光輪学院シリーズ・依琉の微笑

hosimure

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「従兄ってたくさんいますよ」

「ああ、確か名前は…」

そこで言われた名前で、依琉は思い出した。

父方の従兄で、兄や姉と同じく自分を疎ましく思っている親族の一人だった。

「確か大学二年生でしたね。それで婚約とは気が早い」

「何でもベタ惚れらしい。軟派なあやつが珍しいことだ」

困り顔で肩を竦める祖父の姿を見て、苦笑した。

その従兄は見た目はいわゆるチャラ男。

そして頭の中身は見た目と同じく、軽かった。

学校も私立で融通がきく、幼稚園から大学院までのエスカレータ式の学校にしか入れなかったぐらいだ。

学校も真面目に行かず、進級の時には何度も親が呼び出されたらしい。

女性によく手を出すことでも有名で、下手すれば今頃刑務所行きとなるのを、ご両親が必死で抑えているらしい。

「それで明日にでもこの家に来て、ワシに婚約の許しを得たいらしい」

依琉の一族は当主の許しがなければ、結婚すらできない。

厳しいようだが、全ては千里眼という能力を守り・受け継がせる為だった。

「はあ。ずいぶん展開が早いんですね」

「まあな。とりあえず、あやつが改心しているかどうかで決めようと思っておる。その席には依琉、お前も同席しろ」

「はいはい。分かりましたよ」

時期当主として、依琉のやることは多い。

それでも祖父からは、部活動を優先にするよう言われていた。

「そう言えば、夏休みは部活ないのか?」

「ありますよ。部長が合宿を行うって言ってましたから」

「そうか。使いたい別荘やホテル、旅館があれば遠慮なく言うといい。ワシの頃も、家の旅館や別荘を使ったからな」

「ええ。でも雛も別荘やホテル持ちですからね。どうなるかは部長次第ですけど」

依琉も金持ちだが、雛も負けてはいない。

おかげで今のオカルト研究部は例年にないぐらい裕福だ。

それでも気苦労しそうなウンザリ顔の神無月と九曜、そして楽しそうにはしゃぐ榊や雛の顔を思い浮かべると、依琉の顔には自然と笑みが浮かんだ。

―だがその笑みも、翌日、従兄の姿を見ると固まった。

チャラ男から、真面目な男性へと変貌していたのだ。

一瞬別人かとも思ったが、どうやら本人らしい。

しっかりとスーツを着込み、茶髪も黒く染め、セットしてきた。

ピアスや指輪などアクセサリー品は一切付けず、メガネしかかけてこなかった。

そのメガネもいつもなら、コンタクトレンズを装着していたはずなのだが…。

両親を脇にはさみ、従兄は深々と祖父と依琉に頭を下げた。

これまでの悪行を詫び、今後は心を入れ直すので婚約することを許して欲しいと、真剣な表情で言った。


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