キミがいる

hosimure

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「うん…」

彼には感謝の気持ちと、申し訳ない気持ちがある。

でもまだ好意に甘えていたいと思う気持ちが強い。

だから…いずれ彼がボクから離れる時は、邪魔にならないように潔く引く覚悟はしていた。

人気者の彼は大学や社会に出れば、あっと言う間に多くの人に囲まれるだろうから…。

「なあ、今度の休み、映画見に行かないか?」

「いいよ」

彼は雑誌を広げ、ボクに見せた。

いつも2人で出かける時は、彼から誘ってくれる。

「この映画、クラスの連中から聞いたんだけど、かなりおもしろいらしいぜ。何回でも見たくなるって」

「へぇ、おもしろそうだね」

「ああ、だから見に行こうぜ」

彼は気を使ってか、遊びに行く時はボク1人しか誘わない。

ほとんどの時間をボクと過ごしてくれるので、一度聞いたことがある。

「あの、さ。ボクと2人だけで、つまらなくない? 他の友達から誘われてたりしたら、そっちに行ってもいいからね」

「なぁに言ってんだよ。オレはお前と2人で遊んだ方が、楽しいんだよ。だから気にすんなって!」

満面の笑顔でそう言われたので、ボクは二度と同じことを言わなかった。 

優しくて頼りがいのある親友。

…だけど頼りっぱなしじゃダメだ。

せめてイジメの方だけでも、ボクが何とかしなきゃ…!

彼はイジメのことについて、怒りを覚えている。

何かされると、ボクより怒って見せる。

だけどボクを励ますことを優先にしてくれる。

だからイジメに関しては、あんまり関心を持っていない。

まあ何ともできない状態なので、関心を持ってもしょうがないんだけど…。

でも大学に進学することを考えたら、このままイジメられるのもダメだろう。

…だから思った。

ちゃんと彼の側にいられる為にも、せめて犯人に一矢報いたい。

ボクは考えた。

犯人をせめて断定できる罠を。

今度はボク自身から、打って出る。

ボクは誰にも内緒で、計画を立てた。

彼と一緒にいられる為に。

そしてボクを3年間も傷付けたヤツに、一度でいいからダメージを与えたかった。

ただ、それだけだったのに…。 

<パリンッ>

ガラスの割れた音は、意外に軽かった。

透明で薄いガラスの破片は、それでも傷を付けるには充分だろう。

ボクは今まで受けたイジメの内容を、ノートにまとめて書いていた。

その中で多かったのは、ボクの私物の紛失だ。

大して高い物は取られていない。

それこそペンやノートといったものだ。

だからノートに罠を仕掛けておく。

ボクが割ったガラスは、とても薄い。

ヤスリを使って、ガラスの破片を削る。

すると切れ味がとてもいい、透明の凶器の出来上がりだ。

ボクはそれを、ノートに仕込んだ。

普段そのノートは使わない。

ただ机の中に入れておくだけ。

ボクの名前とクラスを書いて、放置しておく。

犯人は絶対、このノートを盗むだろう。

ただ触れただけでは、罠には引っ掛からない。

ちょっとした動きをすれば、罠は発動するだろう。

それはまあ、一種の賭けとも言えなくはない。

だけど今まで盗まれていた物は、決して後から見つかることはなかった。

ゴミ箱を探しても、至る所を探しても、見つからなかった。

外で捨てられた可能性もあるだろうけど、犯人が持っている可能性だってある。

ボクは後者に賭ける。 
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