現代版 光源氏物語

hosimure

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2人同時にふき出すも、ちょっと気になっていた。

どことなく…社長の雰囲気が固いことを。もしかして疲れた体をムリしているんじゃないだろうか?

わたしを喜ばせる為に…。海産物が好物なこと、知っているから。

「…社長、何か疲れていません?」

「いや、平気だ。それより俺の呼び方、休日ぐらいはやめてくれ」

「まあ…休日ではおかしいですね。では源氏さんで良いですか?」

「どうせなら下の名前の方が良いな」

「光さん、ですか? …まあ良いですけど」

社長、と呼ぶ方がしっくりくるのだが、休日に『社長』呼ばわりされるのは好きじゃないんだろう。

その後、談笑しながらドライブは続き、目的地の海まで来た。

「わぁっ…! キレイな所ですね!」

小さな海岸だが、とてもキレイな所だった。

透き通るような青い海、白い砂浜。それこそテレビか雑誌でしか見たことのない光景が、わたしの目の前に広がっていた。

「俺の気に入っている場所なんだ。ゆかりを連れてきたいと思ってた」

「ありがとうございます! とっても嬉しいです!」

満面の笑顔で言うと、彼も微笑んでくれた。

2人で手を繋ぎながら、ほとんど人のいない砂浜を歩いた。

そしてホテルで約束のバーベキューをした。

お腹いっぱいになったら、ホテルの庭で昼寝をした。

そうしているうちに、いつの間にか夕暮れ。

会社は明日も休みだけど、あんまり夜遅いのも彼に悪い気がした。

やっぱり今日の彼はどこかおかしい。元気なフリをしているけれど、何かを思い悩んでいる。

「光さん、そろそろ帰りましょうか? 今日は十分に楽しめましたし、夜はゆっくり休みましょうよ」

夕暮れの散歩をしながら、わたしは笑顔で彼に言った。

「…帰るのか?」

「泊まるんですか? あっ、わたしだったら一人でも帰れますから…」

「いや、そうじゃなくて…」

彼らしくもなく、口ごもっている。

「ゆかり、お前、俺のことどう思っているんだ?」

「頼りになる兄的存在です」

わたしがアッサリ言うと、彼は手で目を覆った。

「…やっぱりそう思っているのか」

「ええ。わたしにいろんなことを教えてくれましたし、いろんな世界を教えてくれました。妹のように感じてくださっているなら、嬉しいです」

わたしの今の正直な気持ちを打ち明けた。

以前よりも生きていることが楽しく感じる。これは紛れもなく、彼のおかげだから。

「あの、な。俺はお前のことを、最初は妹のように思っていたさ。13も歳が離れているしな」

「はあ…」

「でも今は、1人の女として見ている」

「えっ?」

彼は切ない眼でわたしを見て、両手を掴んできた。

「だから結婚してほしい」

「へっ? えっと…いきなり過ぎません? わたし、まだ秘書になってから三ヶ月も経っていないんですよ?」

「気付いたのが早かっただけだ。遅かれ早かれ、俺はお前に告白するつもりだったしな」


普段は自信に満ちた彼の表情が、今は不安げになっている。

思わずわたしの心も揺れる。

「俺はゆかり、お前のことを愛してる。だからずっと俺の側にいてほしい。これからプライベートでも、ビジネスでも、ずっと俺の側にいろ」

そう言ってわたしの顔を優しく手で包み込み…触れるだけの優しいキスをしてきた。

夕日に照らされる海岸で、キスをしている…。まるでドラマのようなシチュエーション。

心臓がうるさいくらいに高鳴り、顔が夕日に負けないぐらいに赤くなる。

「あっあの、わたし…」

離れた唇の隙を狙って声を出した。このままでは彼にのみ込まれそうだったから…。

「ん?」

「きっ気持ちはとても嬉しいんですけど、わたしの気持ちの方がちょっと追い付かなくて…」

「なら、状況に応じて付いてこれるな?」

「はっ?」

いきなりいつもの自信に満ちた声に驚いて、顔を上げた。

すると彼はニヤッと悪魔の笑顔を浮かべていた!

「来月、結婚しよう。無論、式はちゃんと挙げる。社員全員を呼んでな」

「はあっ!?」

「お前、口でグチグチ言う割には、状況の対応力が凄まじすぎる。何だかんだと秘書課にはもう慣れただろう?」

「そっそれはお仕事ですから…」

「いや、元からの性格だ。だからお前を愛する俺が側にいれば、自然と俺を1人の男として愛するようになるさ」

「どういう理論ですかぁ!」

「まっ、実践してみれば分かるさ。とりあえず、これから1ヶ月は式の準備で忙しくなるから、残業を覚悟しろよ。秘書としての仕事も忙しくなるからな」

「労働基準法に違反しますよ!」

「その分、褒美はたんまりとやるよ」

そう言うと、いきなりわたしを抱き上げた!

「きゃあっ!」

「とりあえず、ホテルの部屋に行こう」
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