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依琉の千里眼は、時折血筋の者に現れていた。
しかし神無月の実家のように、無料奉仕をすることはなく、私欲で使っていた。
その結果、依琉の家は実業家として成功していた。
神無月の家とは、同じような能力の受け継ぎ方だが、力の使い方について真逆な為、あまり仲は良くなかった。
それは周囲の態度も同じだった。
神無月達は救いを求める人々に、その力を揮う。
しかし依琉達は黙って私欲の為に使う為に、あまり良い印象を持たれていなかった。
特に能力を職業としてきた神無月と違い、依琉の家はあくまでも沈黙に意味がある。
それゆえに時折生まれる千里眼の持ち主は、家を継ぐ者として大切に扱われる反面、気味悪がれてもいた。
依琉の両親はお互いに血縁者だが、能力は全くと言って良いほど無かった。
なので依琉が能力を発揮した時、両親はソレを激しく拒絶した。
依琉の他に兄と姉、そして妹がいるものの、全員千里眼とは無縁だった。
身内から気味悪がれていたある日、祖父が依琉の能力を聞きつけ、跡継ぎとしてこの家に引き取ってくれた。
―だが、依琉は今だからこそ思う。
両親や家族は自分の能力を否定したのは、こうなることを恐れたのかもしれないと。
祖父の跡を継ぐということは、家の全てを継ぐということ。
それすなわち、当主となることだ。
そうなれば敵が多く待ち構える。主に、身内が。
そんな戦場に向かわせない為に、あえて家族は能力を否定していたのかもしれない。
…事実、依琉が祖父の手で連れていかれた時、母親は最後まで泣いて能力を否定していた。
―わたしの子供は普通だから。変な力など持っていない―と。
しかし言葉は聞き入れられず、あれからもう7年の月日が経っていた。
依琉はそれから一度たりとも家族に会っていない。
母親がこの祖父の娘とは言え、9番目の子供だった。
本来ならば依琉が跡継ぎという立場になれるはずもなかった。
しかし能力を認められ、なってしまったんだからしょうがない。
母の家族は分家となり、自分は本家の世継ぎとなってしまったんだから。
そう思い、家族のことを思うことを依琉は止めていた。
しかし兄や姉はそうは思っていないだろう。
年上の二人が、千里眼という胡散臭い能力で跡継ぎになった依琉を快く思っているはずがなかった。
それは距離など関係なく、依琉は感じ取っていた。
祖父も何となく感じているらしく、それを心苦しく思っているらしい。
「そう言えばの、お前の従兄が婚約したい女性が出来たみたいだぞ」
黙ってしまった依琉に気を使い、祖父は話題を変えた。
しかし神無月の実家のように、無料奉仕をすることはなく、私欲で使っていた。
その結果、依琉の家は実業家として成功していた。
神無月の家とは、同じような能力の受け継ぎ方だが、力の使い方について真逆な為、あまり仲は良くなかった。
それは周囲の態度も同じだった。
神無月達は救いを求める人々に、その力を揮う。
しかし依琉達は黙って私欲の為に使う為に、あまり良い印象を持たれていなかった。
特に能力を職業としてきた神無月と違い、依琉の家はあくまでも沈黙に意味がある。
それゆえに時折生まれる千里眼の持ち主は、家を継ぐ者として大切に扱われる反面、気味悪がれてもいた。
依琉の両親はお互いに血縁者だが、能力は全くと言って良いほど無かった。
なので依琉が能力を発揮した時、両親はソレを激しく拒絶した。
依琉の他に兄と姉、そして妹がいるものの、全員千里眼とは無縁だった。
身内から気味悪がれていたある日、祖父が依琉の能力を聞きつけ、跡継ぎとしてこの家に引き取ってくれた。
―だが、依琉は今だからこそ思う。
両親や家族は自分の能力を否定したのは、こうなることを恐れたのかもしれないと。
祖父の跡を継ぐということは、家の全てを継ぐということ。
それすなわち、当主となることだ。
そうなれば敵が多く待ち構える。主に、身内が。
そんな戦場に向かわせない為に、あえて家族は能力を否定していたのかもしれない。
…事実、依琉が祖父の手で連れていかれた時、母親は最後まで泣いて能力を否定していた。
―わたしの子供は普通だから。変な力など持っていない―と。
しかし言葉は聞き入れられず、あれからもう7年の月日が経っていた。
依琉はそれから一度たりとも家族に会っていない。
母親がこの祖父の娘とは言え、9番目の子供だった。
本来ならば依琉が跡継ぎという立場になれるはずもなかった。
しかし能力を認められ、なってしまったんだからしょうがない。
母の家族は分家となり、自分は本家の世継ぎとなってしまったんだから。
そう思い、家族のことを思うことを依琉は止めていた。
しかし兄や姉はそうは思っていないだろう。
年上の二人が、千里眼という胡散臭い能力で跡継ぎになった依琉を快く思っているはずがなかった。
それは距離など関係なく、依琉は感じ取っていた。
祖父も何となく感じているらしく、それを心苦しく思っているらしい。
「そう言えばの、お前の従兄が婚約したい女性が出来たみたいだぞ」
黙ってしまった依琉に気を使い、祖父は話題を変えた。
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