現代版 光源氏物語

hosimure

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「ええっ!?」

「実はもう部屋を予約してあるんだ。1番良い部屋を取ったからな」

「嬉しくありませんっ! と言うかわたしの気持は!?」

「NOなわけないだろう。キスだって嫌がらなかっただろう」

「そっ…」

それを言われると…。

「だからお前は口で言うより、体で実践した方が良いんだって」

「せっセクハラー! セクハラ上司!」

「夫婦の間じゃ、セクハラなんて言葉は通用しないぞ」

「勝手に話を進めないでください!」

暴れるも体格差や男女の力の差で、彼はびくともしない!

「相変わらず威勢が良いな。まっ、俺の嫁になる女ならこうでなきゃ」

「ちょっ…この、セクハラ大魔神ー!」

わたしの叫びは虚しく、誰もいない海岸に響き渡った…。



―それから一ヵ月後…。

「ありえない…」

白無垢姿にさせられたわたしは、呆然とイスに座っていた。

大きな神社を貸し切り、もうすぐ結婚式が始まる…始まってしまう!

どうする!? 逃げるなら、今かもしれない!

「準備は済んだか?」

…遅かった。

がっくりと項垂れるわたしの目の前に、夫となる男が立った。

「おー、キレイだな。ウエディングドレス姿も楽しみだ」

……ちなみに今日が和式の結婚式で、明日が洋式の結婚式、つまり教会での結婚式だ。

その後、披露宴。目まぐるしくスケジュールは詰められてしまった。

何せ呼ぶ関係者が多過ぎる。結婚式も2回しなければならないほどに…。

普通の女性なら泣いて喜ぶかもしれない。

玉の輿で、しかも白無垢とウエディングドレスの両方を着れるのだから。

でもわたしは切れそうだった。

「…社長、本当に結婚するんですか?」

出会って半年も経っていないのに電撃結婚なんて…春には予想もしていなかった。

「当たり前だろう。ジーさんも喜んで来ているんだぞ」

元課長は仲人として招待している。…おのれタヌキジジイめ。

さすがは社長の父親の親友、喰えない人だ。

「今日から源氏ゆかりだな」

「悪夢です…」

「いい加減、慣れろって」

「諦めろ、ではなく?」

あくまでも不機嫌に言い返すわたしを、旦那様はおもしろうそうにニヤニヤして見ている。

「お前は慣れた方が良い。順応力が高いから、俺好みの女に仕立てやすい」

「なに光源氏みたいなこと、考えているんですか?」

「男の夢、だろう?」

「イヤな夢ですね!」

「まあそう言うな」

わたしの両肩に手を置き、視線を合わせる。

「これからはずっと、俺に付き合ってもらうんだからな」

「…ホント、悪夢のような日々になりそうですね」

「そんなことないさ。今と大して変わらない。変わらないと思っている間に、俺がいなくちゃダメなようになる」

確信に満ちた両目に見つめられると、何も言えなくなってしまう…。

もしかして、もうこの男にしつけられているんだろうか?

「一生お前を放さない。俺から離れられないようにしてやる」

「恐ろしい人…」

「そこがまた、たまらないだろう?」

自信に満ちた声に、今度は反論できなくなってしまう。

ああ、わたしはもう…。

「愛してるぜ、ゆかり」

甘い声でささやき、近付いてくる唇を黙って受け入れる。

唇を通して、軽い痺れが全身に満ちる。

…やっぱりわたしは、

もう、

彼の虜になってしまっている。

自信家で、プライドが高く、オレ様で、身勝手なこの男を、愛してしまっている。

「覚悟しとけ。オレのしつけは厳しいからな」

「…知っていますよ。あなたのことは、全部、分かっていますから」

わたしは両手を伸ばし、彼の背に腕を回した。

「これから…教えてくださいね? わたしの知らないあなたのことを、全部」

「ああ、オレ色に染めてやるよ」

耳元で囁かれた言葉は、まるで悪魔の囁きのように甘い…。



【END】
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感想 1

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みんなの感想(1件)

johndo
2019.06.09 johndo

読んでいる間中、によによしちゃうくらい、よかったです!
嫌な人が全然出てこなくて、安心設計で最初から最後まで楽しく読めました。
ステキな作品に出会えて、ありがとうございます。

解除

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