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料理本としては多く置かせてもらっているし、本屋さんのオススメというポップも出ている。
二十代から三十代の女性が次々と手に持っていくので、売り上げも良さそう。
「さて、次は少年マンガ売り場」
「あいよ」
少年マンガ売り場はちょっと緊張する。
やっぱり男性が多い…。
それでも何とか人の間を避けながら、兄の本の売り場にたどり着く。
「ふぅ…」
「あっ、菜月さんの本、全部平置きされてるね。それにオススメのポップもあるよ」
「うん。売れてるみたいだし、一安心かな」
そう言いつつ、またケータイで写真を撮る。
「さて、最後はおねぇの所」
「はいはい」
早々に少年マンガ売り場から脱出し、今度は趣味の本の売り場に行く。
母と姉の本は割と近くに置かれやすい。
どちらも趣味だからなぁ。
料理の本の売り場で、ふと立ち止まった。
「ミホ、ちょっと待って」
「ん?」
料理本の売り場では、母の本はさっきと同じように平置きされ、ポップもあった。
「わぁ! 菜雪さんのシリーズ本、かなり人気じゃん」
「…なのにおねぇやおにぃは全く料理しない人なんだから、分かんないよね」
わたしは一応こっちも写メを撮った。
「さて、おねぇの本は…と」
「あっ、こっちこっち。こっちにあるよ」
手作りのアクセサリーの本や、彫刻の本が置かれている棚に、姉の本はあった。
平置きにはされていないものの、本棚に三冊並んで置かれていた。
姉は一冊しか本を出していないので、同じ本が三冊並んでいるのだが…。
「これって…いいことなの?」
「一冊しかないよりは良いんじゃない?」
棚の写真も撮って、頼まれごとは終了。
「さて、新刊あるかな?」
料理よりも手芸の方が悲しいかな、ファンが少ない。
なので同じ新刊でも、こっちに置いている場合が多い。
「おっ、あったあった♪」
手芸の本の売り場に、平置きにされてあった。
「一冊千六百円か…。専門書は高いなぁ」
「げっ、マジで? よく買えるね」
「お金、貯めてるもん。予算として貯金しているし」
分厚い手芸の本を一冊持って、レジに向かい、支払いを済ませた。
「さて、わたしの用事は終わり。ミホは何か本買わないの?」
「ん~。ケーキ代でけっこうお金使っちゃったしいいや。今度マンガ買う」
「あっそ。んじゃ、帰ろうか」
「うん」
ミホは駅前から出ているバスに乗って、高校に通っている。
「それじゃあ、ミホ。月曜日にね」
「うん。気が向いたらメールするから」
「はいよ。んじゃね」
バス停で別れて、わたしは歩き出す。
けれど手芸の専門学校の校舎を見て、ちょっと立ち止まった。
…高校を卒業してから、ここに通うのも悪くない。
親はお金の心配はしなくていいから、自分の進みたい道に進めば良いと言ってくれる。
まあわたしもそこそこ手芸で収入を得ているけれど、それで学校に通えるほどじゃない。
一人前になるには、まだまだかかりそうだ。
そう思うと、またため息をついてしまう。
…ダメだ。寝不足のせいか、まとまらない考えばかりしてしまう。
今日は早めに寝よう。
家に着くと、良い匂いが家の中を満たしていた。
今晩はカレーみたいだ。
朝食は朝が弱い母に代わって、わたしが作ることが多い。
でも昼食や夕食は必ず母が作る。
ちなみに徹夜して寝ている姉と兄も、食事時には必ず起きるようにしている。
二人とも料理が作れないので、ご飯は食べれる時に食べるのだ。
「ただいまぁ」
「あっ、お帰り。カナ」
「カナ、お帰りぃ」
リビングにはエプロン姿の母と、くつろいだ様子の姉がいた。
「もうすぐご飯できあがるから、待っててね」
「うん」
母はいそいそとキッチンへ行った。
姉は二人用のソファーに座って、テレビを見ている。
「おねぇ、もう起きてて平気なの?」
「昼間、たっぷり寝たから。あっ、ナツはまだ寝てる。アイツ、いったん寝たらなかなか起きないから」
兄のそういうところは、わたしとの血のつながりを感じるなぁ。
「そっ。じゃあ着替えてくるね」
「うん」
わたしは自分の部屋に行った。
制服から私服に着替え、ケータイと買ってきた手芸の本、それに空のお弁当箱を持って一階に下りた。
まずはキッチンにいる母の所に向かう。
「母さん、コレ、空のお弁当」
「はいはい」
空のお弁当箱を母に手渡した。
「あと新刊の写真、撮ってきたよ」
「おっ、どれどれ」
ケータイを操作して、写真を出した。
「売れ行き順調みたい。それに他の本も」
続いて既刊の本の売り場も出す。
二枚の写真を見て、母の表情が笑顔になる。
「あら、ホントね。一安心だわ」
「じゃ、本代千六百円、よろしくね」
「…はいはい」
母は少し呆れながら、財布から本代を出してくれた。
「じゃ、リビングにいるから」
「もうちょっと待っててね」
「はーい」
次にリビングにいる姉に声をかける。
「おねぇ、本の様子、見てきたよ」
「あっ、どうだった?」
わたしは姉が座っているソファーの隣に座った。
写メを出して、姉に見せる。
「三冊、本棚に置いてあったよ」
「三冊か。…んっ、まあ一冊よりはマシなのかなぁ?」
写メを見ながら、姉は複雑な表情をした。
「まっ、あるだけマシか。ありがとね、カナ」
しかしすぐに笑顔になり、わたしの頭を優しく撫でてくれる。
「うん」
思わず笑顔になってしまう。
姉の笑顔は本当に心安らぐ。心底明るい人だし、気が楽になる。
ちょっとだけ、ミホに似ているかもしれない。
「あとおにぃと母さんの本も撮ってきたんだ」
「ふむふむ」
わたしは次々に写メを姉に見せていった。
「やっぱり母さんの本、人気なんだねぇ。ナツの本もスゴイ。友達がサインくれってうるさいぐらい」
二十代から三十代の女性が次々と手に持っていくので、売り上げも良さそう。
「さて、次は少年マンガ売り場」
「あいよ」
少年マンガ売り場はちょっと緊張する。
やっぱり男性が多い…。
それでも何とか人の間を避けながら、兄の本の売り場にたどり着く。
「ふぅ…」
「あっ、菜月さんの本、全部平置きされてるね。それにオススメのポップもあるよ」
「うん。売れてるみたいだし、一安心かな」
そう言いつつ、またケータイで写真を撮る。
「さて、最後はおねぇの所」
「はいはい」
早々に少年マンガ売り場から脱出し、今度は趣味の本の売り場に行く。
母と姉の本は割と近くに置かれやすい。
どちらも趣味だからなぁ。
料理の本の売り場で、ふと立ち止まった。
「ミホ、ちょっと待って」
「ん?」
料理本の売り場では、母の本はさっきと同じように平置きされ、ポップもあった。
「わぁ! 菜雪さんのシリーズ本、かなり人気じゃん」
「…なのにおねぇやおにぃは全く料理しない人なんだから、分かんないよね」
わたしは一応こっちも写メを撮った。
「さて、おねぇの本は…と」
「あっ、こっちこっち。こっちにあるよ」
手作りのアクセサリーの本や、彫刻の本が置かれている棚に、姉の本はあった。
平置きにはされていないものの、本棚に三冊並んで置かれていた。
姉は一冊しか本を出していないので、同じ本が三冊並んでいるのだが…。
「これって…いいことなの?」
「一冊しかないよりは良いんじゃない?」
棚の写真も撮って、頼まれごとは終了。
「さて、新刊あるかな?」
料理よりも手芸の方が悲しいかな、ファンが少ない。
なので同じ新刊でも、こっちに置いている場合が多い。
「おっ、あったあった♪」
手芸の本の売り場に、平置きにされてあった。
「一冊千六百円か…。専門書は高いなぁ」
「げっ、マジで? よく買えるね」
「お金、貯めてるもん。予算として貯金しているし」
分厚い手芸の本を一冊持って、レジに向かい、支払いを済ませた。
「さて、わたしの用事は終わり。ミホは何か本買わないの?」
「ん~。ケーキ代でけっこうお金使っちゃったしいいや。今度マンガ買う」
「あっそ。んじゃ、帰ろうか」
「うん」
ミホは駅前から出ているバスに乗って、高校に通っている。
「それじゃあ、ミホ。月曜日にね」
「うん。気が向いたらメールするから」
「はいよ。んじゃね」
バス停で別れて、わたしは歩き出す。
けれど手芸の専門学校の校舎を見て、ちょっと立ち止まった。
…高校を卒業してから、ここに通うのも悪くない。
親はお金の心配はしなくていいから、自分の進みたい道に進めば良いと言ってくれる。
まあわたしもそこそこ手芸で収入を得ているけれど、それで学校に通えるほどじゃない。
一人前になるには、まだまだかかりそうだ。
そう思うと、またため息をついてしまう。
…ダメだ。寝不足のせいか、まとまらない考えばかりしてしまう。
今日は早めに寝よう。
家に着くと、良い匂いが家の中を満たしていた。
今晩はカレーみたいだ。
朝食は朝が弱い母に代わって、わたしが作ることが多い。
でも昼食や夕食は必ず母が作る。
ちなみに徹夜して寝ている姉と兄も、食事時には必ず起きるようにしている。
二人とも料理が作れないので、ご飯は食べれる時に食べるのだ。
「ただいまぁ」
「あっ、お帰り。カナ」
「カナ、お帰りぃ」
リビングにはエプロン姿の母と、くつろいだ様子の姉がいた。
「もうすぐご飯できあがるから、待っててね」
「うん」
母はいそいそとキッチンへ行った。
姉は二人用のソファーに座って、テレビを見ている。
「おねぇ、もう起きてて平気なの?」
「昼間、たっぷり寝たから。あっ、ナツはまだ寝てる。アイツ、いったん寝たらなかなか起きないから」
兄のそういうところは、わたしとの血のつながりを感じるなぁ。
「そっ。じゃあ着替えてくるね」
「うん」
わたしは自分の部屋に行った。
制服から私服に着替え、ケータイと買ってきた手芸の本、それに空のお弁当箱を持って一階に下りた。
まずはキッチンにいる母の所に向かう。
「母さん、コレ、空のお弁当」
「はいはい」
空のお弁当箱を母に手渡した。
「あと新刊の写真、撮ってきたよ」
「おっ、どれどれ」
ケータイを操作して、写真を出した。
「売れ行き順調みたい。それに他の本も」
続いて既刊の本の売り場も出す。
二枚の写真を見て、母の表情が笑顔になる。
「あら、ホントね。一安心だわ」
「じゃ、本代千六百円、よろしくね」
「…はいはい」
母は少し呆れながら、財布から本代を出してくれた。
「じゃ、リビングにいるから」
「もうちょっと待っててね」
「はーい」
次にリビングにいる姉に声をかける。
「おねぇ、本の様子、見てきたよ」
「あっ、どうだった?」
わたしは姉が座っているソファーの隣に座った。
写メを出して、姉に見せる。
「三冊、本棚に置いてあったよ」
「三冊か。…んっ、まあ一冊よりはマシなのかなぁ?」
写メを見ながら、姉は複雑な表情をした。
「まっ、あるだけマシか。ありがとね、カナ」
しかしすぐに笑顔になり、わたしの頭を優しく撫でてくれる。
「うん」
思わず笑顔になってしまう。
姉の笑顔は本当に心安らぐ。心底明るい人だし、気が楽になる。
ちょっとだけ、ミホに似ているかもしれない。
「あとおにぃと母さんの本も撮ってきたんだ」
「ふむふむ」
わたしは次々に写メを姉に見せていった。
「やっぱり母さんの本、人気なんだねぇ。ナツの本もスゴイ。友達がサインくれってうるさいぐらい」
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