、八坂くんはもちろん担持先生から怒られて1人だけ再テストになった。
どうやら再テストの結果は20点だったそうだ。
そして僕は八坂くんとのテストの点数の勝負に勝って、八坂くんからジュースを買ってもらったんだ。
こうして事件は幕を閉じた。
探偵、時巻モドルの事件簿に記録しよう。
『カンニング事件と7センチの誤差』
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