春雪

hosimure

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春に降る雪

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わたしの住む地域では時々、春でも雪が降る。

それはほんの短い間のことだけど、嬉しく思える瞬間でもあった。

でも近年ではあまり降らず、さみしく思っていた。

高校生活も終わりに近付いてきて、わたしは別れの季節を迎えようとしていた。

…だからだろうか?

いつもは引っ込み思案のわたしは、決心した。

もし今年の春、雪が降ったら―彼に告白しよう、と。

彼とは高校一年の頃から、同じ図書委員だった。

好きな本の種類が似ていて、よく話をした。

時々だけど、2人だけで出かけたりもしていた。

お互い口には出さなかったけれど、多分…両想いなんだと思う。

彼もわたしも引っ込み思案なところがあるから、はっきりとしたことは言えないケド…。

でも、多分、そう!…だと思う。

…ううっ。自信が無い。

3年間も側にいて、恋人未満友達以上の関係は結構辛い。

でもハッキリしたかったけれど、万が一、ピリオドを打たれたらキツイ…。

そんな思いでズルズルと3年間過ごしてしまった。

けれどこの春、お互い別の進路に進んでしまう。

わたしは専門学校に。

彼は大学に。

そうなれば彼との交流も自然消滅しそうで、イヤだ。

だから決心した。

もし今年の春、雪が一瞬でも降ったら、彼に告白しようと。

降らなかったら…きっと縁はなかったんだと、諦めることも決意した。

運を天に任せる、と言うのもアレかもしれないけど、こうでもしなければ勇気が出ない。

高校の卒業式では、雪は降らなかった。

あとはお互いの入学式までが、勝負だ。

入学式の後に降っても、告白はしない。

それだけは心に決めていた。

なのに、いきなり彼から電話。

「花見に行かない? 屋台いっぱい出ているしさ」

「うっうん…」

本当は告白できるまで会わないつもりだったけど…。

…惚れた弱味というヤツだった。

「お待たせ!」

「ううん、今来たところ」

桜の咲く公園で、待ち合わせをしてしまった。

屋台を見ながら、公園の中を歩いた。

「入学式、何着てくの?」

「一応スーツ。親が用意してくれたから。そっちは?」

「わたしも。でもスーツって制服と似てて、卒業した気にならないわよね」

何気ない会話をしながら、公園の奥にある池まで来た。

2人並んで座り、ちょっと休みを取った。

空は…雪が降るというか、雨が降り出しそうだった。

風も心なしか湿っぽいし。

ううっ…。告白のシチュエーションとしては、最悪だ。

「何か天気悪いな。今日は早めに切り上げる?」

…事態はもう、最悪の一途をたどっている気がする。

もっもういっそのこと、ここで告白した方が良いのかな?

「あっあのねっ!」

「うん?」

うっ…!

彼の無邪気な笑顔が眩しい!

「わっわたし…」

弱気になる心を奮い立たせ、真っ直ぐに彼の眼を見つめた。

「あなたのことがっ…!」

「あっ、ちょっと待って」

急にストップをかけられ、わたしは固まった。

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