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「ひょっ拍子抜けしちゃっただけ。今まで力が入っていた分、疲れが出ただけよ」
「にしては、色気漂うようになったのは何故? 恋人でもできた?」
いいえ、おもちゃになりました―なんてことは人として決して口に出せない…!
恋人なんて甘いものじゃない。
彼が気の向くままに構って、遊ぶ。まさにおもちゃだ。
「…美容にかける時間ができただけ」
「ふぅん。エステにでも行ってるの?」
「うっうん」
彼の紹介で、彼の母親が経営するエステの上客になってしまっている。
…もちろん、タダで。VIPのカードで、好きなだけ利用できる。
涼子は疑わしげにジロジロ見ていたけれど、アタシが口を割らないことを感じ取ったのか、深く息を吐いた。
「…分かったわ。アンタが不幸になってなきゃ、わたしは良いのよ」
「涼子…」
「何かあったら、相談しなさいね。わたしは学校よりも、美咲の方が大事なんだから」
「…ありがと。ガマンできなくなったら、相談するわ」
「ええ、待ってる。じゃね」
最後に笑顔を浮かべ、涼子は出て行った。
心配…かけさせちゃったか。
でも親友の涼子にだって、相談できない。彼のことは。
言ったら下手すれば、涼子にまで迷惑をかけてしまうかもしれない。
ブルルルッ!
またケータイのバイブだ。
メールが来ている。見てみると…。
『授業つまんない。美咲に会いたい』
…彼からだった。
アタシは思わず周囲をキョロキョロと見回した。
どこかに盗聴器か、盗撮器があるのだろうか?
しかし見つからなかったので、とりあえずメールに視線を向ける。
『授業を真面目に受けなさい! 良い子になるんでしょう?』
と返信するとすぐに、
『ぶ~★ 分かりました。でも今夜、部屋に行っても良い?』
…切り替えしが早いなぁ。
しばらく考えた後、テスト期間中は会える時が少ないことを思い出した。
ストレスをためさせるよりは、小出しに発散させた方が身の為だ。
『分かった。じゃあ7時過ぎに』
『OK! 待っててね』
ケータイをしまうと、今夜の献立を考えた。
彼は偏食が多いから、それを食べさせる為に料理するのが大変だ。
「帰り、スーパー寄って行かなきゃ…」
今日はテスト問題の最終確認をしようと思っていたのに…。
暗い気持ちを押し隠し、残りの授業も無事終了。
仕事も6時には切り上げ、スーパーに寄ってマンションに帰宅―すると、
「あっ、おかえり」
…彼がソファーで寛いでいた。
どうやら家に一度は帰ったらしく、私服でテレビを見ている。
「あっ、家にあったお肉持ってきたから、今日はそれで夕飯作ってよ」
「お肉っ!?」
アタシは慌てて冷蔵庫を覗いた。
…確かにお肉はあった。正確にはお肉の塊が。
アタシの頭二つ分ぐらいはある、巨大なお肉が。
「…どう料理しろと?」
「ハンバーグが良い。目玉焼き乗っけてね」
こっちを見ず、返事をする彼が憎らしい…!
けれど文句を言い返せば、また何かしらイジワルをしてくる。
「…分かった。目玉焼きハンバーグね」
エプロンをかけ、手を洗ってすぐに調理をはじめる。
「あははっ」
彼はテレビを見て笑っている。
これじゃあまるで新婚だ。…絶対イヤだけど。
ご要望通りに目玉焼きハンバーグとスープとサラダを作って、テーブルに並べた。
「ご飯できたわよ」
「は~い」
すぐに彼はこっちに来て、イスに座った。
「いっただき…って、うっ★ 野菜サラダがある…」
「健康の為よ。残さず食べなさい」
「ヤダなぁ。野菜嫌いなの、知ってるクセに」
「健康に悪いわよ。それにアタシの作ったもの、食べられないの?」
ちょっと睨んで見ると、彼は縮こまり、少しずつサラダを食べ始めた。
「あっ、そうだ。補習のことなんだけどさ」
「ええ」
「にしては、色気漂うようになったのは何故? 恋人でもできた?」
いいえ、おもちゃになりました―なんてことは人として決して口に出せない…!
恋人なんて甘いものじゃない。
彼が気の向くままに構って、遊ぶ。まさにおもちゃだ。
「…美容にかける時間ができただけ」
「ふぅん。エステにでも行ってるの?」
「うっうん」
彼の紹介で、彼の母親が経営するエステの上客になってしまっている。
…もちろん、タダで。VIPのカードで、好きなだけ利用できる。
涼子は疑わしげにジロジロ見ていたけれど、アタシが口を割らないことを感じ取ったのか、深く息を吐いた。
「…分かったわ。アンタが不幸になってなきゃ、わたしは良いのよ」
「涼子…」
「何かあったら、相談しなさいね。わたしは学校よりも、美咲の方が大事なんだから」
「…ありがと。ガマンできなくなったら、相談するわ」
「ええ、待ってる。じゃね」
最後に笑顔を浮かべ、涼子は出て行った。
心配…かけさせちゃったか。
でも親友の涼子にだって、相談できない。彼のことは。
言ったら下手すれば、涼子にまで迷惑をかけてしまうかもしれない。
ブルルルッ!
またケータイのバイブだ。
メールが来ている。見てみると…。
『授業つまんない。美咲に会いたい』
…彼からだった。
アタシは思わず周囲をキョロキョロと見回した。
どこかに盗聴器か、盗撮器があるのだろうか?
しかし見つからなかったので、とりあえずメールに視線を向ける。
『授業を真面目に受けなさい! 良い子になるんでしょう?』
と返信するとすぐに、
『ぶ~★ 分かりました。でも今夜、部屋に行っても良い?』
…切り替えしが早いなぁ。
しばらく考えた後、テスト期間中は会える時が少ないことを思い出した。
ストレスをためさせるよりは、小出しに発散させた方が身の為だ。
『分かった。じゃあ7時過ぎに』
『OK! 待っててね』
ケータイをしまうと、今夜の献立を考えた。
彼は偏食が多いから、それを食べさせる為に料理するのが大変だ。
「帰り、スーパー寄って行かなきゃ…」
今日はテスト問題の最終確認をしようと思っていたのに…。
暗い気持ちを押し隠し、残りの授業も無事終了。
仕事も6時には切り上げ、スーパーに寄ってマンションに帰宅―すると、
「あっ、おかえり」
…彼がソファーで寛いでいた。
どうやら家に一度は帰ったらしく、私服でテレビを見ている。
「あっ、家にあったお肉持ってきたから、今日はそれで夕飯作ってよ」
「お肉っ!?」
アタシは慌てて冷蔵庫を覗いた。
…確かにお肉はあった。正確にはお肉の塊が。
アタシの頭二つ分ぐらいはある、巨大なお肉が。
「…どう料理しろと?」
「ハンバーグが良い。目玉焼き乗っけてね」
こっちを見ず、返事をする彼が憎らしい…!
けれど文句を言い返せば、また何かしらイジワルをしてくる。
「…分かった。目玉焼きハンバーグね」
エプロンをかけ、手を洗ってすぐに調理をはじめる。
「あははっ」
彼はテレビを見て笑っている。
これじゃあまるで新婚だ。…絶対イヤだけど。
ご要望通りに目玉焼きハンバーグとスープとサラダを作って、テーブルに並べた。
「ご飯できたわよ」
「は~い」
すぐに彼はこっちに来て、イスに座った。
「いっただき…って、うっ★ 野菜サラダがある…」
「健康の為よ。残さず食べなさい」
「ヤダなぁ。野菜嫌いなの、知ってるクセに」
「健康に悪いわよ。それにアタシの作ったもの、食べられないの?」
ちょっと睨んで見ると、彼は縮こまり、少しずつサラダを食べ始めた。
「あっ、そうだ。補習のことなんだけどさ」
「ええ」
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