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第一章
偵察任務
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どうにもこの世界に来てから妙な感覚が拭えない。
一つは名前。
俺の本名は織平笠斗のはずだ。なのに、偽名のはずのカノン・フォーゲルを皆に宣言した瞬間、やたらしっくり来た、というか何かがカチリとはまったような気がした。まるでその名が最初から本名だったみたいに……。俺だけじゃない、他の連中、常葉やティグレさんにも後から聞いてみたが皆、同意見だった。
キャラクターには名付けして初めて、キャラクターとして動き出す。
もしかしたら、俺達はあの瞬間から、この世界に生きる個体として動き出したのかもしれない。
(なんてシリアスになっても仕方ないカ)
何事にも情報は大切だ。
現実でもそうだし、『ワールドネイション』でも敵の情報を知っているかどうかでは、勝率は大きく異なった。戦場に立った後でも様々な形で情報収集を行い、それが勝敗を分ける。
だからこそ、俺達も偵察を行う事になった。
そうなると一番の候補はやはり俺だ。
紅、ユウナ、咲夜にマリア。
まだ新人を抜けたばかりだった四人には無理だ。上級職になったばかりの段階で遠方を詳しく調べられる手段なんて存在しない。
ティグレさんも無理。
もちろん、ティグレさんもきちんと探索系のスキルを有していたけれど遥かな遠距離対応型ではなかった、という事だ。まあ、当然なんだけど。むしろ、俺だってネタスキルだと思いつつ取ってた訳だし……そう、ネタスキルのはずだったんだ。
だって、そうだろう?
ゲームの、『ワールドネイション』の戦闘はあくまで一つの戦場が舞台だ。
現実世界の戦場ならそれこそ世界規模で繋がっているだろうが、ファンタジーを舞台にした戦場ならそこまで広くはない。近場を観れず、数百数千キロの彼方を観るスキルなんてネタ以外の何物でもないはずだった。まるで鳥みたいな視点を可能とするからこそ取ったそれが今役に立つとは……。
この世界へやって来て、俺と常葉の力は大きな変化を遂げた。
常葉の場合、時間さえかければ俺のネタスキルと同じような事が出来るだろう。
あいつの場合は、植物をレーダーサイトのように利用して、遠方を知る事が出来る。
問題は常葉の場合は時間がかかる事と、植物のない場所の事は分からないという事。
事前に、あいつが現地に行くなりして目印をつけているならともかく、広い広い草原の中の一点から自分の探している石が転がっている草を探さないといけないようなもの。いくら高速で検索可能でも時間がかかりすぎるだろう。
一方、俺の場合は風だ。
俺の種族、フレースヴェルグは北欧神話に曰く、世界のあらゆる風を起こす存在だという。
そのせいなのか、風に意識を載せて飛ばす事が出来る。
言ってみりゃ、常葉の探索と俺の探索は常葉が車にカメラ載せて走ってるのに対して、俺は空から無人機で空撮してる状態、かな?
(おっと、そんな事を考えてる間に見えてきたナ)
おそらくはアレが人の側の拠点。
大規模な城塞都市。
何万人もの人が暮らせる城壁に囲まれた都市。
魔法ってものがあるからなのか、俺達の世界の城塞都市より遥かに巨大で、一見の価値はある。
なにせ、こいつはこの巨大さでありながら、今正に絶賛使用中、大勢の人々が暮らしている都市だからだ。
(さて、でも今回は観光は後回しダ)
風に意識を向け、空から探ってみるが。
(まだ軍勢は到着しておらズ)
数千の軍勢、というのが多少オーバーにだったとしてもそれなりの規模の軍勢は来ているはず。数万人が暮らす規模の都市だとしても、二千三千の兵士がいればもっと兵士の姿が目立つはずだし、城内部も食料なんかの輸送の為の荷車なんかでひしめいているはずだ。どんな奴でも喰わずに先へと進む事は出来ない。そして、千の兵士の食料、水、天幕を運ぶ荷車や馬なんかの動物、その動物達が食う糧食なんかを全部合わせたら隠し通せるようなもんじゃない。
(これならまだ一月程度は時間の余裕があるナ)
極少数程度ならなんとでもなる。
まとまった数で動くならどうしても移動に時間がかかる。
領主の館を調べてみるのもいいかもしれないが、今回はそれは目的じゃない。
(こちらの態勢を整えるまでどうしても時間がかかル。その時間があるかどうかが第一の関門だったガ、何とかなりそうダ)
頷いて、意識を森へと飛ばす事にした。
……今度は道を憶える、という理屈をこねてゆっくりと。ああ、やっぱり。
(空はいイ)
一つは名前。
俺の本名は織平笠斗のはずだ。なのに、偽名のはずのカノン・フォーゲルを皆に宣言した瞬間、やたらしっくり来た、というか何かがカチリとはまったような気がした。まるでその名が最初から本名だったみたいに……。俺だけじゃない、他の連中、常葉やティグレさんにも後から聞いてみたが皆、同意見だった。
キャラクターには名付けして初めて、キャラクターとして動き出す。
もしかしたら、俺達はあの瞬間から、この世界に生きる個体として動き出したのかもしれない。
(なんてシリアスになっても仕方ないカ)
何事にも情報は大切だ。
現実でもそうだし、『ワールドネイション』でも敵の情報を知っているかどうかでは、勝率は大きく異なった。戦場に立った後でも様々な形で情報収集を行い、それが勝敗を分ける。
だからこそ、俺達も偵察を行う事になった。
そうなると一番の候補はやはり俺だ。
紅、ユウナ、咲夜にマリア。
まだ新人を抜けたばかりだった四人には無理だ。上級職になったばかりの段階で遠方を詳しく調べられる手段なんて存在しない。
ティグレさんも無理。
もちろん、ティグレさんもきちんと探索系のスキルを有していたけれど遥かな遠距離対応型ではなかった、という事だ。まあ、当然なんだけど。むしろ、俺だってネタスキルだと思いつつ取ってた訳だし……そう、ネタスキルのはずだったんだ。
だって、そうだろう?
ゲームの、『ワールドネイション』の戦闘はあくまで一つの戦場が舞台だ。
現実世界の戦場ならそれこそ世界規模で繋がっているだろうが、ファンタジーを舞台にした戦場ならそこまで広くはない。近場を観れず、数百数千キロの彼方を観るスキルなんてネタ以外の何物でもないはずだった。まるで鳥みたいな視点を可能とするからこそ取ったそれが今役に立つとは……。
この世界へやって来て、俺と常葉の力は大きな変化を遂げた。
常葉の場合、時間さえかければ俺のネタスキルと同じような事が出来るだろう。
あいつの場合は、植物をレーダーサイトのように利用して、遠方を知る事が出来る。
問題は常葉の場合は時間がかかる事と、植物のない場所の事は分からないという事。
事前に、あいつが現地に行くなりして目印をつけているならともかく、広い広い草原の中の一点から自分の探している石が転がっている草を探さないといけないようなもの。いくら高速で検索可能でも時間がかかりすぎるだろう。
一方、俺の場合は風だ。
俺の種族、フレースヴェルグは北欧神話に曰く、世界のあらゆる風を起こす存在だという。
そのせいなのか、風に意識を載せて飛ばす事が出来る。
言ってみりゃ、常葉の探索と俺の探索は常葉が車にカメラ載せて走ってるのに対して、俺は空から無人機で空撮してる状態、かな?
(おっと、そんな事を考えてる間に見えてきたナ)
おそらくはアレが人の側の拠点。
大規模な城塞都市。
何万人もの人が暮らせる城壁に囲まれた都市。
魔法ってものがあるからなのか、俺達の世界の城塞都市より遥かに巨大で、一見の価値はある。
なにせ、こいつはこの巨大さでありながら、今正に絶賛使用中、大勢の人々が暮らしている都市だからだ。
(さて、でも今回は観光は後回しダ)
風に意識を向け、空から探ってみるが。
(まだ軍勢は到着しておらズ)
数千の軍勢、というのが多少オーバーにだったとしてもそれなりの規模の軍勢は来ているはず。数万人が暮らす規模の都市だとしても、二千三千の兵士がいればもっと兵士の姿が目立つはずだし、城内部も食料なんかの輸送の為の荷車なんかでひしめいているはずだ。どんな奴でも喰わずに先へと進む事は出来ない。そして、千の兵士の食料、水、天幕を運ぶ荷車や馬なんかの動物、その動物達が食う糧食なんかを全部合わせたら隠し通せるようなもんじゃない。
(これならまだ一月程度は時間の余裕があるナ)
極少数程度ならなんとでもなる。
まとまった数で動くならどうしても移動に時間がかかる。
領主の館を調べてみるのもいいかもしれないが、今回はそれは目的じゃない。
(こちらの態勢を整えるまでどうしても時間がかかル。その時間があるかどうかが第一の関門だったガ、何とかなりそうダ)
頷いて、意識を森へと飛ばす事にした。
……今度は道を憶える、という理屈をこねてゆっくりと。ああ、やっぱり。
(空はいイ)
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