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神無月自身も逃れられず、入学させられた身だった。
「理事長と部員達の仲が悪くってね。榊部長がちょっと可哀そう」
「今の理事長はあまり強く能力を引き継がなかったみたいだしね」
「お婆と理事長、同級生だっけ?」
「ええ。そして同じ封話部で、理事長は当時の封話部の部長だったわ。封印を何とかしようと、必死だったわね」
そう語る祖母の眼が、苦しそうに歪む。
半世紀以上も代々の部長が苦しんでいることを、神無月は祖母から教えられていた。
榊も表面上は明るく振る舞っているが、陰では封印のことを何とかしようと必死になっていることを、神無月は薄々気付いていた。
だから部活には喜んで参加はできないものの、渋々ながら付き合っているのだ。
「封じられているモノも、浄化するまで時間がかかるしね。一つが浄化しても、また新たな封じるモノができてしまう。あの土地の力の作用は、恐ろしいの一言に尽きるわね」
「創立120年だもんね。その間、ずっとこうなんだ…」
「そうね。ずっと繰り返してばかり。代々部長達の苦労も、いつ報われることやら…」
祖母の言葉を遮るように、柱時計が9回音を響かせた。
「アラ、やだ。話し込んじゃったわね。生徒さん達は9時半から来るの。神無月、準備してちょうだい」
「はーい」
神無月はお茶を飲み干すと、立ち上がった。
自室に行って、巫女衣装に着替える。
習字教室は離れの邸で行われる。
神無月の祖父は剣道・柔道・空手の先生で、離れの道場で教室を行っていた。
そこの隣に、祖母の習字教室で使っている邸がある。
その邸と神社は渡り廊下で繋がっていて、本当の使用目的は神社で行事が行われた時、関係者の控え室になっていた。
しかし年に何回かしか使わないので、勿体無いということで祖母がそこを習字教室にした。
神無月は私服よりも巫女衣装の方が慣れていて、周囲の人間もこの姿の方が見慣れていた。
なので地元にいる時には巫女の姿でいる。
着替え終えると、髪を梳かし、離れの邸に向かう。
それから1時間後の10時。
30畳もある広い和室には、座布団の数だけ生徒が集まっていた。
習字教室は1時間。
その間、祖母は生徒達に教え、神無月はそのサポートをしていた。
祖母のおかげで習字はかなりの腕前を持っていた。
生徒達はみな近所の学生達ばかりで、気心が知れていた。
やがて休憩時間になり、神無月も休むことにした。
だが―。
「こんにちわ~。神無月、いますか?」
「理事長と部員達の仲が悪くってね。榊部長がちょっと可哀そう」
「今の理事長はあまり強く能力を引き継がなかったみたいだしね」
「お婆と理事長、同級生だっけ?」
「ええ。そして同じ封話部で、理事長は当時の封話部の部長だったわ。封印を何とかしようと、必死だったわね」
そう語る祖母の眼が、苦しそうに歪む。
半世紀以上も代々の部長が苦しんでいることを、神無月は祖母から教えられていた。
榊も表面上は明るく振る舞っているが、陰では封印のことを何とかしようと必死になっていることを、神無月は薄々気付いていた。
だから部活には喜んで参加はできないものの、渋々ながら付き合っているのだ。
「封じられているモノも、浄化するまで時間がかかるしね。一つが浄化しても、また新たな封じるモノができてしまう。あの土地の力の作用は、恐ろしいの一言に尽きるわね」
「創立120年だもんね。その間、ずっとこうなんだ…」
「そうね。ずっと繰り返してばかり。代々部長達の苦労も、いつ報われることやら…」
祖母の言葉を遮るように、柱時計が9回音を響かせた。
「アラ、やだ。話し込んじゃったわね。生徒さん達は9時半から来るの。神無月、準備してちょうだい」
「はーい」
神無月はお茶を飲み干すと、立ち上がった。
自室に行って、巫女衣装に着替える。
習字教室は離れの邸で行われる。
神無月の祖父は剣道・柔道・空手の先生で、離れの道場で教室を行っていた。
そこの隣に、祖母の習字教室で使っている邸がある。
その邸と神社は渡り廊下で繋がっていて、本当の使用目的は神社で行事が行われた時、関係者の控え室になっていた。
しかし年に何回かしか使わないので、勿体無いということで祖母がそこを習字教室にした。
神無月は私服よりも巫女衣装の方が慣れていて、周囲の人間もこの姿の方が見慣れていた。
なので地元にいる時には巫女の姿でいる。
着替え終えると、髪を梳かし、離れの邸に向かう。
それから1時間後の10時。
30畳もある広い和室には、座布団の数だけ生徒が集まっていた。
習字教室は1時間。
その間、祖母は生徒達に教え、神無月はそのサポートをしていた。
祖母のおかげで習字はかなりの腕前を持っていた。
生徒達はみな近所の学生達ばかりで、気心が知れていた。
やがて休憩時間になり、神無月も休むことにした。
だが―。
「こんにちわ~。神無月、いますか?」
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