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道化師
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女として生まれて17年間、わたしは真面目に生きてきた。
真面目なのが1番。
おかげで友人も多いし、両親や先生方の信頼も厚い。
勉強だって、スポーツだって得意になれる。
ヘタに目立ったって、良いことなんてない。
その性格のせいか、何故かピエロが大嫌いだった。
キッカケは本でピエロの存在を知ってから。
ストーリーはよく覚えていないけれど、笑われるだけの存在だというところに、嫌悪を覚えた。
それからはテレビで見るのもダメ。
言葉として見たり聞いたりするのもダメになった。
なのに…ここ最近、私の住む街ではピエロのウワサが流れている。
深夜遅くになると、ピエロが街の中に現れる。
陽気な歌を歌いながら。
…ところがそのピエロを見た者は、殺されるらしい。
ピエロは草刈鎌を両手に持っており、見た者を襲い掛かるという。
その話を警察に勤めている父から聞いた時、全身に悪寒が走った。
薄気味悪いっ…!
しかし警察がいくら巡回しても、ピエロは見つからない。
とび抜けた運動神経を持っているらしく、見かけても素早い動きに誰も追いつけない。
物騒なことが続く中、街にはサーカス団が訪れた。
あまりのタイミングのよさに、警察は目をつけた。
ところがそのサーカス団には、ピエロという存在はいなかった。
団員達もいないことを説明し、ここに来る前の地域にも確認は取れたらしい。
なのでサーカス団は、1ヵ月この街で営業する許可を得た。
元々娯楽の少ない街だったので、サーカス団はあっという間に人気が出た。
でもわたしはキライ…というか、苦手だった。
ピエロがいなくても、サーカスという存在も何となく…。
だけど不思議なことも起こった。
ピエロが発見されなくなったのだ。
安心できる反面、サーカス団が怪しくなった。
やっぱりピエロとサーカスという存在は、つながっているのだろうか?
モヤモヤした気分が、心を占める。
そんなある日。
父が気分転換に、家族でサーカスを見に行こうと言い出した。
最近ピエロが現れないので、ほっとしたのだろう。
でもわたしはイヤだと言えなかった。
父のことを尊敬していたし、父がわたしを大切に思っているのを知っているからだ。
しぶしぶ見に行った。
サーカスは人気の理由が分かるほど、素晴らしい技術を披露してくれた。
けれど…わたしの心は晴れない。
やがて若い青年が、最後の挨拶に出てきた。
彼は団長らしい。
もうすぐ一ヶ月が終わることを、心寂しいと言っていた。
だけど…。
「それでも新たな団員を迎えられそうなので、とても嬉しいです」
と、笑顔で言った。
その途端、わたしの体にかつて無いほどの戦慄が走り抜けた。
まるで電気を浴びたような衝撃で、わたしは息をすることを忘れてしまった。
そのせいか、その夜見た夢は、悪夢だった。
深夜、寝静まった街中を、一人のピエロが歌いながら歩いている。
―両手に鎌を持ちながら。
孤独なピエロは陽気に歌う。
しかし、サーカス団近くの川原に来た時、様子が一変した。
真っ白顔には、笑顔の化粧がされていた。
けれどその体からは、異様な殺気が出始めた。
何故なら、ピエロの目の前に、昼間見たサーカス団員達がいたからだ。
「今晩は、ピエロ」
団長が笑顔で話しかけた。
真面目なのが1番。
おかげで友人も多いし、両親や先生方の信頼も厚い。
勉強だって、スポーツだって得意になれる。
ヘタに目立ったって、良いことなんてない。
その性格のせいか、何故かピエロが大嫌いだった。
キッカケは本でピエロの存在を知ってから。
ストーリーはよく覚えていないけれど、笑われるだけの存在だというところに、嫌悪を覚えた。
それからはテレビで見るのもダメ。
言葉として見たり聞いたりするのもダメになった。
なのに…ここ最近、私の住む街ではピエロのウワサが流れている。
深夜遅くになると、ピエロが街の中に現れる。
陽気な歌を歌いながら。
…ところがそのピエロを見た者は、殺されるらしい。
ピエロは草刈鎌を両手に持っており、見た者を襲い掛かるという。
その話を警察に勤めている父から聞いた時、全身に悪寒が走った。
薄気味悪いっ…!
しかし警察がいくら巡回しても、ピエロは見つからない。
とび抜けた運動神経を持っているらしく、見かけても素早い動きに誰も追いつけない。
物騒なことが続く中、街にはサーカス団が訪れた。
あまりのタイミングのよさに、警察は目をつけた。
ところがそのサーカス団には、ピエロという存在はいなかった。
団員達もいないことを説明し、ここに来る前の地域にも確認は取れたらしい。
なのでサーカス団は、1ヵ月この街で営業する許可を得た。
元々娯楽の少ない街だったので、サーカス団はあっという間に人気が出た。
でもわたしはキライ…というか、苦手だった。
ピエロがいなくても、サーカスという存在も何となく…。
だけど不思議なことも起こった。
ピエロが発見されなくなったのだ。
安心できる反面、サーカス団が怪しくなった。
やっぱりピエロとサーカスという存在は、つながっているのだろうか?
モヤモヤした気分が、心を占める。
そんなある日。
父が気分転換に、家族でサーカスを見に行こうと言い出した。
最近ピエロが現れないので、ほっとしたのだろう。
でもわたしはイヤだと言えなかった。
父のことを尊敬していたし、父がわたしを大切に思っているのを知っているからだ。
しぶしぶ見に行った。
サーカスは人気の理由が分かるほど、素晴らしい技術を披露してくれた。
けれど…わたしの心は晴れない。
やがて若い青年が、最後の挨拶に出てきた。
彼は団長らしい。
もうすぐ一ヶ月が終わることを、心寂しいと言っていた。
だけど…。
「それでも新たな団員を迎えられそうなので、とても嬉しいです」
と、笑顔で言った。
その途端、わたしの体にかつて無いほどの戦慄が走り抜けた。
まるで電気を浴びたような衝撃で、わたしは息をすることを忘れてしまった。
そのせいか、その夜見た夢は、悪夢だった。
深夜、寝静まった街中を、一人のピエロが歌いながら歩いている。
―両手に鎌を持ちながら。
孤独なピエロは陽気に歌う。
しかし、サーカス団近くの川原に来た時、様子が一変した。
真っ白顔には、笑顔の化粧がされていた。
けれどその体からは、異様な殺気が出始めた。
何故なら、ピエロの目の前に、昼間見たサーカス団員達がいたからだ。
「今晩は、ピエロ」
団長が笑顔で話しかけた。
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