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「あのっ」
彼女に声をかけようとして顔を上げると、
「えっ? いない…」
彼女の姿は消えていた。
でも…確かに彼女とは会った記憶がある。
それに今のように、会話もした気が…。
一生懸命に思い出そうとして、ふと、あの事故現場に来ていた。
ここに来れば、思い出せそうな気がした。
10年前と比べて、大分ここも変わった。
それでも悲しみは変わらない。
生まれた時から、ずっと一緒だった。
大好きだった。
思い出すだけでも、悲しみと後悔で胸がいっぱいになる。
立ち止まって、涙を手で拭うと、車の音が聞こえた。
車は真っ直ぐにスピードをゆるめず、わたしに向かって来る。
10年前のあの日と同じように…!
しかしわたしは動けなかった。
今のわたしを動かしてくれるものなど、何も無かったからだ。
車の運転手が見えるようになった。
…アイツだった。
わたしの犬を轢き殺した、アイツっ!
ケータイで会話をしながら、運転をしている。
10年前は飲酒運転をしていた。
全然反省もしてないし、後悔もしてなかったのか。
急にわたしの頭は冷えた。
そして、真っ直ぐにアイツを見据えて、言った。
―殺せ。
わたしの影が、ぐにゃりと動いた。
影はよく見知った姿の形となり、車に駆け出した。
アイツの顔が、恐怖に歪み、ハンドルはわたしとは反対方向にきられ、そして…。
キキィッ…どかんっ!
壁に正面衝突した。
そしてその衝撃で、電柱が折れて、車の上に落ちた。
ガッシャーンッ!
車は見るも無残な姿になる。
影はわたしを飛び散る車の残がいから護るように、大きくなった。
アイツは死んだ。
―わたしの望んだとおりに。
わたしの足は、自然とあの神社に向かっていた。
そして思い出した。
わたしは死んだ犬の体を抱えて、神社に来たのだ。
犬が好きだった場所。
思い出の大切な場所を、血塗れのわたしは訪れた。
そして…彼女と出会った。
犬の骸を抱いて、神社の階段に座っていたところ、彼女はやって来て、わたしに声をかけてきた。
「どうしたの? …あら」
彼女はわたしと犬を見て、察したようだった。
あわれむように、犬の頭を撫でた。
「かわいそうに…。身勝手な人間のせいで…」
「…っと、ずっと一緒にいたのにっ…!」
ボロボロと涙がこぼれた。
悔しくて、悲しくて!
でも無力な自分が1番情けなかった!
彼女に声をかけようとして顔を上げると、
「えっ? いない…」
彼女の姿は消えていた。
でも…確かに彼女とは会った記憶がある。
それに今のように、会話もした気が…。
一生懸命に思い出そうとして、ふと、あの事故現場に来ていた。
ここに来れば、思い出せそうな気がした。
10年前と比べて、大分ここも変わった。
それでも悲しみは変わらない。
生まれた時から、ずっと一緒だった。
大好きだった。
思い出すだけでも、悲しみと後悔で胸がいっぱいになる。
立ち止まって、涙を手で拭うと、車の音が聞こえた。
車は真っ直ぐにスピードをゆるめず、わたしに向かって来る。
10年前のあの日と同じように…!
しかしわたしは動けなかった。
今のわたしを動かしてくれるものなど、何も無かったからだ。
車の運転手が見えるようになった。
…アイツだった。
わたしの犬を轢き殺した、アイツっ!
ケータイで会話をしながら、運転をしている。
10年前は飲酒運転をしていた。
全然反省もしてないし、後悔もしてなかったのか。
急にわたしの頭は冷えた。
そして、真っ直ぐにアイツを見据えて、言った。
―殺せ。
わたしの影が、ぐにゃりと動いた。
影はよく見知った姿の形となり、車に駆け出した。
アイツの顔が、恐怖に歪み、ハンドルはわたしとは反対方向にきられ、そして…。
キキィッ…どかんっ!
壁に正面衝突した。
そしてその衝撃で、電柱が折れて、車の上に落ちた。
ガッシャーンッ!
車は見るも無残な姿になる。
影はわたしを飛び散る車の残がいから護るように、大きくなった。
アイツは死んだ。
―わたしの望んだとおりに。
わたしの足は、自然とあの神社に向かっていた。
そして思い出した。
わたしは死んだ犬の体を抱えて、神社に来たのだ。
犬が好きだった場所。
思い出の大切な場所を、血塗れのわたしは訪れた。
そして…彼女と出会った。
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「どうしたの? …あら」
彼女はわたしと犬を見て、察したようだった。
あわれむように、犬の頭を撫でた。
「かわいそうに…。身勝手な人間のせいで…」
「…っと、ずっと一緒にいたのにっ…!」
ボロボロと涙がこぼれた。
悔しくて、悲しくて!
でも無力な自分が1番情けなかった!
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