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彼と僕
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「糖分は疲れに良いって言うしね。このチョコケーキ、美味しい店から買って来たんだ。気に入ると良いケド」
「いっいただきます」
一口食べると、カカオの香りが口の中に広がった。甘さ控え目なたっぷりのクリームと、少し固めのスポンジが僕好みだった。
「美味しい…! スッゴク美味しいね」
「良かった。気に入ってくれたみたいだね」
「うん。こんなのはじめて食べた」
スポンジは少し固いけれど、クリームの量が多くて良い。それにカカオの匂いも、食欲をそそる。
さすが彼のオススメなだけはある。
いつもは食が細い僕も、出された料理は全て食べられた。
「ご馳走様。どれも本当に美味しかったよ」
「お粗末様」
食事が終わった後は、大きなテレビの前に移動してDVDを見た。僕が前から見たかったヤツで、嬉しかった。
DVDを見終わった後は、彼といろんなことを話した。彼は話題に豊富で、聞いててスゴク楽しかった。
そして時間はあっと言う間に過ぎていった。
「あっ、もうこんな時間…」
すでに夕日は消えかけていた。
「ゴメン、長居しすぎたね。僕、帰るから」
立ち上がり、カバンを掴んだ時だった。
「―帰るなよ」
いきなり後ろから抱き締められた。
「えっ…えっ!」
背中に感じる彼のぬくもりに、心臓が大きく高鳴った。
「泊まっていきなよ。どうせ夏休みだし、予定無いんだろう?」
「なっ無いけど、いいよ。帰るから」
何とか彼の腕から逃げようと暴れるけれど、全く通じなかった。
「ああ、オレの部屋、まだ見せてなかったよな? こっち」
強く二の腕を掴まれ、僕は引きずられるように二階に上がった。
二階の奥の部屋が、彼の私室だった。
電気を付けると、黒い家具が眼につく。余計な物は何もなくて、寂しい部屋だと思った。
「ここがオレの部屋。まあ寝るぐらいしか、使ってないけど」
部屋の中に入ると、彼は僕をベッドの上に投げつけた。
「いたっ」
大きく、広いベッドも黒い。
ぎしっと音が鳴った。彼が僕の上に覆い被さった。
「なっ何っ…」
身の危険を感じて逃げようとしたけれど、両肩を掴まれ、ベッドに押し付けられた。
彼の笑みが、獲物を喰らおうとしている野生の表情になっている。眼に鋭さが宿っていた。
「永河ってさ、オレのこと、嫌い?」
「へっ? きっ嫌いじゃないけど…」
「じゃあ、好き?」
「好きって言えば…好き、だけど」
でもそれはあくまでも友達として、だ。
彼の言うのは、何だか違う気がする。
「なら、同意ってことで」
彼の顔が間近に迫ってきた。
「ちょっ、んっ…!」
唇は躊躇いも無く合わせられた。
何度も弾むように口付けられたかと思うと、いきなり深いものに変わる。離れたと思ったら、今度はべろっと舐められた。
「ふっ…!」
背筋にゾクゾクッと痺れが走った。
息が上手く吸えなくて、頭の中がぼんやりしてくる。
「―良い表情だ。無いとは思うけど、一応聞いとくね。まだ経験ないよね?」
「なっ何の…?」
「セックス。まあキスは大目に見よう」
大目にって何をっ?
「無いよ! あるワケないだろう!」
カッと頭に血が上った。
彼みたいにキレイな顔と声で言われると、余計に卑猥に聞こえる。
「良かった。じゃあオレがはじめてってことになるな」
「それってどういう…」
「それはこれからだ」
彼はニヤッと笑うと、唇を舐めた。
「やっ止めてよ!」
「暴れんなよ。傷付けたくないんだからさ」
「ヤダッて!」
渾身の力で抗うも、彼は僕の服を全部脱がしてしまう。
貧相な体を見られるのがイヤで蹲るも、両手首を掴まれる。
「いっいただきます」
一口食べると、カカオの香りが口の中に広がった。甘さ控え目なたっぷりのクリームと、少し固めのスポンジが僕好みだった。
「美味しい…! スッゴク美味しいね」
「良かった。気に入ってくれたみたいだね」
「うん。こんなのはじめて食べた」
スポンジは少し固いけれど、クリームの量が多くて良い。それにカカオの匂いも、食欲をそそる。
さすが彼のオススメなだけはある。
いつもは食が細い僕も、出された料理は全て食べられた。
「ご馳走様。どれも本当に美味しかったよ」
「お粗末様」
食事が終わった後は、大きなテレビの前に移動してDVDを見た。僕が前から見たかったヤツで、嬉しかった。
DVDを見終わった後は、彼といろんなことを話した。彼は話題に豊富で、聞いててスゴク楽しかった。
そして時間はあっと言う間に過ぎていった。
「あっ、もうこんな時間…」
すでに夕日は消えかけていた。
「ゴメン、長居しすぎたね。僕、帰るから」
立ち上がり、カバンを掴んだ時だった。
「―帰るなよ」
いきなり後ろから抱き締められた。
「えっ…えっ!」
背中に感じる彼のぬくもりに、心臓が大きく高鳴った。
「泊まっていきなよ。どうせ夏休みだし、予定無いんだろう?」
「なっ無いけど、いいよ。帰るから」
何とか彼の腕から逃げようと暴れるけれど、全く通じなかった。
「ああ、オレの部屋、まだ見せてなかったよな? こっち」
強く二の腕を掴まれ、僕は引きずられるように二階に上がった。
二階の奥の部屋が、彼の私室だった。
電気を付けると、黒い家具が眼につく。余計な物は何もなくて、寂しい部屋だと思った。
「ここがオレの部屋。まあ寝るぐらいしか、使ってないけど」
部屋の中に入ると、彼は僕をベッドの上に投げつけた。
「いたっ」
大きく、広いベッドも黒い。
ぎしっと音が鳴った。彼が僕の上に覆い被さった。
「なっ何っ…」
身の危険を感じて逃げようとしたけれど、両肩を掴まれ、ベッドに押し付けられた。
彼の笑みが、獲物を喰らおうとしている野生の表情になっている。眼に鋭さが宿っていた。
「永河ってさ、オレのこと、嫌い?」
「へっ? きっ嫌いじゃないけど…」
「じゃあ、好き?」
「好きって言えば…好き、だけど」
でもそれはあくまでも友達として、だ。
彼の言うのは、何だか違う気がする。
「なら、同意ってことで」
彼の顔が間近に迫ってきた。
「ちょっ、んっ…!」
唇は躊躇いも無く合わせられた。
何度も弾むように口付けられたかと思うと、いきなり深いものに変わる。離れたと思ったら、今度はべろっと舐められた。
「ふっ…!」
背筋にゾクゾクッと痺れが走った。
息が上手く吸えなくて、頭の中がぼんやりしてくる。
「―良い表情だ。無いとは思うけど、一応聞いとくね。まだ経験ないよね?」
「なっ何の…?」
「セックス。まあキスは大目に見よう」
大目にって何をっ?
「無いよ! あるワケないだろう!」
カッと頭に血が上った。
彼みたいにキレイな顔と声で言われると、余計に卑猥に聞こえる。
「良かった。じゃあオレがはじめてってことになるな」
「それってどういう…」
「それはこれからだ」
彼はニヤッと笑うと、唇を舐めた。
「やっ止めてよ!」
「暴れんなよ。傷付けたくないんだからさ」
「ヤダッて!」
渾身の力で抗うも、彼は僕の服を全部脱がしてしまう。
貧相な体を見られるのがイヤで蹲るも、両手首を掴まれる。
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