桜の雪

hosimure

文字の大きさ
上 下
2 / 4

2

しおりを挟む
「じゃあ…よろしくね?」




「はい、よろしくお願いします」




差し出された彼女の手は、あたたかくて柔らかかった。




―その後、恋人としての付き合いが始まった。




恋人としてデートしたり、電話やメールをしたり。




彼女はとても人気のある人で、男子生徒からはふざけた様子ながらも本気でどつかれたことがあったり…。




何やかんやで、彼女と付き合って1年近く経過した。




楽しい時間はあっと言う間で、オレは先輩から図書委員の副委員長の座を譲られた。




3年になる先輩方は受験の為に、いったん身を引くからだ。




付き合ってみて知ったことだが、彼女は本当にキレイで可愛らしい。




…まあ恋人だから、夢中になっている自覚はあるけど。




だから不思議に思うこともある。




「先輩は…何でオレを選んだんです?」




「ん? 副委員長のこと?」




学校の帰り道、一緒に歩く彼女は1年前と変わらずキレイで可愛い。




「それもありますが…やっぱり恋人のこと。先輩、モテるでしょう? それこそオレという恋人ができた後にも告白されるぐらい」




「うっ! どこでその情報を…」




「入ってくるもんですよ。先輩、ウワサになりやすい人だから」




「ううっ! でっでもちゃんと断っているわよ! わたしにはあなたという恋人がいるからって!」




「『別れてからでもいい』、あるいは『二番手でも構わないから』とも言われているそうで」




「なっ何でそこまで知ってるの?」




「実は情報源、先輩のお仲間だったりしますから」




「アイツらぁ~!」




怒っていても、可愛い人。




オレはつないでいる手を少し強く握った。




「先輩、でもオレ、年下だからってワガママ言いません。受験勉強に専念したくなったら、言ってくださいね?」




「…あなたは年下だけど、わたしよりしっかりしているわね」




上目遣いに睨まれたって、怖くない。




「ええ、先輩に嫌われたくないですから」




「キライになるワケないでしょ!」




「でも不安ですよ。オレの方から先に、好きになったんですし」




「すっ好きになるのに、先も後も関係ないでしょ! あっ愛情で大事なのは、深さなんだから!」




「そうですね。オレは先輩に深く愛されていますしね」




「なっ!? あっあなたって人はー!」




ポカスカ叩かれるも、痛くない。




「んもうっ! …副委員長に任命したのは、あなたが年不相応にしっかりしているから! こっ恋人に選んだのは…」




真っ赤な顔で眉をしかめながら、彼女は言った。




「うっ運命かな?って思ったからよ」




「運命?」




「そっ。だって出会い方、ある意味フツーじゃなかったでしょう?」




「…まあそうですね」




天気が不安定な日に、普通の人は訪れないであろう山登りをして、出会ったのだから。




「出会い方もアレだけど…。次の日、同じ委員会で再会するのも、運命的でしょ? …しかも告白してくるんだから」




「告白は運命じゃないんですか?」




「…それだけは予想していなかったわ」




「ははっ」




「しかも一目惚れなんて…。逃げ出した女の子に言う言葉じゃないわよ」




「逃げられたんですか? やっぱり、アレは」




「ひっ人に見られると、マズイ現場だったから」




後から聞いた話だと、細かい打ち合わせにイヤ気がさして、ウソをついて委員会を抜け出したらしい。




なのに同じ学校の制服を着ているオレを見つけて、慌てて逃げ出したらしい。




だからオレがはじめて声をかけた時、知らぬフリをしたのだ。




「ウソはいけませんよ、先輩」




「わっ分かっているわよ! 十分に反省しました!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いつかまた、桜の木の下で

岡本梨紅
恋愛
私には、前世の記憶というものがある。それを思い出したのは、中学生の頃。 前世の時代はおそらく大正時代ごろ。その当時は体が弱かった私だけど、桜が大好きで、死期を悟った私は旦那様に連れて行ってもらって、『来世、でもまた、愛を誓いあってくれますか?』といって、そのまま亡くなるのだ。 前世を思い出してから桜の時期になると、この小さな神社にある樹齢何十年の桜の木のもとに通う。ただ、あの人が来るのを私は待ち続けているのだ。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

処理中です...