タイムリープ探偵、時巻モドルの事件簿

寝倉響

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謎路小学校カンニング時間④

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「こら!時巻くん!テスト中だぞ!席に座りなさい!」
 テスト中だというのに突然立ち上がった僕に担持先生はあたりまえだけど注意をする。
 
 いつもの僕だったらちゃんと担持先生の言うことを聞いて席に座るけど、この3分間は無敵の3分間。何をしてもこの時の記憶がクラスメイトや担持先生に残ることは無い。

 僕は八坂くんの席へ向かう。八坂くんはあっと驚いた顔を見せた。八坂くんは慌てて体を机に被せて筆箱を隠した。
 その時、タイムメガネの左クロックの秒針が真上に来てしまった。それは3分経過の合図。周りの景色はぐるぐると周り気がつけばオリジナルタイムに戻ってしまった。

「時巻くん?」
 小春ちゃんの声が聞こえる。
 僕の周りには変わらずクラスメイトが集まっていて、その真ん中には自信たっぷりな八坂くんが立っている。

「ごほん。八坂くんは天道才子ちゃんのテスト用紙をカンニングをしたんだ!」
 僕は八坂くんに指をさして決めゼリフ。

「な、なんで俺が!」
 明らかに動揺している八坂くん。八坂くんがこのまま素直にうんと認めてくれればいいのだが……。ドキドキしながら八坂くんの反応を待つ。

「なんか証拠でもあるのかよ!」
 八坂くんは僕に詰め寄ってきた。やっぱりダメだ。そう簡単に八坂くんはカンニングを認めてくれない。でも今の僕には証拠がない。
 さっきタイムリープで戻った3分間で怪しかったのはとっさに隠した筆箱だ。僕は立ち上がり斜め前の八坂くんの机の上を見てみる。

「あれは……」

 僕はふと閃いた。すぐにタイムメガネの右クロックを回して――

「時間よ巻きもどれ!タイムリープ!ゴー!」

 テスト中。9時4分に戻ってきた。やっぱり担持先生は教室内をぐるぐると回って目を光らせている。担持先生の目を盗んでカンニングするのはやっぱり難しそうだ。
 僕はすぐに八坂くんの筆箱を確認するために席を立った。
 そんな僕の後ろから担持先生が僕を注意する言葉が聞こえてくるがそんなことおかまいなしだ。

 八坂くんの筆箱を奪い取るように掴んだ。八坂くんは筆箱を取られた怒りよりも驚きの方が勝っているようだ。

「いつも使っている筆箱じゃない……」

 僕は記憶を思い返す。確か八坂くんはいつも青色の長方形の筆箱を使っていたはず。
 でも今僕の手にあるのはピンク色の長方形の筆箱。マグネットで開け閉めが出来るタイプの筆箱だ。

「おい!モドル!いきなりなにするんだよ!」

 八坂くんは突然怒る。怒った表情の中に焦っているような表情も感じられた。
 八坂くんは僕の方じゃなく筆箱を見ていた。この筆箱になにかあるのか……。
 僕はピンク色の筆箱を開いてみた。

「これか!」

 ピンク色の筆箱を開くと蓋の裏側には鏡が付いていた。
 小春ちゃんが使っていた筆箱を思い出す。八坂くんの持っている筆箱は小春ちゃんが持ってる筆箱と同じタイプのものだ。

 いつもと違う鏡付きの筆箱を使っている八坂くんの席のすぐ後ろは100点を取った天道才子ちゃん――。

「八坂くん。きみはこれを使ったんだね」

 僕はそうつぶやいた。八坂くんの顔には汗が浮かんでいる。
 僕の後ろに誰かの気配を感じて振り返る。

「と・き・ま・き」

 鬼のような顔に変わった担持先生が腰に手を当てて立っていた。いつもの優しい担持先生からは想像もつかない怒った顔だ。
 いつもは優しい担持先生も、テスト中に突然立ち上がり、さらに人の筆箱を奪い取る生徒がいたら鬼の顔になるのも当然だ。

「いいかげんに」

 担持先生の言葉はそこで止まった。3分間が経ったんだ。
 僕は担持先生からさらに怒られるのを回避できた。ホッとして気がつけばオリジナルタイムに戻ってきた。


「八坂くん。きみがカンニングした方法が分かったよ」
 僕はズバリそう言った。

「さすがは名探偵!」
 スケットくんのよっという声が聞こえてくる。
 八坂くんのおでこには汗が浮かんでいる。

「はあの筆箱を使ったんだね!」
 僕が八坂くんの机の上に置いてある筆箱を指さすと、スケットくんがその筆箱を僕の机の上に持ってきてくれた。

 タイムリープしていた3分間のように、ピンク色の筆箱を開いて蓋の裏についている鏡を八坂くんに見せた。

「八坂くんは昨日まで青の筆箱を使っていたはずだ。それなのに今日に限ってはこのピンク色の筆箱を使っている。答えは明白。この筆箱は女子がよく使うものだ。蓋を開けるとほら鏡が付いている」
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