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昼間/大学にて

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「ねぇねぇ、帰り、カラオケ行こーよ」
「おっ、良いね」
「あっ、わたしも行くぅ」
 そう言って手を上げると、周囲にいた友達がきょとんとした。
「えっ、ルカ。行けるの?」
「今日、バイトあるって言ってなかったっけ?」
「わたしのバイト、夜勤なんだ。だから昼間はへーキ」
 にっこり笑って手を振ると、今度は不安顔。
「え~。なら、寝た方が良いんじゃない」
「夜勤ってきっついよ。今から帰って寝たら?」
「大丈夫だって。明日は授業、午後からだし。ちょーどバイト代、入ったばっかだから奢るよ」
「えっ、ホント?」
「ラッキー。今日はルカの奢りね」
「はいはい」
 奢り、という言葉に気を良くした友人達と一緒に、大学の校舎を出る。
「ねぇねぇ、そう言えば聞いたぁ? 最近、ヘンな地下鉄が出るんだって」
「『地下鉄が出る』? ある、じゃなくて?」
「それがね、真夜中にいきなり地下鉄の入り口が出るんだって。それでうっかりそこの階段を下りて、地下に行くと、この世じゃない所へ行く地下鉄に出会っちゃうんだって」
「へぇ…。でも乗らなきゃ平気なんじゃない?」
「さぁ。アタシが聞いたのは、そういう所へ行くってことだけだから。最近さぁ、霧が多いじゃん? だからそういうウワサ話が出るんじゃないかなぁって」
「ああ、あるかもね。ちょっと前にも、ケータイの都市伝説はやってたし。でもいつの間にか消えていたよね」
「ごほっ!」
 何も口に含んでいないのに、思いっきりむせた。
「ごほっがほっ!」
「なぁに、ルカ。怖かった?」
「ケータイ電話のウワサ話も、嫌がってたもんね」
「いっいや、ちょっとノド渇いただけ。先にファミレスにでも行かない? そっちも奢るからさ」
「いや~ん。ルカ、太っ腹!」
「良いバイト、見つけたんだね」
「まっまあ、夜勤だからね。それに身内に紹介されたヤツだから特別なの」
「でも気を付けなよぉ。最近霧が多いせいで、変質者増えているみたいだしぃ」
「ヘンなウワサもあるからね。行く時とかタクシーでも使って行きなよ」
「うん、さんきゅっ。でも大丈夫、人気の多い所だから安心して」
 心から心配してくれる友人達に笑みを浮かべて見せる。
 ほんの少しの罪悪感と共に。 

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