花粉症の男性が出会った植物

hosimure

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血を求める植物

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オレはもう、仕事に行く気をなくしていた。

それどころか眠るのがもったいなかった。

この植物の変化を、この眼で見続けていたいと考えていた。

けれど水を与えるのは、1日に1度だけ。

与え過ぎることは決して良くない。

だから夜までじっと待った。

花は夜になっても咲いていた。

そして水を与える時、オレは手のひらをカッターで切り裂いた。

ブシュッ!

ダラダラと血がコップに流れる。

水がピンクに染まるぐらいになって、ようやく植物に与えた。

そして今夜はそのまま起きていた。

するとその植物の変化を見ることができた。

ピンクの花は、オレの血を吸ってか、鮮やかな赤い色に染まっていく。

「スゴイっ…!」

オレはすっかりこの植物に魅入ってしまった。

そして甘い匂いも強くなった。

深呼吸すると、頭の中がじぃんとしびれる感じがたまらない。

「はあ…」

久々だった。こんなに深く、花の香りを嗅ぐのは。

花粉症になってからというもの、自然から遠ざかったのは心理的にきつかった。

それまでオレを癒していたものが、いきなり牙をむいてきたのだから…。

でも今はこの植物がいる。

側にいて、オレを癒してくれている。

良い値段はしたが、決して高くはない買い物だったな。

そう思いながら、植物を置いている部屋で寝た。

スゴク良く眠れて、寝起きも最高だった。

夜通し起きていたせいか、起きた時はすでに夜だった。

オレは包丁を持ち出し、血管をさけながら、手を切り刻んだ。

水半分・血液半分を、植物に与える。

すると今度は、枝が伸び始めた。

小さな鉢ではきつそうだったので、中ぐらいの鉢に植え替えた。

植物は嬉しそうに、あっと言う間に鉢に合うぐらいに成長をとげた。

枝を伸ばし、葉を生やし、花を咲き乱れさせた。

花は美しい濃い赤に染まった。

「キレイだ…」

まるで赤ん坊から、大人の女性へと変貌したような…。

オレの血が、ここまで美しくさせたんだ。

それならば…。

オレはフラッと立ち上がり、包丁を手に取った。

そして…。


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