光輪学院シリーズ・依琉の微笑

hosimure

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依琉の親族

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「いや~、神無月のお祖母さんのあんみつ、美味しかったなぁ♪」




依琉は上機嫌で家に帰った。




神無月の実家とは真逆の洋館が、依琉の住居だった。




明治時代に建てられていたものだが、今でもその美しさは変わっていない。




森の中にある家は、門から屋敷まで距離がある。




庭には噴水や美しいガーデニングがあった。




「ただいま帰りました」




「おお、お帰り。依琉」




リビングに顔を出すと、依琉の祖父がいた。




周囲にはメイドと執事、それに秘書達に囲まれながら、書類に目を通している。




「ずいぶん長い散歩だったな」




「ええ、ちょっと神無月の家に寄っていましたので」




「神羅かんらちゃんの家にか?」




「神羅ちゃん?」




「ああ、神無月ちゃんの祖母だ」




「ええ、お会いしましたよ。ついでにあんみつもご馳走になってきました」 


「うらやましいのぉ。神羅ちゃんのあんみつは絶品だからなぁ」




「お祖父さま。神無月のお祖母さんとお知り合いなんですか?」




祖父の向かいのイスに腰をかけると、すかさずメイドがアイスコーヒーを持ってきた。




すでに生クリームが入っているのを、依琉は笑顔で飲んだ。




「ああ。同じ光輪学院出身でな、封話部だった。当時神羅ちゃんは副部長をしていたなぁ」




当時を思い出すように、老眼鏡の奥の目が細められた。




白髪ながらもスーツを着こなし、仕事もバリバリこなす姿を見ると、とても依琉ぐらいの年齢の孫がいるとは思えない。




「ああ…。お祖父さまも、千里眼の持ち主ですもんね」




「お前ほど強力ではないが、の。それでも封印には携わった」




祖父が空になったグラスに視線を向けると、すぐにメイドがオレンジジュースを注ぐ。




「神羅ちゃんは学院のアイドルだった。ワシもアプローチしたものの、見事に玉砕。同じ部員だった男に取られてしもうた」




「まあまあ」


しょぼん…と落ち込む祖父を通して、依琉は<視>てしまった。




今の神無月と良く似た面持ちの神羅に振られる祖父の姿を。




思い出の中の神羅は、今の神無月の髪を腰まで伸ばしているぐらいの違いで、ほとんど同じ姿形をしていた。




祖父からの視線なので、祖父の姿は<視>えないもの、昔の写真を見るとやはり依琉に良く似ていた。




「今の神無月と、良く似ているんですね」




「むっ! お前、<視>たな!」




「あっ、すみません。つい」




ヘラヘラと笑う孫を見て、祖父は深く息を吐いた。




「まっ、お前さんは力が強過ぎるから、『つい』もあるんだろうが、くれぐれも言動には気を付けることだ」




「分かっていますよ。コレ以上、敵を作るのは本望ではありませんし」




「依琉…」




依琉は思い出す。




ここにはいない、自分の家族のことを。 
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